蹴れ、彦五郎

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636272

作品紹介・あらすじ

今川義元の嫡男 今川彦五郎氏真はなぜ名家を没落させたのか
蹴鞠と歌を何より好んだ戦国武将が天下人に見せた正しき矜持とは?
直木賞作家 今村翔吾の凄みあふれる驚愕の歴史短編集

桶狭間での父義元の急死を受け、 彦五郎氏真は駿河今川氏の当主となった。
だが、落日はすぐそこに――家臣だった松平元康(徳川家康) は離反、 甲斐武田からも圧迫され、 正室である相模北条氏の娘・早川殿とともに転々と落ちゆく日々。そんな中にも救いはあった。 氏真は近江の寺で出会った童子たちの師となり、ある希望を抱く。 しかし無常にも、天下をその掌中に収めつつあった織田信長は、氏真と心通わせた子らを叛乱の縁者として殺してしまう。 蹴鞠の名手であり、歌をこよなく愛した男が見せた最後の心意地とは…… ( 「蹴れ、彦五郎」)
小田原征伐で奮戦した北条氏規を描いた「狐の城」、信玄が廃嫡した武田義信の苦悩の物語「晴れのち月」、江戸を築いた太田道灌を綴る「瞬きの城」など、珠玉の八編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったねー!

    今村翔吾さん初期の短編集
    短編も面白いのは分かってましたが、内容もバラエティに富んでいます
    まだまだ隠し持った武器も感じさせ、さらなる飛躍を期待させます

    ところで今村翔吾さんの歴史上の人物が登場する作品レビューに「○○○○はこんな一面があったんですね」とか「△△△△は本当はこんな人だったんですね」といった感想が散見され、どうしても「んんん?」と思ってしまいます
    もちろん本を読んでどのような感想を抱こうが個々人の自由であるというのが大前提であり、他人がとやかく言うことではないとは思うのですが、どうしても「いやいやいやこれはあくまで今村翔吾さんの創作で…」と突っ込みたくなってしまいます

    ですがここでふと考えました
    そもそも歴史上の人物の人となりなんてほとんどが伝聞によって残っているにすぎず、その伝聞にフィクションが多分に混じっているであろうことは想像に難くないのです

    例えば三国志の英雄などで言えば現在信じられている人となりは完全なる創作物である『三国志演義』によるものだし、さらに日本でいえば吉川英治さんの著作にある人物像こそが日本人の思い描く関羽であり諸葛孔明として定着しています
    また日本が誇る幕末の偉人坂本龍馬は現在の研究ではさほど大きな役割を果たしていなかったのではとまで言われていますが、多くの日本人が思い描く人物像は司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』の幕末の志士坂本龍馬であり、日本の近代化に大きな功績のあった人物として今後も語り継がれてゆくのではないかと思います

    ですからまぁそもそも歴史などというものは曖昧模糊のものと割り切って、深く考えずに今村翔吾さんの世界観に浸りとことん楽しむのも一興ではないかと思うのです
    1000年後には今村翔吾さんの著作が史実になってるかもしれませんしねw

    ちなみに吉川英治さんの著作はすでに史実です(そんな奴がよう人様のレビューをとやかく言えたな!)

    • ひまわりめろんさん
      みんみんくん
      たいへん申し訳ないがわたくしは
      斎藤一、美化されすぎじゃね?派に所属しておるので同意しかねる
      (とやかく言わないって言ったばっ...
      みんみんくん
      たいへん申し訳ないがわたくしは
      斎藤一、美化されすぎじゃね?派に所属しておるので同意しかねる
      (とやかく言わないって言ったばっかり!)

      あと斎藤一の史実はいまや『るろうに剣心』w
      2022/08/30
    • みんみんさん
      じゃ土方歳三は生きてるしw
      ゴールデンカムイやし♪(´ε` )
      じゃ土方歳三は生きてるしw
      ゴールデンカムイやし♪(´ε` )
      2022/08/30
    • ひまわりめろんさん
      じゃ源義経は生きてるし
      チンギス・ハーンやし
      じゃ源義経は生きてるし
      チンギス・ハーンやし
      2022/08/30
  • 日本史ポンコツ克服前に読んでしまったけれど、歴史年表の狭間を、柔軟な発想と臨場感ある文章で表現して、短編集とはいえ、歴史小説の醍醐味を感じました。
    戦国の武将達の厳しく激しい生き様が描かれている作品が多い中で、
    「三人の人形師」は、異色で他の作品とは、見える景色が違いました。熊本出身の三人の人形師達の、それぞれの生涯。安本亀ハは熊本迎宝町出身。(最近、この近くのビジネスホテル使ったんですよ。)松本善三郎、その弟子と言われる秋山平十郎。同年代にスープの冷めない距離に天才達が生まれ育った奇跡のような事実。あのあたりですと、当時なら熊本城の全貌が見えていたのではないでしょうか。(熊本地震で大変な事になっていた熊本城も天守閣復活しました。)それぞれが、大阪・江戸へと人形師として成功を収めていく。なんだけど、秋山平十郎の作品は、熊本にある清正公像以外はほぼないらしい。それを今村氏が知って、この物語を展開できるという発想力。見事ですよ。

    「蹴れ、彦五郎」は、冒頭の掛川城に再生当時登った事があり、あの景色を見たのかって、物語にずんって入り込めました。で、静岡がサッカー王国だったの彦五郎が原点なのかしら?

