- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396636180
作品紹介・あらすじ
妹が、怪我を負った。案外面倒な兄なんだな、おれは――。
家族と、友と、やりきれない想いの行き先を探す物語
累計32万部突破『ひと』『まち』に続く新たな感動作、誕生!
友がいて職場があって、ひとが築く、まち。
その中に暮らす我が家。近くて遠い、家族。
社会人三年めの三上傑には、大学生の妹、若緒がいた。仲は特に良くも悪くもなく、普通。しかし最近、傑は妹のことばかり気にかけている。
傑の友だちであり若緒の恋人でもある城山大河が、ドライブデート中に事故を起こしたのだ。後遺症で、若緒は左足を引きずるようになってしまった。
以来、家族ぐるみの付き合いだった大河を巡って、三上家はどこかぎくしゃくしている。教員の父は大河に一定の理解を示すが、納得いかない母は突っかかり、喧嘩が絶えない。ハンデを負いながら、若緒は就活に苦戦中。家族に、友に、どう接すればいいのか。思い悩む傑は……。
感想・レビュー・書評
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事故で足に障害を負ってしまった妹の兄が主人公。
後天的な障害を持った人のきょうだいもそれはそれで受け入れるのも辛いんだろうな。
しかもその事故は妹の彼氏であり、兄の友達でもある人が運転していた車に乗っていたから巻き込まれてしまった部分もあるし。
憎むに憎めないし、でも許すこともできない。
難しい立場だわー。
だけど、思い立ったが吉日で間髪入れずに謝ってしまうって見習いたいと思ったね。
思いは言葉にしないと伝わらないのは知ってるけど、それができずに大人になってしまったからな。
なんか一冊で色んなことを感じた。
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ちょっと心が痛くなる。でも、良かった。
他人の気持ちが分かる人になりなさいと幼い頃からよく言われた。でも、考え過ぎると足元が覚束なくなって躓くんだ。
この作品自体は、そんなに深い所まで入り込んでいないし、程よい視点で捉えてくれている。家族、夫婦、兄妹、友人、同僚、部下、色んな繋がりがあって、毎日を生きている。捉え方は人それぞれだとは思うが、筆者は毎回このシリーズ最後の一文に全てを込めてくる。今作は私の中では腑に落ちた。良作ですよ。 -
今回も面白かった!
そして今回はさらに普通感3割増しの主人公
もやもやな自己嫌悪がなんかわかるなーって感じです
そしていつものように最後に主人公はちょっとだけ変わる
ちょっとだけだから自分も簡単に出来そうかなと思ったりするけれどそれなりに大変だ
ちょっとだけ変えるのにだって相当自分を奮い起こさないとできない
でも自分がちょっとだけ変わることで周りは劇的に変化する!…なんてことはない
周りもちょっとだけ変わる
ただそのちょっとの変化は円を描くように自分の周りに広がるので最初のちょっとの何倍にもなる
そしてちょっとの連鎖が遥か彼方まで続いていったら凄いことになりそうだ
遥か彼方まで続いた自分のちょっとがいつか戦争を止めたりしないだろうか
遥か彼方まで続いた自分のちょっとが飢えに苦しむ子どもたちを救ったりしないだろうか
そんなことを夢想する
みんなのちょっとを合わせたら地球の機嫌が直ったりしないだろうか -
『まち』を読んですぐ。
いきなり喫茶店『羽鳥』登場!
