- Amazon.co.jp ・本 (662ページ)
- / ISBN・EAN: 9784404026835
作品紹介・あらすじ
失われた定家自筆の百人一首の謎を解く!突如、ニューヨークのオークションに現れた百人一首のオリジナル"小倉色紙"。そして古書跡研究の第一人者の怪死!歴史文学賞受賞の俊英が"小倉色紙"の謎に挑む異色の歴史ミステリー。渾身の書下ろし1,500枚。
感想・レビュー・書評
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長大な歴史ミステリ。分厚いボリュームと聞いたことのない作者名でとっかかるのにちょっと覚悟がいった。読み始めてみれば謎の多い百人一首の色紙をめぐる興味深い考証と、それにまつわる美術館開館記念の企画展に奔走する秋岡君の周辺の物語とが巧みな筆致で綴られていてすぐにはいりこめる。小倉色紙の出所真贋も十分ミステリだが、それに加えて関係者の殺人事件が起こり、秋岡君が謎を解くという現代ミステリにもなっている。現代の事件の方は底が浅いし、人間関係や過去の経緯ができすぎているが、長大な作品のアクセサリとみればこれはこれで十分だ。定家や百人一首をめぐる考証が詳細多岐にわたり煩雑な感もあるが、歴史物としてはしょうがないところだろう。古美術品の真贋はよく問題になるけれど、いまの時代紙はもちろん墨の成分とかもっと科学的な検証ができないものなのだろうか。それと女性作家らしく茜や美郷など周辺の女性が魅力的だ。空の企画展なんてぜひ見たいと思う。こんな力量ある作者を聞いたことがなかったのはひとえにぼくの不明であった。ぜひ他の作品も読んでみたい。
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百人一首のオリジナル・小倉色紙の謎を巡る、歴史美術ミステリ。
定家以降の日本美術史もさることながら、美術館にオークション、美術研究界に至るまで、現代の美の裏舞台の詳細を覗けて実に興味深い。
時代を超えて、金と欲、生の狂おしさが絡みつく、日本美術界の鬼っ子は、今も未来も、混沌とした闇の向こうから人間を吸引するのだろうと思うと、奇妙な恍惚が空恐ろしい。