ジークフリート (ニーベルンゲンの指環 3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784403030147

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  • 第三作品目、ジークフリート。ようやくあのジークフリートの登場と、華々しい英雄の誕生。巻末の訳者あとがきにもあるが、日本的な英雄とは違う、荒々しい若い魂という感じ…竜を倒し、美しい乙女を妻にする、それは今まで人類が紡いできた数多の物語のよくある型の一つでしかないのだけれども、ワーグナーの音楽で唯一無二の物語に昇華されつつ、その後続は果たしているのだろうか?平家物語がその後無数の作品を生んだように、パロディの中で時代を越えた共通の物語になるというのに…あまりにも視覚的にも聴覚的にも言語的にも圧倒的であるがゆえの弊害なのだろうか。三島由紀夫との関連性など指摘されるが、あまりにもかけ離れている。ジークフリートがジークフリートとして受け継がれることはないのだろうか。

    さてジークフリートである。ブリュンヒルデと出会った後の愛の歌は、トリスタンとイゾルデの二人の台詞に呼応するところもあれば、呼応しないところもあり面白いところ。

    「さようなら、ワルハラの華やかな日々よ!その栄誉にみちた広間も、塵に帰るでしょう!さようなら、誇り高い、栄光の神々よ!永遠の一族よ、喜びのうちに終末を迎えるがいい!…神々は黄昏れ、その光はおぼろになりゆく。破滅の夜が、彼らの上に降りてくる。そして、わたしには、いま、ジークフリートという明星がのぼりゆく。あなたこそは、とこしえに、わたしの富、わたしの宇宙、わたしのすべて、光り輝く愛、笑いながらの死!」
    「…ぼくに注ぐ、きららな光はブリュンヒルデという星の光!きみこそは、とこしえに、ぼくの富、ぼくの宇宙、ぼくのすべて、光り輝く愛、笑いながらの死!」

    この二人の愛の歌は死を予言しながら、トリスタンとイゾルデのように暗い地の国の雰囲気を醸し出していない。「笑いながらの死」!

  • 借りたもの。
    英雄の偉業「ジークフリートの竜退治」の章。
    神話体系における”試練を乗り越え、宝と伴侶を得る”王道スタイルがついに成就する。

    ジークフリートの鼻につく傍若無人さ、ミーメや久しぶりに出てきたアルベリッヒの狡猾で矮小なところなど、完璧な人物など誰一人いない。
    ただし、ジークフリートの恐れを知らぬ”真っ直ぐさ”が「指環」の呪いの“円環”を断つ布石になるのは事実だろう。
    ヴォーダンは初めてではなかろうか、賢者の一面が描かれる。

    それにしても、ワーグナーらしい、愛を高らかに歌う行の何と長い事……(称賛)
    アーサー・ラッカムが描くファーフナーが何か可愛い…v

    あとがきより、「登場人物らが抱える自己矛盾・自己憐憫・自己反覆・自己破壊が円環を成している」という指摘が興味深かった。
    そして行動や剣が象徴する、直線的なジークフリートが「愛」によって変容する。

    いよいよ終焉へと向かう。

  • 何ものよりも、強い剣があるのね

  • ジークフリートが登場する第3部。
    解説にあるとおりジークフリート的英雄像は、あまりに闘争的すぎて感性には合わない。
    登場人物の示す矛盾した構造も、過剰で鼻に付く。
    指輪物語のモチーフを捉えることだけが、面白みか。

  • ジークリンデが難産の末産み落としたジークムントとの間の子供、ジークフリートは森の中の鍛冶屋ミーメの元で成長して若者になっていました。  彼はろくな教育は受けてこなかったので、一見粗野で常識はずれな若者ですが、同時に自然の観察力 & 洞察力に優れるという彼の生い立ちならではの知恵を身につけています。  彼は誰に教えられるわけでもなく、森の動物たちを見ているうちに「生命には父親と母親が必要である」ということ、「愛とはどんなものであるのか」を理解しています。

    ヴォータンの仮の姿、「さすらい人」と問答をしたミーメは、ジークリンデが遺したジークムントの形見、ノートゥングを鍛え直すことができるのは「怖れのなんたるかを知らないもの」だと知ります。  そしてその「怖れのなんたるかを知らないもの」とはすなわちジークフリートであることも・・・・・。  怪力のジークフリートを使ってニーベルンゲンの指環 & 宝の上で惰眠を貪っているファフナーを殺して、ついでにジークフリートも始末して、全てを手に入れようと画策していたミーメは途方に暮れますが、ジークフリートが剣を鍛え直しているのを見ているうちに、別の悪だくみを思いつきます。  そうこうしているうちにジークフリートの手によりノートゥングが再生します。

    さて、ミーメに言われて「怖れの何たるか」を学ぶためにファフナーが惰眠を貪っているナイトヘーレまでやってきたジークフリート。  まあ、その前にヴォータンとアルベリヒの問答もあるんだけど、そこはとりあえずすっとばして(笑)、ジークフリートの「亡き母を恋うる歌」、ワーグナーの作った音楽の中の最高傑作の1つ「森のささやき」、そして KiKi の大好きな「ヘッポコ葦笛」のシーンです。  うんうん、このクナ盤でもやっぱりここは素敵だなぁ   でも、どうしてもうまく吹けないジークフリートは、得意の角笛を吹きならします。  そして、ファフナー起床。  ジークフリート vs. ファフナーの闘い。  ミーメの悪だくみ喋りまくり & ミーメの死。  そして森の小鳥の美しいさえずり。

    (前文はブログにて)

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著者プロフィール

(Richard Wagner)
19世紀ドイツの作曲家・指揮者。ロマン派歌劇の頂点として「歌劇王」の別名で知られる。理論家・文筆家としても知られ、音楽界だけでなく19世紀後半のヨーロッパに広く影響を及ぼした。1813年、ライプツィヒに生まれる。1831年、ライプツィヒ大学に入学して哲学や音楽を学び、翌1832年には交響曲第1番ハ長調を完成させた。1839年パリへ移住するが認められることはなく、1842年ドイツに帰る。1849年、ドレスデンで起こったドイツ三月革命の革命運動に参加するが、運動は失敗したため指名手配され、チューリヒへ逃れて数年間を過ごす。本書収録の論考はこの亡命期間中に執筆された。1864年、バイエルン国王ルートヴィヒ2世から招待を受ける。しかし、すでに噂となっていたリストの娘で指揮者ハンス・フォン・ビューローの妻だったコジマとの仲を王も快く思わなかったことから、翌年スイスへ移り、ルツェルン郊外の邸宅に住んだ。1872年、バイロイトへ移住し、ルートヴィヒ2世の援助を受けて、彼自身の作品のためのバイロイト祝祭劇場の建築を始め、1876年に完成した。1882年、最後の作品となった舞台神聖祝典劇『パルジファル』を完成。このころには祝祭劇場と彼の楽劇はヨーロッパの知識人の間で一番の関心の的となった。1883年2月13日、ヴェネツィアへの旅行中、客死。

「2012年 『友人たちへの伝言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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