    • ひまわりめろんさん
      おびのりさん
      こんばんは!

      彦五郎が原点って、なわけないでしょーが!って突っ込みつつ、その発想に思わずにんまりしましたよw
      おびのりさん
      こんばんは!

      彦五郎が原点って、なわけないでしょーが!って突っ込みつつ、その発想に思わずにんまりしましたよw
      2022/10/13
    • おびのりさん
      ひまわり先生 おはようございます。
      先生推しの今村翔吾さん、美味しく頂きました。
      掛川城近隣にエコパもあるし、ちょっと自信あったんですけどー...
      ひまわり先生 おはようございます。
      先生推しの今村翔吾さん、美味しく頂きました。
      掛川城近隣にエコパもあるし、ちょっと自信あったんですけどー。残念ですう。
      2022/10/13
    • ひまわりめろんさん
      あ、そうなんだ
      じゃあ彦五郎説もあながち的外れじゃないかもね
      ごめんね、よく知りもしないで偉そうなこと言っちゃつて
      エコパも早急に彦五...
      あ、そうなんだ
      じゃあ彦五郎説もあながち的外れじゃないかもね
      ごめんね、よく知りもしないで偉そうなこと言っちゃつて
      エコパも早急に彦五郎スタジアムに改名すべきだね!ってそんなわけあるかーい!(ノリツッコミ)
      2022/10/13
  • 『童の神』『じんかん』『塞王の盾』『ぼろ鳶組シリーズ』『くらまし屋シリーズ』など長編小説を描かれるイメージの強い今村先生の、デビュー前に描かれた短編を含む初期作品を集めた短編集。

    今川義元の嫡男・今川氏真、織田信長の孫・織田秀信(三法師)、大田道灌、新発田重家、武田信玄の嫡男・武田義信、北条氏規等など。戦国の世に名を轟かせた有名武将たちの周りには、あまり著名ではないけれど、戦国の世を確かに彩った漢たちは当然のごとく大勢いた。
    そんな当たり前のことを、今更ながら世に知らしめようとする今村先生の知識力にはいつも感心させられっぱなし。
    武田信玄が廃嫡した武田義信を主人公にした『晴れのち月』が特に良かった。

    「それぞれ守るものが異なるために戦になるのだ」
    「死んでも守らねばならんものは名なのか」
    数々の戦を前に自問自答を繰り返し、武士としての矜持を持ち自分の信じる道を突き進む漢たちの姿はいつ見ても素敵だ。

    それにして武将のみなさん、名前が似ているので読んでいて何度も混乱した。苗字がないと区別がつきにくい。

  • デビュー前、デビュー 当時の短編集

    《蹴れ、彦五郎》
    父、今川義元の跡を継いで、駿河今川氏の当主となった、彦五郎氏真。
    松平元康の離反や、甲斐武田の圧迫を受け、正室・早川殿と、大名の地位を失い放浪する。近江六角家臣の遺児たちに請われ、剣術や兵法を教える中で、彼らの将来や、無限の可能性を感じる。そんな時、父の仇・織田信長から『蹴鞠を披露せよ』との要請が届く。断り続ける氏真だったが・・。

    《黄金》
    織田信長の孫・織田秀信は、徳川家康討伐の兵を出した、石田方に味方する。
    「織田信長の嫡孫らしくあろう」と
    負け戦の最中、家臣に与える、感状を書き続ける。

    《三人目の人形師》
    生き人形に魅入られた、三人の人形師の狂気。

    《瞬きの城》
    雁に出た、太田道灌は、降り出した雨を凌ぐため、一件の民家に着いた。一人の見目麗しい女性に「蓑を貸してくれ」と頼む。女性は、しばし後、山吹の枝を差し出した。
    道灌は、和歌に疎く、その意味が理解できなかった。

    《青鬼の涙》
    "彦根の赤鬼"井伊直弼に対して"鯖江の青鬼"と、並び称された、間部詮勝。
    掌編と呼ばれる短い小説。

    《山茶花の人》
    由良勝三郎が見た、新発田重家。上杉家に刃向かった彼は、悪なのか、義を持ち合わせていたのか。

    《晴れのち月》
    17歳で初陣を飾った、武田信玄の嫡男・武田義信。
    武田家に反旗を翻した、知久氏は、武田勢を分散させて、本陣を突く。
    父親を守ろうと、義信は、自ら動いたが、父を助けたい一念で駆けつけた義信に、論功行賞の場で、信玄は、義信を詰った。
    そんな折、今川義元が討たれたとの報が・・。