そして、気になっていた瞬一君のその後も判明。
さらにさらに、砂町銀座商店街のコロッケも。
これって『まち』にも出てきたけれど
『ひと』の舞台になっていた場所ですよね。
ずっと前に読んだので、ぼんやりしか覚えていないけど。
さて、この作品。
主人公は 三上 傑(すぐる)、25歳。
3歳年下の妹が事故に遭い、
足を引きずってしか歩けない体になってしまう。
妹の彼氏で傑の親友でもある大河の運転が原因。
結果、傑と大河の関係が疎遠になり、
大河と親しくしていた傑の家族も
お互い 関係がぎくしゃくするようになる。
人間関係って、なかなか難しい。
結局、適切な距離をとること…に尽きるのかな。
ただ、家族って近過ぎるところが問題。
無理って思ったら、物理的に離れることですよね。
傑くんのお母さん偉い!って思っちゃいました。
そして、頭と気持ちのずれを縮めるのは
もう、時間しかない、ですよね。
この作品は傑の苦悩が中心に描かれるので
終始ほんわか温かい、というわけではありません。
でも、そこは小野寺氏。
荒川河川敷で吹く爽やかな風を感じつつ
人って、やっぱり いいなぁ…と思わせてくれました。 -
安心安定の一冊。
小野寺さんらしい安心安定の温かい読み心地。
今作はちょっと不協和音漂う家族を軸に描いた物語。
河川敷、筧ハイツ、懐かしのあの人達、同級生、そして家族。
妹 若緒の事故以外はどこにでもある日常の営み。
そこで兄 傑が、家族が、何を得ていくのか温かさを拾いながら共に追う、これが心地良い時間だった。
若緒の強さ、傑が過去の出来事をなかったことにせず改めて向き合っていく姿も良い。
言葉にすることの大切さ、人としての在り方が伝わってくる。
そして最後の言葉がストンと自分の収まるべきところに収まった。温かさと共に。 -
このシリーズ、読まずにはいられなくなってる。
家族が傷つくと家の中がガタガタするし、気持ちの整理がつくまでには、それなりに時間が掛かるんだろう。 -
最高です。
三部作の中で、話のテーマとしても、主人公としても、個人的には一番好みです。
「ひと」や「まち」は、周囲の人との関係性などに焦点が当たっていましたが、「いえ」は家族がメインテーマ。
家族や周囲の人とのギスギスした関係が、ゆっくりと氷解していく感じが、読んでいて本当に心地良かったです。
で、その氷解のきっかけが何か特別なことではない所が良いです。家族や先輩、彼女と話したり、自分のことを見つめ直したりしたことで、絡まった紐がスルスルほどけていく感じというか。
そして、主人公の三上傑くん、周りに素っ気なくて、淡白なところにシンパシー感じます。(ホケツだったとこも)
特に、いつでも前向きでないと、罪である様な風潮に対する考え方に共感。
実際、基本は前向きなんだから、落ち込んだ時くらい、そのうち前向きになれればいいって感覚でちょうどいいと思いますし。
「まち」と「いえ」の舞台でもある平井駅で聖地巡礼をしたくなりました笑 -
「ひと」と「まち」もブクログ登録前に読んでいるが、似たシリーズでいうと3作目。
読んでいて、町並みや近所の様子で「ひと」「まち」に登場した感のご近所さんたち。
今回は、妹が友人とドライブデート中に事故をおこし、その後遺症で足を引きずるようになる。
家族ぐるみで親しかった友人とも気軽に会うこともなくなり、それ以来両親も喧嘩が絶えなくなっている。
おまけに職場のパートさんとも意思疎通が上手くいかずに毎日モヤモヤしている…という兄からの目線で話は、進んでいく。
就活中の妹は、事故のことを気にすることもなく、気がつけば彼とは、自分から別れたと言う。
さて、兄はどんな気持ちになるか…。
ひとり思い悩むより誰かのことばであったり、行動によって自分の気持ちもまったく変わることに気づく。
少しの勇気と心がけひとつで、自分も相手も気持ちよくなる。
何気ない日常の生活の中で、ゆっくりと気づかせてくれるのは、この物語ならではだろう。
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人間、ものの感じ方は変えられない。これはちょっといやだな、と感じてしまうのはしかたない。でも感じたあとの行動を変えることはできる。こうは動くまいと努めることはできる。その意味でのみ、人は変われる。ただし、とても難しい。それは、生きているあいだずっと自分を律しつづけるということ だから。
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世の中、そうそう思ったようにはいかない。
妹の交通事故で受けた障害も、事故を起こした相手が自分の友達だったら傑のような気持ちになっても仕方ないと思う。気持ちが何か一点に定まったままになると当たり前だけど、そんな気はなくてもおざなりになってしまう。まさに負のスパイラル。
妹提案の家族会議をきっかけに、諸々のギクシャクを解決、決着をつける傑。物事を白黒はっきりさせて、逆にはっきりさせずに解決するのもありなんだなと改めて思った。だけど私は白黒云々以前にそんな一歩も踏み出せなさそうだ。