私の幽霊 ニーチェ女史の常識外事件簿

著者 :
  • 実業之日本社
3.21
  • (4)
  • (11)
  • (43)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 134
感想 : 39
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536972

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 切なさ×不思議全開ミステリー 6編の連作短編集

    ・私の幽霊
    ・きのう遊んだ子
    ・テンビンガミ
    ・無明浄土
    ・コロッケと人間豹
    ・紫陽花獣

    〝ニーチェ女史〟こと雑誌編集者・日枝真樹子。
    故郷に住む高校の同級生里見から「あなたの幽霊を見た」と連絡を受ける。
    帰郷して幽霊が出たという森の近くまで行くとそこには驚きの光景が…。
    何故私の幽霊が目の前にー?
    偶然出会った怪しき博物学者・梄大智と解き明かす超常現象の謎ー。

    ニーチェ女史と博物学者梄が常識を超えた事件の謎に挑む。
    古くからの言い伝え…現代にもあるの…?
    読みながらずっとそんな事を考えながら読んでいた。
    「テンビンガミ」…物と物を交換してくれる神。
    見えないものまで交換する。
    悲しみや不安はいつまでも心の中に重く沈み込んでなかなか流れ去ってはくれない。
    場合によっては、生涯続く事さえある。
    それに比べて喜びや幸福感は、儚いといってもいいくらいにすぐに心から消え去ってしまう。
    悲しみや不安は重く、喜びや幸せは軽い。
    もし、その二つの重さを取り換えることができたら…。
    どうなるのだろう…人間性が変わってしまうのか…でも魅力的…。

    どの都市伝説や怖い出来事も、人の哀しみが下敷きにあってどこか納得する。
    本当に不思議で切ない物悲しいお話ばかり。
    ニーチェ女史と梄のこれからの関係もとっても気になります。
    お馬鹿で可愛い人間豹のアコちゃんがとっても魅力的でした。

    人が知ってる事なんて、広い世界の中のほんのちょっとだけなんだよ。

  • 「私の幽霊」が一番印象に残った。不思議でなんとなくひんやりしたイメージをするお話。

  • ホラーというには怖くなく、でもファンタジーというほど甘くもなく。少し不思議な現象を扱った連作短編集。しんみりほっこり、そして少しおかしくもあって。こういう奇妙な出来事なら、実際にあってもいいのかも。
    お気に入りは「きのう遊んだ子」。一見不気味にも思えた怪異の優しさ。そしてラストのなんとも言えない切なさが印象的でした。現実が厳しいだけに、優しさ切なさがじんわりと深くしみいるような心地です。
    コミカルな「コロッケと人間豹」も好き。なんといっても「冥の水底」に登場したあの一族がまた登場するなんて! そして彼女のキャラクターがまた絶妙。人外の存在であっても、ぜひお友達になりたいです。

  • ★一番不思議だと感じるのは……誰かと出会ったことで、自分が思いがけない方向に変わっていくことね(p.290)

    【感想】
    ・ミステリかと思っていたらファンタジーというか不思議話やった。最初のなんか雰囲気は異なるけど『アタゴオル物語』に出てもおかしくなかったし、他にも宮澤賢治っぽかったり、妖怪譚っぽかったり。
    ・若干他愛なさも感じはしたけど悪い方向の他愛なさではなかった。
    ・ぼく的にはサクサク読めました。もし続編があったら読みたいかな。

    【一行目】
     その少女は、夕暮れの光の中にたっていたーーバス通りから見える丘の斜面に立って、身動き一つすることもなく。

    【内容】
    ・昔の友人からあなたの幽霊を見たという連絡があった。
    ・小学四年生の菜穂子は自分の記憶に欠落があることに気づく。
    ・行方不明の作家を探しに辺鄙な村に行く。
    ・自殺を許す宗教はあるやなしや。
    ・近所から児童虐待の音が聞こえてくる。そこにアコがやってきて。
    ・紫陽花は歩くか?