    《狐の城田 》
    氏政、氏邦が、豊臣秀吉に逆らった事で、戦に。
    豊臣との戦に必ず勝つと信じる重臣。
    北条四兄弟の四男氏規は「負ける」と言い放つ。

    知っている歴史上人物や、知らなかった人物。
    それぞれ、魅力的に書かれているが、やはり、長編の
    ドラマティックさに、欠けるところがある。

  • 心まで弾む一冊。
    蹴り上げた鞠は今度はいつの時代の誰の元へ?っていうぐらい時代もさまざま、人物もさまざま。
    八回の心まで弾む蹴鞠で楽しませてくれた。

    どれも甲乙つけがたい色とりどりの心模様。

    どんな日陰の人物でも女性でも、今村さんが日向に連れ出してくれると途端に輝きだし熱を持ち始める。 

    これがダイレクトに読み手の心にも火をつけて目頭も熱くしてしてしまう。 
    それがたまらない。 

    何回、熱い涙を滲ませたことか、何回せつない涙を拭ったことか。

    そして初のホラーには意外感と興奮感。

    人形師の世界はしっとりからのラストのぞくりが良い。

  • デビュー前の作品がほとんどであるが、もうすでに作風は確立しているなぁ、、と。
    今川氏真や、北条氏規など、メジャーな大名の子視点で話を作る着眼点も素晴らしい。
    どれも良かったが、武田推しの自分としては、「晴れのち月」がとても良かった。
    いつか武田信玄の話も書いて欲しい。。

  • 今村翔吾さん、どれをとっても読者の心を掴む術を心得ておられるというか、上手いなと思う
    今回の本は、短編8作
    あとがきがついているので、その作品誕生の経緯がよく分かり興味深い

    大好きな「羽州ぼろ鳶組」シリーズの前後にこんな作品があったのかと思うと同時に、短編とはいえ次々と作品を生み出されるエネルギーに感心する

    8作どれもおもしろかったが、私のお気に入りは、2015年に書かれた初めての作品「蹴れ、彦五郎」と二作目の「狐の城」だ

    どちらも戦国時代の北条家、今川家、武田家あたりが題材になっているため、ページをあちこち繰りながら、頭の中に家系図とまではいかないまでも自分なりに結びつけていった
    三家が同盟を結び、婚姻関係で繋がっていたことを知らなかったのでこの本で知った次第だ

    北条氏康の4人の息子と愛娘由稀。その由稀が今川義元の嫡男今川彦五郎に嫁いだ経緯と二人の何とも微笑ましい関係 「蹴れ、彦五郎」
    北条家の4人の息子の絆が分かる「狐の城」
    今川彦五郎の10歳の妹月音が武田家の15歳の御曹司義信に嫁ぎ・・・「晴れのち月」

    今村さんの描かれる男性は本当にかっこいい
    武勇・知略に富んでいるばかりがかっこいいとは限らない
    この本には、世の中からは「阿呆」や「うつけ者」と呼ばれた戦国時代に生きるにはあまりにも気の毒な男性が多く登場した
    愛し守るべき人のために敢えて、臆病に徹し命を守ろうとする彦五郎や義信・氏規の人柄に惹かれた










  • 身の程を知らないのは承知の上だが、
    こんな男たちになりたいものだと、
    願う自分がいた…。
    「才」をひけらかさず、
    「臆する」ことを恥じず、
    蔑まれようと信じるものに命を懸ける。
    惚れ惚れするような生き様に、
    すっかり魅了されてしまった…。

  • 8本目の槍より気合が入っている感じがします。
    幕末の怪談話と太田道灌、小田原四兄弟が好み

  • 今村さんの初期作品短編集。デビュー前に書かれた作品を含む、八話が収録されています。

    表題作で第一話「蹴れ、彦五郎」の今川彦氏真、第二話「黄金」の織田秀信、第七話「晴れのち月」の武田義信、第八話「狐の城」の北条氏規など・・・。
    この短編集で描かれるのは、名だたる武将達の子息や孫など、偉大な父祖の影に隠れがちな、渋いチョイスの人物達です。
    ですが、そこはキャラ造形がお上手な今村さん。
    各話読むごとに、その話のメインキャラ達を好きになってしまうような、魅力あふれる描かれ方をされていて、流石だなと唸らせるものがあります。
    一冊通して“人はそれぞれ独自の才能がある”という事がテーマなのかな、という印象を受けました。
    時代や社会構造等の事情でそれが活かせない事もあるかもしれないけれど、皆必ず何かしらの“才”はあるんだよ・・というメッセージのようなものを勝手に感じとった次第です。
    そんな中、異色作といえるのが第三話「三人目の人形師」。時代も近代ですし、サイコサスペンス的な仕上がりで、ゾクっとしながらも、このような話も書かれるのだなぁと新鮮に思いました。
    というわけで、本書は様々な人物が味わい深く書かれた、“才”の玉手箱のような短編集です。装丁も美しくて良きですね。

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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