ツキノネ

著者 :
  • 祥伝社
3.19
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  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 101
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635695

感想・レビュー・書評

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  • 「機巧のイヴ」が好きで、でもそれ以来、好みの作品が無く読んでいなかった作家さんだが、あらすじで面白そうと読んでみた。
    しかし読んでいると「機巧のイヴ」のようなパラレルワールドファンタジーではなく、ホラーだった。

    『ツキノネ』なる不思議な少女を巡る物語。だが結局『ツキノネ』が何者なのかは分からない。
    老夫婦が殺害された家から保護された少女・弥生。保護施設で弥生を担当する古河の目にも弥生は異様に映る。
    一方で子供の頃に過ごした村を描き続ける荒木と、彼を通して彼が描く村を調べ始める文乃。
    それぞれの物語は歪な形で繋がっていく。

    これも一種のパラレルワールドと言っても良いかも。なかなか上手く出来ている。
    ただ『ツキノネ』に関わった人々は幸せにはなれない。過去に遡っても、一時的に隆盛があっても最終的には破滅している。
    『ツキノネ』は神なのか悪魔なのか、あやかしの類いなのか。
    一つ言えるのは、『ツキノネ』と心が通じ合うことはないということ。どれほど誠意を尽くしても言葉を重ねても、『ツキノネ』はやりたいようにやる。
    価値観や思考回路の違う者と関わっても良いことはないということか。

    だが『ツキノネ』もまた、誰とも通じ合うことなく、気ままに過ごしているようで孤独だし、行き着く場所はあっても人間のように限られた一生がないのだから、それはそれで虚しいかも。
    だから常に誰かを求めるのか。見初められた者は大変だが。

  • 「完全なる首長竜の日」「忍び外伝」以来久しぶりに読む著者でありSFチックな作品だったと思うがあまり多作家ではないせいか目に触れることもなくなっていたが作品は面白かったのを覚えている。本作はSF猟奇ホラー物で「リング」「らせん」の貞子の代わりがツキノネ(弥生)になったようだった。最近「ぼぎわんが、来る」「貞子」が映画化されホラーブームの再来かと思われたが、「貞子」の方は酷い出来だったので、本作あたりを映画化したらどうだろう。ホラー映画も原作がしっかりしてないと全く面白くない。

  • 殺人現場の二階にいた身元不明の美しい少女をめぐる男女の人間関係が愛憎と共に絡み合い、“ツキノネ”という蠱惑的なワードとダムの底に眠る町と神社が秘めた謎を深めていく。
    富と災いを両方もたらすというツキノネは、神様のようなものだったのかな。元は人間とかもっとおぞましいものを想像していたので、その辺が曖昧に終わってしまってモヤモヤ。長いこと暗闇に閉じ込められて死ぬこともできない壮絶な孤独や自分の存在意義を問う哀しさを思えば、あの彼と再会した終わりの始まりは恐ろしくもあるし、少しホッとする結末でもある。

  • 謎の美少女を巡るファンタジー……というよりもホラーでした。幻想的な装丁と不可思議な物語に引き込まれましたが。物語は読むほどにどんどん不気味になっていきます。
    「ツキノネ」と名乗る美少女。彼女の奇妙な言動に振り回される周りの人々。最初は子供らしい態度に思えていたのが、彼女の素性を知るごとに恐ろしく思えてきました。外見が子供なだけに怖いよなあ、これは。ダムの底に沈んだ町と神社にまつわる因縁の物語もぞくぞくさせられるし。
    でも荒木が描く絵は、とても見てみたい気がしました。でも引き込まれるのは……嫌かも。

  • あるルポルタージュを目指す女性が追いかけた画家(緻密絵)がある集落・伝承のある出身、そこに婚約者が巻き込まれ。

    この著者では『機巧のイブ』を読んで興味を持ちました。
    機巧のイブでもそうでしたが、余韻を味わえる一冊。

    伝奇物、フォークロア物が好みの方にはオススメ。
    タイトルにあるツキノネは終始一貫謎に包まれてますが、そのはっきりしないところが想像力を掻き立てられます。
    現代の伝奇小説。

    主要な登場人物のその後がモヤモヤなあたりが個人的に好み。

  • 3.13/78
    内容(「BOOK」データベースより)
    『彼女をそこから出してはいけない―老夫婦惨殺現場で保護された身元不明の少女、十九年前、ダムに沈んだ町を精密に描く天才画家、その絵に魅入られる女性フリーライター。三人が出会うとき、開くはずのなかった扉が開く。』

    冒頭
    『――君は僕と同じだ。
    自宅から二時間以上かけて漕いできた自転車を、新興住宅街の一角に建つ一軒家の前に停めると、日高勇気はスレート葺きの屋根を見上げた。
    もう何日も周辺の下調べを続けてきた。きっと「ツキノネ」の元に辿り着いたのは、僕が最初だ。』


    『ツキノネ』
    著者:乾 緑郎(いぬい ろくろう)
    出版社 ‏: ‎祥伝社
    単行本 ‏: ‎289ページ

  • 物語にひきこまれ、止められなくなって一気に読んだが、最後よく理解しきれなかった。

  • ミステリ以上にホラーは読まないのだが、「イヴ」の作者ということで読んでみた。
    のだけど、やっぱ合わないなぁ…
    関わった人間は全員不幸になり、化け物は退治されず、って、こうじゃないと納得しないのがホラー好きってことなんですかね?

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。小説家・劇作家。2010年『完全なる首長竜の日』(宝島社)で第9回「このミステリーがすごい!大賞」を、『忍び外伝』(朝日新聞出版)で第2回朝日時代小説大賞を受賞しデビュー。2013年『忍び秘伝』(文庫化タイトル『塞ノ巫女』)で第15回大藪春彦賞候補。近年は作品の英訳版が発売され、中国のSF雑誌にも掲載されるなど、海外での評価も高い。『機巧のイヴ』シリーズ(新潮社)、『見返り検校』(新潮社)、『僕たちのアラル』(KADOKAWA)、『ツキノネ』(祥伝社)、『ねなしぐさ 平賀源内の殺人』(宝島社)など、著書多数。

「2020年 『ドライドックNo.8 乾船渠八號』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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