コミュニケ-ションのア-キテクチャを設計する: 藤村龍至×山崎亮対談集 (建築文化シナジー)
- 彰国社 (2012年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784395241118
作品紹介・あらすじ
「建築家」も「ランドスケープデザイナー」も、役割が問われる時代。しかし教育現場の多くは旧態を引きずっている。転換期に生きる、悩める学生たちへのメッセージ。「設計」のスキルを生かして、社会問題を解決する「ソーシャル・アーキテクト」になれ。
感想・レビュー・書評
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コミュニティデザイナー・山崎亮さんと建築家・藤村龍二さんの対談で構成される本である。
お二人とも建築業界の方なのだが読み進めるほど福祉の視点から学ぶことがたくさんあり、今回はそれを簡単にまとめる
●多様な要素を統合してビジョンを描く
ものをつくれば売れた時代は終わり、今は「作る」「造る」のではなく「創る」時代。そんな時代に前者を専門としてきた建築家(アーキテクト)は何ができるのか。山崎さんはこう述べる
テクネ―に、設備や法規や予算を代入して、それらを一つに美しく統合(アーク)していく職能が建築家だと言われてきました。アーキテクトだと言われてきました。しかし、これからはものが建たない時代になる。そうであれば、テクネーの部分に「八百屋のおばちゃんの意見」や「漁師のおっちゃんの意見」「行政の意見」など、ばらばらな意見を代入し、それらを美しく統合してビジョンを示すのも、アークテクトの役割じゃないかなと思うんです。
いろんな要素を活かしてビジョンを示す。
それってソーシャルワークそのものじゃないか!
ミクロソーシャルワークではクライエントの経済・心身・生活状況・ニーズ・社会資源を統合して、クライエントがエンパワメントされるような長期・短期目標を提示する。
メゾソーシャルワークでは多様な価値観や立場、特性から生み出されるコミュニティのビジョンを描く。
マクロソーシャルワークではインクルーシブな社会の姿を具体的に社会に訴え、社会変革を起こしていく。
授業で「ビジョンを描くことの重要性」を言われたことはなくいつもプロセス重視だけど、プロセスをよりよいものにするためにも福祉には「美しくてわくわくするビジョン」が必須だし、ビジョンを描くスキルを身に着けていかなくてはならないんだ。あらゆる要素を統合してビジョンを描くスキルは、建築から学べるのかもしれない。
●福祉はもっとクリエイティブに
むしろ、人のつながりが弱くなってきたために顕在化した問題、教育や福祉の問題にこそ、クリエイティブな発想を取り入れていかないと、「前例に沿って」「制度に従って」という対応策では、教育も福祉も課題を突破できません
p172
なんだか耳が痛い(笑)
ソーシャルワークは長年対人援助が中心で、社会福祉士という国家資格は既存の制度への理解度を図るものでしかないから、福祉分野は今でも「前例に沿って」「制度に沿って」ということが多いと思う
でも今、社会問題がたくさんあるのだから、今にすがったって根本的な解決にはまったく至らない。
メゾ・マクロソーシャルワークにおいてはもっとクリエイティブに、ソーシャルワーカーはクリエイティブな発想をもてるようにならなきゃなんだ
●クリエイターと力をあわせよう
じゃあどうしたらクリエイティブな発想をもてるようになるのか
それは社会課題に取り組むクリエイター、デザイナーの活動を知ることから始まる
「ものをつくれば売れた時代」ではなくなった今、建築やジュエリーやファッションでもなんでも、社会課題の解決に繋げて専門性を発揮しようとしているのだとこの本から学ぶことができた。社会課題を解決しようとする波が広がっているならば、社会課題に取り組むクリエイター、デザイナーは私が想像するより多いし増えていくのだろう
障害者アートは昨今の福祉のトレンドでもある気がするが、それでもまだ福祉とクリエイターの間には距離がある気がする
ソーシャルワーカーはクリエイティビティを学ぶために、クリエイターやデザイナーも含めた多職種連携を図っていくことが必要不可欠だ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
藤村さんと山崎さんの違いに興味を持ちましたが、本書ではそれほど深く追求されてはいません。広義の目標は共通でも、方法論やスタイルにおいて違う点があると感じますし、その違いを中心に今後もお二人の活動に関心を持ち続けていきたいと思います。
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studio-L山崎さんの対談本。政治とアーキテクトの取り組んでいる課題は、共通点もある割にアウトプットの美しさが異なってしまうという点は、実はIT業界でもアウトプットへのこだわりという部分では近いものがあるかなと思いました。あと、お金は関係性を切ってしまうという点も共感したところで、確かに「これは貸しだからね」「こないだの借りを返すよ」っていうやりとりはお金を介在させないからこそ楽しくなる部分もあるなぁと思いました。自分の伝え方、コミュニケーションの質についてはまだまだケアするべき点がありますね。
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【読書メモ】
アンリ・ルフェーブル『日常生活批判』
→生活スタジオ
ハンス・ホライン「すべては建築である」
→「すべてはコミュニティである」
磯崎新フリークの山崎さん
「見えない都市」「プロセス・プランニング論」あたりが好き。
ピーター・アイゼンマンまでは、まずコンセプトありきだった。レム・コールハース以降は「コンセプトはどうでもいいんだ。プロジェクトごとに異なるコンテクストがあって、政治的状況も違えば、環境的な条件の違いもあるから、その違いにただ応えていけばいい」という考え方になった。
一般意志を可視化する=コミュニティの構成員の様々な意見をワークショップで引き出して、それを匿名化させてキーワードを抽出する。 -
始めに 私たちは「ソーシャル・アーキテクト」
第一講 建築家とコミュニティデザイナーの共通点とは
第二講 建築のノウハウを使って、コミュニケーションの設計にチャレンジしよう!
第三講 建築家はアーキテクチャについてもっと語ろう!
第四講 一人一人の価値をエデュケートしよう!
終わりに 建築的思考の可能性 -
何冊か読んでいるうちに、考え方の流れがわかってきた。
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近年建築業界で大きな注目を集めている藤村龍至さんの本です。彼は今までの建築思想にはなかった思想を次々と発表しており、次世代の建築思想を知りたい、と思っている方には非常にお勧めできます。情報化社会と絡めたその思想は、もはや建築だけでなく他分野に働きかけていくでしょう。多学科の人にもお勧めな一冊です!
(北九大 建築デザインコース Y.O.さん)