星々たち

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536453

感想・レビュー・書評

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  • 北海道を舞台に、咲子、千春、やや子の3代に渡る女性の生き方を描く。
    どの女性も、下卑た言い方をすると「幸薄い」。それに輪をかけて、舞台となる「北海道」の北の果て感が寂寥感を増幅させる。
    夏休みに母親の咲子のところに遊びに来た千春を見送るとき、千春に「戻ってきてくれないの?」と問われたのに答えて、「あの家は3人で暮らすには狭い」と言うのを聞いて顔を輝かせるという記述があり、明るい未来が拓けるのかと、ふと胸をなでおろしたくなる。
    だが、そこが桜木紫乃。そうは話は進まない。
    紆余曲折ありながら、話は終盤へ向かう。
    交通事故で片足を失くした千春が、「母を頼ろうと思って」バスに乗る場面では胸を衝かれた。あんなに裏切られたのにね。

    9編の最後で、やや子の未来に明るさが差す。
    救われる。

    P28
    千春、女は笑いながら泣くんだよ。涙なんか流しちゃ三流だ。女は男のことで泣くのがいちばん格好わるいんだ。

    P40
    自分の居場所に納得が欲しいのは、お互いさまだ。

    P194
    自分は、文章は書けても小説は書けない。そんな事実を突きつけられるのも己の資質に五十まで気づかないのも、新鮮でかなしい体験だった。

    P219
    かかとの後ろには、常に道がないのがいい。

  • 18歳で妻子ある男の子供を産んだ未婚の母と、祖母に預けられて成長したその娘。
    二人の女の人生と、彼女等をとりまく人間模様を描いた連作短編集です。

    関わった人達についての方が多く書かれているにも関わらず、この母娘は強烈な印象を残しました。
    自分勝手で恋多き女。娘にしてみれば恨んで当然の母親だったが、そんな女に救われる男もいる。
    そして十分な愛情を受けずに育った娘。仕事を探し、夜の世界に身を落とし、居心地の良い場所を探し
    自己表現できるものを探し。さまよい続けるかのような生き様は読んでいて辛いものがあった。
    されるがまま全て受け入れている様に見えて、実はなんにも受け入れていないのだと思いました。
    彼女は満身創痍の身で何処へ行くのか…。交通事故のガラス片のエピソードがとても印象的。

  • 育子は自分が、死ぬまで一人で担ぎ続ける荷物を背負ったのだと気づいた。墓場まで持っていかなければならない荷物は、この先どんどん重みを増すのだろう。

    体は義務でしか、こころは体裁でしか動かなくなっていた

  • 母、娘、孫と女三代の生き様。
    娘、千春に焦点を当てた連作短編集なのだけれど、血は争えないというのはこういうことかと思ってしまうほど、母の咲子とは違い、未来に明るい兆しが見えたはずの千春も不幸せへの流れが止まらない。そのことを千春がどう受け止めているのか・・・
    特に抗う様子も感じられず、だけど時々悲しそうで、そんな千春の感情が読み取れなくてなんだか苦しくなった。
    せめて孫のやや子だけは不幸の波に飲み込まれずに生きてほしいと願った。

  • 咲子、千春、やや子の三世代、少し現実離れしてる設定な気もするが、いろんな年代を関わりある人たちを絡めて描いている。短編集をつなぎ合わせ大きなストーリーをなす。
    桜木さん作品はまだ3冊目だが、全体に漂うジメジメとした感じや地方の閉そく感が同じ。
    途中何だかどんよりとして来てしまい、このままどう終結するのだろうと感じたが、最終話でようやく光が射したようで全体の印象をガラリと変えた気がして、面白いと思えた。
    『星々たち』タイトルも装丁も小説の最後に出てくるものと同じで、読み終えてしばらく見入った。

  • 桜木紫乃シリーズ。
    『北海道を舞台とした人間交差点』のようなストーリー展開も相変わらず薄暗い雰囲気が漂う。
    今度は長編も読んでみたい。

  • 咲子も千春もやや子も、淡々としていてなんだか薄気味悪い人だな、という印象。それでも毎日が同じことの繰り返しでも、辛いことがあってもひたすら生きる人の姿は胸を打つものがあった。
    千春(と思われる)が最後に登場した案山子は、なぜそんな酷い目に合わせてしまったのか、そこまで千春を不幸にしたいか...と作者を少し恨ましく思ってしまった。

  • またカッコいい大人の男「ヤマさん」。映像にしたくなるでしょう。
    司書をする田上やや子とスナックで働く塚本千春の接点は、千春に触発されて書かれた小説「星々たち」。登場人物の交錯する視点。

  • この人の北海道のイメージが本当にジメジメしていて悪い。なんでこんなに暗いイメージで書くのかなぁ。親子揃ってダラしなくて、何を考えてるのかわからなくて。ただ流れに流されてふわふわして現実味がない感じだった。

  • 連作短編。
    実際には“愛情という呪いのような押しつけ”がないと自分を失ってしまう人が多いのだと思う。女性読者から評価が高いのは、登場人物たちが幸福に見えないからだと思ってしまった。
    しかし、こんなに淡々と生きていけるものかな。どこか心が麻痺してる気がする。
    だけど彼女たちは自分の意思で生きている感じがして、何となく憎らしく、とても切なくもなった。
    薄情と非情は違うのかなとも、ふと考えた。
    途中、何度か読むの止めようかと思ったけど、最後まで読んでみて良かった。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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