星がひとつほしいとの祈り

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  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408535715

感想・レビュー・書評

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  • 原田マハさんにはまってローリング開始し、こちらで3作目。
    以下、各章の簡単なあらすじとレビュー。
    ※ネタバレ注意

    ・椿姫 La traviata
    小さな広告プロダクションで働く香澄は、セフレとの間に身籠った末、中絶を決意する。
    田舎から上京した香澄を獲物のように扱い、性欲を満たすだけ満たし、満足したら立ち去るセフレ男が最初から最後まで酷すぎた。女性を妊娠させてしまったという点は同じでも、高校男子の方がよっぽど紳士。年齢じゃないなと改めて思った。

    ・夜明けまで Before the Daybreak Comes
    大女優のひとり娘であるひかるは、母の死後、遺言にあった通り、遺骨を持って大分にある「夜明」という名の駅を訪れる。そこで迎えてくれたのは、母が昔愛した男であり、ひかるの父でもある人(秀志)の息子(日出男)。日出男の話を聞くなかで明かされる母の孤独な決意に胸が痛む。大分の方言が強過ぎて、読むのにだいぶつっかえた(^^;)

    ・星がひとつほしいとの祈り Pray for a Star
    東京の大手広告代理店でコピーライターとして働く文香は、仕事の関係で四国に赴き、道後温泉に一泊する。夜、マッサージのサービスを依頼したところ現れたのは、盲目の老婆だった。老婆はマッサージをしながら、自分の過去について語り始める。
    盲目の中でヨネと高市先生の関係に疑心暗鬼になってしまう嬢さま(老婆)の悲しみと、嬢さまの幸せの為に自分の恋心を押し殺して奔走するヨネの健気な姿が胸を打つ。

    ・寄り道 On Her Way Home
    ハグ(波口喜美)とナガラ(長良妙子)の女二人旅を描いた物語。旅先は白神山地。半日で白神山地を回るガイド付きバスツアーに同乗したのは、黒いスーツを着込んだ若い女。始め態度が悪かった彼女は、白神山地の案内人として働いていていた亡き母を天に見送る前に、母と最期の寄り道をするためにツアーに参加していたことを明かす。
    『あなたは、誰かの大切な人』でも出てきたハグとナガラの女二人旅シリーズ。仕事を頑張ってきた大人の女性が、四十過ぎても楽しくワイワイ旅に出る様子に、こちらまで元気を貰うことができる大好きな作品。いろいろ経験してきたナガラが言う「迷ってもええねん。 それが人生やもん」には、「それもそうだな」と思える安心感がある。小説の中のキャラクターは歳を取らないので、自分も数十年したらナガラやハグを追い抜いてしまう時が来るが、それまでは人生の先輩として、彼女達のドンと構えた生き方を憧れの一つとして心に留めておきたいなと思う。

    ・斉唱 The Harmony
    飼っていたブンチョウの死を機に心を閉ざしてしまった14歳の唯は、絶滅危惧種であるトキの生態調査に参加するため、母の梓と共に佐渡島へ向かう。元トキ保護センター長の近常から聞いたトキの捕獲の話、そして唯達親子を迎え入れてくれた努と息子の亮との交流を通じて、梓の中で娘との接し方に関して心境の変化が生まれる。
    梓のせっかちな様子から、唯の塞ぎ込みたくなる気持ちがなんとなく理解できてしまった。旅先という一時的な心境の変化ではなく、東京に帰ってからも母娘が心を通い合わせられることを願う。

    ・長良川 River Runs Through It
    堯子は娘の麻紀とその婚約者の章吾と共に、亡き夫との思い出の地である長良川の旅館を訪れる。水うちわ、鮎料理屋、鵜飼…夫と訪れた場所を巡るなかで、初めて出逢った日から夫婦として過ごしてきた日々を回想する。
    お見合い結婚、配偶者の他界、娘の結婚と、ストーリーはありふれたものだが、長良川に浮かぶ屋形船や鵜飼の描写が丁寧なため、情景が目に浮かび印象に残る作品だった。

    ・沈下橋 Lorelei
    四万十川のほとりの集落である黒尊村で一人暮らしをしている多恵の元に、大麻の所持で逮捕状が出されている元継娘の由愛が逃げてきた。
    親子の距離感を川幅に喩える描写に、切なさと希望が同時に映り、素敵な表現だなと感じた。


    どの物語も心温まるものばかり。また、本作は国内旅行の話が多く、大分、愛媛、秋田、新潟、岐阜、高知と、あらゆるの方言が飛び交い、各地域の特色や文化も反映されています。原田さんの下調べの凄さを改めて実感しました。

  • 「1000年の読書」の中で紹介されていて手に取った。
    女性の旅をテーマにした短編集。
    旅先の方言がそれぞれの物語にいい味わいを出している。
    もの悲しい雰囲気のものが多かったけど、旅先が田舎だからか、どこかに温かさを感じさせる描写があり、バランスが取られていると感じた。
    表題作「星がひとつほしいとの祈り」が一番好きだった。

  • 短編集。どのお話も、何かしら苦しい状況にある登場人物が、それでも生きていく姿が描かれている。だけど、生きていればいいこともある、というような描写はありません。みんなそれでも生きていくんですね。

  • 女性たちのとある日常を切り取った、短編集。
    劇的でもあり、平穏でもあり、なのでしょうか。

    生きていくってことは、様々な事が起きるもの、
    個人的には“旅は寄り道”というのが、いいなぁ、、と。

     “旅のことを、母は、人生の寄り道、と喩えてみた。”

    こんな風に考えられたら、生きていくのにもハリが出るかな。
    と、いろいろな岐路を見つめながら、考えています。

  • 誰かを何かを失った女性たちを描いた短編集。
    失って初めてそのかけがえのなさに気づいたり
    失いたくなくて縋っていたものが案外ちっぽけなものだったり。
    心残りや喪失感はそれぞれですが、彼女たちはみな少し強くなって
    そして少しやさしくなって前を向こうとしていtます。

    どの話も情景が目に浮かぶようで、詩的な情緒がありました。
    ツバキやバラの花、
    白神山地や四万十川の沈下橋、
    佐渡島のトキや長良川の花火。

    旅行にいきたいなーって気持ちになりますね。

  • いい短編集でした
    ほっこりも
    しんみりも
    しっとりも

  • どの話も良い!
    リーチ先生的な感想だが、マハの真骨頂は短篇にあると思う。
    「夜明まで」がリーチ先生につながっているのだろう。
    土地風土と心情の連動、どの編を読んでも旅に出たくなる。

  • key word 短編集 娘と母の物語 絵の話はないよ


    マハさんの絵画の話でない本もすごく面白くて、私はかなり好きです。この本も短編集で、読みやすい。
    表題作の「星がひとつ〜」は特に引き込まれて読みました。

  • 実際にある日本各地を舞台にした、
    一話完結の小説です。

    この中のある話が、
    とある事件を彷彿とさせて、
    素直に感情移入出来なかったのは少し残念です。

    しかしながら、全体的に良かったです。

    ちょっと重松清さんのような感じもあり。

    私個人としては、
    『椿姫』と『長良川』がぐっときました。

  • どれも心がほっこりする短編作品でした。
    優しい気持ちになれました。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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