滝田ゆう傑作選「もう一度、昭和」 (祥伝社新書 98)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396110987

感想・レビュー・書評

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  •  滝田ゆうの作品から、とくに「昭和の香り」がするものをセレクトしたアンソロジー、という趣。2007年に出たものだから、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズのヒットによる昭和回顧ブームの便乗本というところか。

     滝田の代表作『寺島町奇譚』はマンガ史に残る名作だと思う私だが、ほかの滝田作品はあまり読んでいない。家にあるのは『寺島町奇譚』のほか、『滝田ゆう落語劇場』と『滝田ゆう名作劇場』(これは昭和40年代あたりの人気作家たちの短編小説をマンガ化したアンソロジーで、なかなかよい)だけだ。

     本書は『寺島町奇譚』から4編、『泥鰌庵閑話(どぜうあんつれづればなし)』から7編、『滝田ゆう歌謡劇場』から5編を選んで編まれている。『泥鰌庵閑話』と『滝田ゆう歌謡劇場』は読んだことがなかったので、楽しめた。

     『泥鰌庵閑話』は、『寺島町奇譚』同様自伝的な内容。
     『寺島町奇譚』は自らの少年時代をモデルにしていたのに対し、『泥鰌庵閑話』は中年になってからの滝田自身がモデルになっている(と思う)。主人公のマンガ家のなにげない日常が、いまでいうエッセイ・マンガ風に描かれている。
     『滝田ゆう歌謡劇場』は、昭和の名曲歌謡曲をモチーフにした淡いタッチの人情もの。

     『泥鰌庵閑話』の一編「カストリゲンさん」に、強烈な印象を受けた。これは、主人公の中年マンガ家が少年時代を回想した作品。すなわち、“『寺島町奇譚』アナザー・ストーリー”という趣の短編なのだ。
     姉と想いを寄せ合っていた青年「ゲンさん」の無惨な晩年(学徒兵として出征し、戦地で受けた衝撃からか、帰ってきてからアル中になってしまう)を、主人公は苦く思い起こす。哀切な一編である。

     滝田ゆう入門としては好適な一冊。これを読んでビビッときたら、『寺島町奇譚』全編をぜひ。
     私も、ほかの滝田作品が読んでみたくなった。

  • 滝田ゆうの入門書として適切でしょう。

  • 080225

  • [ 内容 ]
    滝田ゆうは、日本人が失いかけている懐かしい町並み、人と人との絆を描きました。
    町や路地を独自の筆致で描き、日本の漫画界に並ぶ者のない孤高の作家として、いまなお多くの人々の心をとらえて離しません。
    日々、懐かしい昭和の人と風景が消えつつある今、あらためて滝田ゆうの描く「昭和浪漫」の世界が心に沁みることでしょう。
    歴史に残る傑作『寺島町奇譚』からは「ぬけられます」などよりすぐりの四編を。
    また漫画家の日常を題材に人生の機微を描く『泥鰌庵閑話』、歌謡曲の名曲をもとに泣けるショートストーリーが展開する『滝田ゆう歌謡劇場』から名品中の名品を収録しました。

    [ 目次 ]
    「寺島町奇譚」より(げんまいパンのホヤホヤ 花あらしの頃 ぬけられます カンカン簾)
    「泥鰌庵閑話」より(きつねあざみ いま来たこの道… 新宿流し唄 スズメ ビニールおじさん 夕空晴れて カストリゲンさん)
    「滝田ゆう歌謡劇場」より(男の純情 別れ船 リンゴの歌 好きだった 浪曲子守唄)

    [ POP ]


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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • まさかこの人の作品が新書になって、駅のキオスクで手に入るようになるとは思ってもみなかった。昨今の新書ブームの成した大きな成果の一つであると思う。拍手。
    そして読んで改めて、この人の日常に対する目線のたしかさと、それを切り取る反射神経のよさに感心させられた。特に擬音のセンスは天才的だ。

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著者プロフィール

マンガ家・エッセイスト。1931-1990 著作に『寺島町綺譚』『泥鰌庵閑話』『滝田ゆう落語劇場』など。文藝春秋漫画賞、日本漫画家協会賞大賞、勲四等瑞宝章。

「2016年 『怨歌劇場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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