やっと訪れた春に

著者 :
  • 祥伝社
3.79
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本棚登録 : 147
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636296

感想・レビュー・書評

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  • なんだか青春恋愛物みたいなタイトルですが、れっきとした武家物の時代小説です。しかも主人公は致仕した老人だし。
    主人公の心の声を鋭く短い文章で書き連ね、言わば点描画の点を短い線に置き換えたように、物語が形作られて行きます。文章は短いけれど、次々にミッチリと打ち出されるので、ある種の饒舌感もあります。また、時に対象を直接描くのではなく、周りを描くだけのところもあり、置いてけぼりを食いそうになります。
    ひとことで言えば時代サスペンス。最初からグイグイと読ませます。
    かつて城下の鉢花という桜の名所で藩主自らが佞臣達を討った大政変。後に武神とあがめられ、藩領の育成・繁栄にも力を発揮した藩主の政変を支援した「鉢花衆」の孫であり、若い頃に非情な鍛錬を強いられた主人公とその友人が、分家当主の暗殺事件の謎を追う。「いるかいないかもわからぬ(鉢花衆の残りの)一人」は誰なのか?
    最後に埋まったミッシングリングは少し飛躍しすぎで、その前にもう一つ二つ、回収ネタを作って置くべきだった気がしますが、非常に印象的なエンディングでした(ただ、サスペンス色が強いという意味で私の好みからはやや外れてしまいます)。

  • ミステリーたっぷりな時代小説を
    堪能させてもらった。

    『技倆』と『斬気』―
    その違いも量も、
    永遠に理解できないし
    筆舌に尽くしがたい稽古など
    想像もしたくもない。
    しかし、
    与えられた役目を淡々とこなす男たち。
    達人の域の彼らが味わう孤独が
    何ともわびしく思えてならない。
    そして、
    改めて家族の有難さをかみしめた―。

  • 本家と分家、交代で藩主を出していた橋倉藩では十四代目当主候補岩杉重政が相続を辞退し、ようやくその分裂めいた状況が終息するかに見えた…が、重政暗殺により事態は急変、本家分家それぞれの近習目付であり幼馴染であり親友の長沢圭史と団藤匠が暗殺犯を追う。

    事件の成り立ちも、登場人物たちの動きも思想も、間違いなく江戸時代の一地方藩を舞台にした時代小説なのに、現代社会派ミステリーの味わいを深く漂わせる。官僚の、家族を亡くした男の、老いて思うように生活できなくなった還暦過ぎの、それら全ての悲哀はすべて時代を超えて通じる感情であり、物語。

    清廉さ鋭利さを伴う友情や愛情は北欧ミステリーの味わいにも似ているように思える。青山文平は見逃せない。

  • サスペンスのようで興味を惹かれた

  • 時代小説とミステリが合わさったような小説。普段は現代ものばかり読んでいるので、初めは文章や単語に馴染めなかったが、登場人物やその時代の暮らしがとても魅力的で飽きなかった。
    ストーリーも大胆で面白く、最後は一気に読んでしまった。

    宮部みゆきさんの時代小説と同じく、梅干しやうどんなど、素朴な料理がとっても美味しそう。

  • 本家と分家が交互に藩主を出すという極めて不安定な事情を抱えた藩で、両家の当主を支えながら藩の政治の安定を図ってきた二人の壮年の侍。藩の中興の祖から続く因縁を密かに抱えながら、厚い友情で結ばれ苦楽を共にしてきたが、重臣の暗殺により思わぬ展開を見せる。あらすじといい、登場人物の魅力といい、素晴らしい歴史小説。藤沢周平や山本周五郎に匹敵する面白い小説を書く著者。他の本も読んでみたい。

  • 2022.10.25

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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