入らずの森

  • 祥伝社
3.45
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本棚登録 : 98
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633134

作品紹介・あらすじ

事故で陸上選手生命を絶たれた中学教師、家庭崩壊で転校してきた女子中学生、Iターン就農を目指す初老の男。無関係だった人生が「禁断の森」で交錯した時、平穏な日常が狂い始めた…平家の落人伝説、漂泊の山の民、因習の小集落…期待の大型新人が日本の原風景が残る山村を舞台に、人間の狂気と再生を描く、瞠目の野心作。

感想・レビュー・書評

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  • 平家の落人伝説の残る山里で起きるホラーミステリー。

    第一章 幻夢
    第二章 不入森
    第三章 骸花
    第四章 曼荼羅
    第五章 斉唱

    愛媛県の過疎の町・尾峨にあるハガレ谷は、古くは平家の落人が自刃し、殺人犯が射殺された因縁の場所。

    この地の尾峨中学校に赴任してきた圭介は、かつてアスリートを目指した陸上選手。アクシデントにより夢を絶たれ、横浜からこの地へ流れてきた。

    道を外れた杏奈は両親の離婚から、父方の祖母・タキエの住む尾峨へ移りすみ、圭介の生徒に。

    Iターンで広島から就農で移住してきた隆夫は、会社からつまはじきにされ、新しい土地での新生活に夢を見ていた。

    そんな3人が、ハガレ谷から漂う異界からの物体により、狂気の渦に巻き込まれる。

    過去、その狂気に気づいていた者のメッセージが、尾峨中学校校歌の隠された3番の歌詞に秘密があることが分かる。

    杏奈に迫りくる狂気、生徒を守る圭介。

    人の憤怒、憎悪が思わぬものによって、綿々と繋がる狂気を巻き起こすミステリー。


    作者の代表作と言われるだけある後半の読みごたえ。

    徐々に怖さを増していく叙述、関係者のつながりが1本にまとまる心地よさが素晴らしい。

  • 選書する時に
    参考文献に
    興味深いモノがある時は
    ほぼ間違いがない

    南方熊楠、
    三木成夫、
    沖浦和光、
    この辺りのお名前があったことが
    より手に取ることに

    そして
    物語の構成は
    さすがの 宇佐美まことさん

    徳島県、剣山の麓近くでキャンプした時に
    体験した四国の山の中の情景が
    まざまざと蘇りました

    最後まで
    わくわく どきどき
    引っ張ってもらえました

  • 初めて読んだ作者の本。
    しっかりした文章なので読んでいてホッとした。
    ただ、この話はあまり面白くなかった。

    物語の舞台は平家落人の伝説が残る、高知と愛媛の県境の町。
    そこで暮らす何人かの人々を主な登場人物として描いた、ちょっとホラー味のある話になっている。
    その主な登場人物は、
    町の中学校教諭の若い男性。
    親元から離れ、この町で暮らす祖母の元に身を寄せた女子中学生。
    スーパーを早期退職し、この町で暮らす事にした夫婦。
    認知症の母親の介護をする女性。

    中学校教諭の男性は、オリンピック選手になれるほどの陸上選手だったにも関わらず、一人の男の悪意により、その夢を絶たれ、現在この山合の町で教師をしている。
    彼はこの町で以前、陰惨な事件が起きていた事を知り、それに粘菌が関わっている事を知る。

    親元から離れ祖母と住む女子中学生はこの山合の町で暮らすことで、都会で暮らしていた頃の自分を客観視する。
    彼女は同級生の男子が自分の家の屋根裏であるはずのない異空間の部屋を見つけたという事を知る。
    その部屋には幼い少女がいた。

    人間関係の問題でスーパーをやめ、町で暮らす事にした男性は田舎ののどかな暮らしを夢見ていたが、それもある農民の男によって壊される。
    彼は理不尽な怒りを移住してきた男性に向け、攻撃する。
    やがて、それに耐えられなくなった彼はー。

