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- Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
- / ISBN・EAN: 9784406025201
作品紹介・あらすじ
頑強な封建体制のもとで西欧思想と格闘しつつ、開かれる海外への視野、一方、復古思想へ回帰する一群の思想家たち、爛熟する元禄文化-幕藩体制期の思想を総合的に描く意欲的試み。
感想・レビュー・書評
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前著『日本思想史序説』(新日本出版社)の続編で、近世の思想を概観し、著者自身の立場から批評がおこなわれています。
上巻でとりあげられているのは、幕藩体制形成期におけるキリスト教の伝来・布教、儒学思想の成立と展開、水戸学と国学、元禄文化で、とくに貝原益軒、伊藤仁斎、新井白石にかんしては、比較的くわしく紹介されています。
著者はマルクス主義の立場に立つ古代哲学の研究者であり、本書でもマルクス主義の観点から批評が述べられています。たとえば益軒の自然学について、唯物論の立場にどの程度接近していたのかといった尺度にもとづく批評がおこなわれていたり、仁斎の思想に弁証法に通じるものを見ようとしたり、あるいは西鶴や近松の文芸作品において社会的現実のなかの人間の姿にどれだけせまることができたかということが検討されているところに、著者の関心の所在を見いだすことができます。その意味では、やや偏りのある内容なのですが、考察の対象となっている思想と著者自身の評言との区別は明確であり、かならずしも著者の立場に賛同しないという読者であっても、近世日本思想の概要を把握するための有益な本といえるのではないかと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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