挿絵画家ア-サ-・ラッカムの世界 (ビジュアル選書)

制作 : 新人物往来社 
  • KADOKAWA(新人物往来社)
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784404040183

感想・レビュー・書評

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  • ブク友さんのレビューで「しまった、読もうと思っていたのに!」と急ぎ借りてきた本。
    教えて下さったブク友さん、ありがとうございます。

    アーサー・ラッカムという名前を聞いてピンと来なくても、この表紙画像だけでも見た覚えがある方は多いかと。中を読めばますますその感は強くなること請け合いで、どこかで見た・・・でもどこだったろう?と記憶の糸を手繰り寄せる作業になりそうだ。
    ひと言で言い表すなら、そんな「懐かしい絵」と言える。

    1867年ロンドン生まれの挿絵画家さん。
    英国の昔話や民話に頻繁に登場する妖精さんたちが、随所に描かれる。
    特徴的な、精密な線画に淡い色彩の水彩を施してあり、色数はごく少なく、あっても同系色か差し色にスモーキーな赤や蒼が入る程度。
    幻想的で美しく、時に恐ろしく、雄弁な絵画だ。
    載っているのは「ワンダーブック」「不思議の国のアリス」「ピーター・パン」、そして「真夏の夜の夢」、圧巻はブク友さんおすすめの「ニーベルングの指環」。

    ワーグナーのこの超大作は、4日間で合計15,6時間を覚悟しなければならないというとんでもなく壮大な話で、三枝成彰さんによれば「決して初めてのオペラ鑑賞に選んではいけない作品」だと言われる。理由は「辟易して、オペラが大嫌いになるから」らしい(笑)。
    人間の終末、キリスト教の終末、そしてドイツの神話物語と、様々な見方があるこの話を挿絵で表現したというその一枚一枚が、まことに力強く美しい。
    水の流れ、乙女たちの黒髪、空気や雲の流れ、登場人物の表情や衣装などが、時に話以上にドラマチックで見飽きない。
    どの絵も解説付きなので、原話を知らなくともついていけるが、絵そのものの魅力に囚われてしまいそうだ。
    ここでは「絵を見る技術」は必要ないかも。

    そんなワタクシは子供の頃「不思議の国のアリス」の挿絵で知った挿絵画家さんだ。
    「総論」によれば、1907年にこのお話の出版権が消失したそうで、多くの画家がアリスの挿絵を描いたのだそうだ。
    ところが、ラッカムの描いた等身大のアリスは酷評だったそうで、何だか意外な話だ。
    それ以降は「鏡の国のアリス」の依頼も断ったというが、人気は落ちることなく上記の「ニーベルングの指環」や「イソップ童話集」や「マザー・グース」などを次々に手掛けている。
    数々の歴史的名作が生まれた土地だからこそ、その挿絵文化も黄金期を迎えたのだろう。
    印刷技術が発達していった時代というのも、大きな推進力だ。

    ところで、アリスの挿絵に登場する「賢いドードー鳥」に憧れた小さな私は、その後人間たちの乱獲によってこの鳥が絶滅したと知り、さめざめと泣いた過去がある。

  • アーサー・ラッカムは19世紀末~20世紀初頭にかけて活躍した、イギリスの挿絵画家。
    本書は、『ワンダー・ブック』『不思議の国のアリス』『ケンジントン公園のピーター・パン』『真夏の夜の夢』『ニーベルングの指環』を収録。

    髪の毛まで書き込んだ繊細な線と、セピア調の彩色が印象的。幻想的な雰囲気と豊かな物語性が持ち味である。

    表紙のような愛らしい『不思議の国のアリス』が、失敗作として酷評されたというのは意外だった。
    しかし、不思議の国の住人が生き生きとしているのに比べると、アリスは傍観者のように無表情。ハートの女王に喧嘩を売るような図太さもアリスの魅力なので、ラッカムのアリスは少し物足りない。

    私が好きなのは、『ニーベルングの指環』。
    まばゆい光や吹きすさぶ風がこちらにまで届きそうで、迫力のある画面に圧倒される。また、ブリュンヒルデやライン川の乙女たちの神秘的な美しさが際立っている。
    どの作品も細部まで描き込まれているので、ゆっくり楽しみたい。

  • 『真夏の夜の夢』のモノクロームの絵はビアズリーを想わせる。そして、『ワンダーブック』の子どもたちが林檎の樹の周りに集う絵はケイト・グリナウエイにも似ているし、全体にはバーン・ジョーンズの雰囲気もある。同時代のイギリスに生きた彼らは、相互に影響を与えあいながらも、それぞれに個性を横溢させている。絵の持つ物語性という点では、ラッカムがあるいは1番かも知れない。アリスは不評だったらしいが彼の描く少女は実に愛らしいし、またブリュンヒルデはこれ以上のものを想像できないほどだ。いずれも幻想がまさに眼前に出現する絵だ。

  • 本当に綺麗!!!
    ただ可愛らしいだけじゃなく、邪悪な感じのする妖精達。
    真夏の夜の夢は特におすすめです♡

    まぁ、不思議の国のアリスに関してはジョン・テニエルの挿絵の方が好きですが。。。

著者プロフィール

英国の挿絵本黄金期を牽引し、後世にも多大な影響を与えた画家。代表作に「ケンジントン・ガーデンのピーター・パン」「不思議の国のアリス」「真夏の夜の夢」「グリム童話集」など。

「2020年 『シンデレラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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