- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396633134
作品紹介・あらすじ
事故で陸上選手生命を絶たれた中学教師、家庭崩壊で転校してきた女子中学生、Iターン就農を目指す初老の男。無関係だった人生が「禁断の森」で交錯した時、平穏な日常が狂い始めた…平家の落人伝説、漂泊の山の民、因習の小集落…期待の大型新人が日本の原風景が残る山村を舞台に、人間の狂気と再生を描く、瞠目の野心作。
感想・レビュー・書評
-
平家の落人伝説の残る山里で起きるホラーミステリー。
第一章 幻夢
第二章 不入森
第三章 骸花
第四章 曼荼羅
第五章 斉唱
愛媛県の過疎の町・尾峨にあるハガレ谷は、古くは平家の落人が自刃し、殺人犯が射殺された因縁の場所。
この地の尾峨中学校に赴任してきた圭介は、かつてアスリートを目指した陸上選手。アクシデントにより夢を絶たれ、横浜からこの地へ流れてきた。
道を外れた杏奈は両親の離婚から、父方の祖母・タキエの住む尾峨へ移りすみ、圭介の生徒に。
Iターンで広島から就農で移住してきた隆夫は、会社からつまはじきにされ、新しい土地での新生活に夢を見ていた。
そんな3人が、ハガレ谷から漂う異界からの物体により、狂気の渦に巻き込まれる。
過去、その狂気に気づいていた者のメッセージが、尾峨中学校校歌の隠された3番の歌詞に秘密があることが分かる。
杏奈に迫りくる狂気、生徒を守る圭介。
人の憤怒、憎悪が思わぬものによって、綿々と繋がる狂気を巻き起こすミステリー。
作者の代表作と言われるだけある後半の読みごたえ。
徐々に怖さを増していく叙述、関係者のつながりが1本にまとまる心地よさが素晴らしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
選書する時に
参考文献に
興味深いモノがある時は
ほぼ間違いがない
南方熊楠、
三木成夫、
沖浦和光、
この辺りのお名前があったことが
より手に取ることに
そして
物語の構成は
さすがの 宇佐美まことさん
徳島県、剣山の麓近くでキャンプした時に
体験した四国の山の中の情景が
まざまざと蘇りました
最後まで
わくわく どきどき
引っ張ってもらえました -
どんどん人間が卑屈になっていく様が
上手く描けてて良かったんだけど
なんだかオカルト感が強すぎて
ラストはちょっと消化不良。 -
『粘菌ホラー』これでもかというくらい、粘菌のまがまがしい色彩と粘っこさを表現しています。
いくつかの無関係に見えるエピソードのピースが後半にぴたっとはまるのが小気味よい。
モンスターホラーというよりも、登場人物のひとり「Iターンの松岡隆夫」が徐々に壊れていくのが圧巻。 これだけを追っていっても一読の価値ありです。 -
気味悪い話でもう読みたくない。
-
久しぶりに読み応えのある本に出会えました。誰かに導かれたかのようにこの本に出会えたことがとてもうれしいです。
-
友人のお勧めにて。四国は未踏ですが、なんとなくイメージしていた暗部。そこで暮らす人々が心に懐(いだ)く闇。それらが濃縮され、力を得ていく物語。充分に堪能できました。自然、音楽、風習、文化。それらが丹念に描かれていたので、わからない部分は本を閉じて調べ、情景を浮かべつつ読み進めました。点が線になり、線が面になっていくような展開、見事でした。 余談:文庫を購入しようかと思ったんですが、表紙が怖かったのでソフトカバーにしました。いま見たら、そこまで怖くなかった(笑)
-
るんびにの子供を読んで同じ作者のものを選んだ。久しぶりに陰にこもった日本的な怪奇譚を読んだ。人の念は怖いものだ。たしかに妬みや恨みは人を滅ぼす。鬱蒼とした森の中の粘ついた生き物が頭にこびりつき気持ち悪い。杏奈のダメージGジャンのくだりは私も泣き笑いした。アツ先生の魂にも感動。全体的に構成が上手いなぁと思う話でした。
-
読み易さ健在、怖くなさも健在、何か違う歯痒さ