さんかく(祥伝社文庫ち3-1) (祥伝社文庫 ち 3-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396350147

感想・レビュー・書評

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  •  この世界や自分自身への解像度が高くなればなるほど、見えている景色を共有できる相手が少なくなっていくのだから、必然的に、人は孤独になっていく。
     他方で、「あなたはわたしの世界の全てだ」と思える相手と一緒に生きている人は、見えている景色の全てを共有できる相手がいるのだから、側から見て魅力的かどうかはさておき、途轍もない幸福に満ち溢れている。
     物語で夕香と正和は、食の趣味が合うという理由から同居を始める。「人と人は完全には分かり合えない」と断言する作者は、きっともの凄く孤独で、致命的な諦めを経験している。だからせめて、美しさを、美味しさを、誰かと共有したいと強く願っている。

  • ひらがなで「さんかく」

    タイトルがピッタリ

    カタカナのように刺々しい訳ではなく
    漢字で書くとドロドロしそう。

    想いを押し付ける訳でもなく、
    それぞれが自分がどうしたいのか
    あやふやなまま
    答えを見つけられず
    日々が流れていく…

    最後、これはこれで
    ハッピーエンドかも知れないけど、
    高村さんに幸せになって欲しい

  • 千早茜さんの文章は、五感を刺激される。今回の作品は、季節の移ろいや旬のものだったり、京都の雰囲気だったり、その場の雰囲気を肌で感じているようだった。美味しそうな食べ物が出てきて食べたくなる、飯テロ要素が多分にあります。

  • 昔、バイトで知り合った高村さんと食の趣味が合う伊藤くんは、華という彼女がいるも、高村さんとの同棲をすることに…と書くと誤解がありそうだけれども、3人の微妙な関係性が丁寧に描かれ、そして何より千早さんの得意とする食のイキイキとした描写に虜になってしまう。
    直木賞の『しろがねの葉』だけを知っていると歴史小説の作家さんと捉えがちだが、本作のように男女の機微について描くのが千早さんの真骨頂だと思っている。
    人間同士の関係性の物語であり、作品の空気感が最高に良かった。

  • どの章を読んでも、おいしい小説でした。

    ただ、人間関係としては高村さんの最後が切なく悲しかった。正和は少しずるくないかなぁ〜…。華もそれで良いの?って思ってしまいました。

    高村さんのその後として続編が読みたいです。

  • 高村さん、伊東くん、華の話がわかれていたのでそれぞれの感情が分かりやすく伝わってくる。出てくる料理が美味しそう!誰かと美味しいものを美味しいって分かち合えることは恋愛や友情関係なく単純にしあわせなことだと思う。

  • 人の感情の揺れ動く様や、自分でも自分の気持ちがよくわからなくなる様や、人と人の繋がりや関わり方など、繊細な感情が伝わってくる物語。
    中でも、ライフスタイルと食事のエピソードが物語のほとんどを占めていて、千早さんに胃袋を掴まれてる気分。

  • 京都の町屋でデザインの仕事をしている夕香は食べることをとても大事にしているひと。かつてのバイト先で一緒だった正樹は食を共にするのが楽な人。正樹の彼女は大学院生、動物解体に忙しく食べることには無頓着。一緒にいて楽な夕香と同居する事で恋人との関係が揺らいでいく

  • 誰かに受け入れられたいという気持ちを持て余していた。

    恋と支配欲、寂しさ、承認欲求…
    生きていれば様々な感情が湧き出てくる。
    それを理解してもらおうとするのは大変だが、何か共感するものがあったりすると、その人を分かった気になってしまうことがある。
    会話して気持ちをぶつけて、初めて分かり合える事もあるのに忘れてしまう。
    1番大切なことはなんだろう、守りたいものはなんだろう、私自身の生活の中でも、改めてちゃんと考えてみようと思いました。


  • 疲れてバランスを崩した心身を労り、
    傷みを癒す温かい食べ物や健やかに保つため、
    手を尽くして丁寧に作られた温かい料理。

    性別や年齢を厭わず、居心地良い時間と空間を
    同じ美味しいという感性の人と共有するひととき。

    仕事、結婚、恋愛、人間関係と言った
    さまざまなしがらみを肩からか下ろし、
    纏った鎧を脱ぎ捨ててただ静かに羽を安める。

    大切なものは何なのかを問いかけながら、
    傷んだ心身をゆっくり補修していく時間を
    温かい料理が内側から支えてくれます。


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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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