    親の介護をする女性は母親の体に度々傷がある事に気づく。
    それはある介護の女性にされたものだという疑いがもたげてきて事を明らかにするかどうか彼女は苦しむ。

    最初は全く関係ないバラバラの話が粘菌という、人の負の感情に住みつく生物によりひとつになる。

    こういう話では、謎の生物というのが全く架空なものやただの化け物というものというのが多く、小説の中の出来事だな~と思うけど、ここでは粘菌という実在するもの、有名な細菌学者の名前を出す事でリアルな恐怖が感じられた。
    個人的に、この粘菌が存在するという森やら木が生い茂る場所というのはいつも歩いている場所なので、実際歩いているとこういうのってあってもおかしくないと思えるのが恐いな・・・と思った。
    平家落人の墓が分からないままに踏まれて、その相手の思念が憑りつくなんて、本当にありそうだし・・・。
    ホラー味としては薄いけれど、それ以外の心情とかはちゃんと書いていて、他の部分も落ち着いて読める文章だった。

    この物語の粘菌といのは人の負の感情に乗っかって、その思いを抱いた人間にとりつくという設定だけど、ちょっと、それじゃ憑りつかれた人間は救われないな・・・と思った。
    移住してきた男性の事を思うと・・・。
    心の弱さにつけこまれた・・・という訳だけど、その人間をそこまで追いつめたどす黒い人間にこそ憑りついてほしかった。
    人を攻撃した人間は結局、理不尽に人に嫌がらせをして、自分の思い通りの結果になって・・・これじゃ救われない。
    私だって、中学校教師や移住の男性のような事をされたら普通に腹が立つし、相手が憎いし、呪いたくなる。
    そんな思いをいだくのは良くないと思っても・・・。
    結局、心の弱い人間は淘汰されるってことか・・・とため息が出た。

    どす黒い思いを抱いて山道を歩く事もあるので、せいぜい憑りつかれないようにしようと思った。
    もう既に憑りつかれてるのかも・・・。

  • どんどん人間が卑屈になっていく様が
    上手く描けてて良かったんだけど
    なんだかオカルト感が強すぎて
    ラストはちょっと消化不良。

  • 『粘菌ホラー』これでもかというくらい、粘菌のまがまがしい色彩と粘っこさを表現しています。 
    いくつかの無関係に見えるエピソードのピースが後半にぴたっとはまるのが小気味よい。 
    モンスターホラーというよりも、登場人物のひとり「Iターンの松岡隆夫」が徐々に壊れていくのが圧巻。 これだけを追っていっても一読の価値ありです。 

  • 気味悪い話でもう読みたくない。

  • 久しぶりに読み応えのある本に出会えました。誰かに導かれたかのようにこの本に出会えたことがとてもうれしいです。

  • 友人のお勧めにて。四国は未踏ですが、なんとなくイメージしていた暗部。そこで暮らす人々が心に懐(いだ)く闇。それらが濃縮され、力を得ていく物語。充分に堪能できました。自然、音楽、風習、文化。それらが丹念に描かれていたので、わからない部分は本を閉じて調べ、情景を浮かべつつ読み進めました。点が線になり、線が面になっていくような展開、見事でした。 余談:文庫を購入しようかと思ったんですが、表紙が怖かったのでソフトカバーにしました。いま見たら、そこまで怖くなかった(笑)

  • るんびにの子供を読んで同じ作者のものを選んだ。久しぶりに陰にこもった日本的な怪奇譚を読んだ。人の念は怖いものだ。たしかに妬みや恨みは人を滅ぼす。鬱蒼とした森の中の粘ついた生き物が頭にこびりつき気持ち悪い。杏奈のダメージGジャンのくだりは私も泣き笑いした。アツ先生の魂にも感動。全体的に構成が上手いなぁと思う話でした。

  • 読み易さ健在、怖くなさも健在、何か違う歯痒さ

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著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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