    ▼簡単なメモ

    【アコ】→曲地谷アコ(まがちや・あこ)
    【鬼懸ノ森】真樹子の行ったI県の高校に隣接している森。
    【君影草/きみかげそう】スズランにそっくりな植物。身を守るために空間擬態を行う。立体映像のようなもの。
    【君塚淳/きみづか・じゅん】真樹子の人生初の恋人。一年先輩。男子バスケットボール部員で生徒会役員でもあった。彼が自殺しそれ以来真樹子の胸には穴が開いたままだ。
    【小宮山】妙に四角くて段差のある家。父親が教育熱心すぎて虐待している音が周囲に聞こえてくる。
    【聡美/さとみ】旧姓小倉聡美。真樹子の幽霊を見た、高校時代の友人。好奇心旺盛でそのままいけば研究者にもなれたかもしれないが家庭に引っ込んだ。
    【須之内】真樹子の先輩。百八十五センチの巨漢でラグビー選手として鳴らしたらしい。
    【栖大智/すみか・だいち】上宮(じょうぐう)博物学研究所主任研究員。穏やかそうな人物。いろんな道具を詰めた革鞄を持ち歩いている。
    【菜穂子/なほこ】真樹子の別れた夫の兄嫁。優しい人で真樹子のことも可愛がってくれた。旧姓は時田。小学四年のとき
    【曲地谷アコ/まがちや・あこ】ケバいねーちゃん。栖が連れていた。けっこうとんでもない存在。
    【真樹子/まきこ】日枝真樹子(ひえ・まきこ)。アラフォーの編集者。結婚したことはあるが四年で破綻した。ニックネームは「ニーチェ」。高校時代はバスケットボール部。
    【美海/みう】怜奈の娘。小学五年。
    【三津岡サチ】『明日、風が帰るところ』の作家。
    【ミッコ】どうやら山っ子のようだ。
    【山っ子】A県にいるらしい。ときどき里に下りて子どもと遊ぶが相手の心に鍵をかけて思い出せないようにする。キツネが化けたとか妖怪とか言われている。
    【譲谷村/ゆずりたにむら】G県の辺鄙な村。人心は優しい。吉祥天を祀る年に一度の天府祭には人が大勢来る(といっても日に十数人だが)。
    【怜奈/れいな】真樹子の大学時代の友人。気に入らないことがあるとあっさり切り捨ててしまえるタイプ。娘は美海(みう)、夫はサーフィン好き。
    【私の幽霊】真樹子の幽霊。白いセーラー服で丘に身じろぎもせず立っている。

  • 「この世の中は今も未知の存在に満ちていて、人間の知っていることなんか、広い世界のほんの一部に過ぎない・・・」 
    常識外事件簿と題されていたので、犯罪事件の謎解き小説かと思いましたが違いました。 
    「怪奇大作戦」や「特命リサーチ200X」の系統といえば良いでしょうか。 
    この世界観を受け入れられれば、心地よい短編集です。 
    辛い記憶を封印してくれた山っ子を題材にした「きのう遊んだ子」が好きかな。
    結局、君塚くんの自死の理由はわからずじまいなんですね・・・ 

  • 6話からなる連作物語りである。

    主人公は、日枝真樹子。
    日枝神社のひえであるが、にちえからニーチェと呼ばれるようになった。

    ある日 故郷にいる高校時代の同級生からの電話で、貴女の幽霊を見た!と、聞き帰郷してみるのだが、、、、

    ミステリーでもなく、オカルト的でもなく、、、博物学者の栖大智と共に、常識外の摩訶不思議な出来事ヘ突入して行く。
    その上、最後の方は、曲地谷アコという不思議な女性?とも、、、事件(?)なるものを真樹子は、体験していく。

    超常現象の謎・・・
    はじめの方は、こんな事も・・・と、思いながらも読んで行ったが、摩訶不思議過ぎて、、、少しついていけない感じであった。
    でも、最後まで、読んでしまった!(笑)

  • 表紙のイメージと違った。サブタイトルのとおり常識外の出来事に遭遇する主人公。ホラーやファンタジーというよりは民俗学的な解釈。なかでもタイトルの「私の幽霊」の解釈が一番唖然とした。シリーズが続くなら読みたい。

  • 表紙の主人公(だよね?)40手前という設定の割に若すぎないか?
    まあそれより、この作者の「冥の水底」が本当に面白くて切なくて好きなので、マガチの設定がまた使われていて嬉しい。

  • 故郷に住む高校時代の同級生から「あなたの幽霊を見た」と告げられた“ニーチェ女史”こと日枝真樹子。帰郷して幽霊が出たという森の近くまで行くと、そこには驚きの光景が…。

    連作短編が6篇。前半の3篇は面白く、さすが朱川湊人という感じだった。でも後半の3篇は何だか少しついていけなくなった。通勤電車の暇つぶしには十分なったけれど。
    (B)

  • バツイチの日枝。ヒエダと読めずにニチエと言われたことからニーチェとも呼ばれる。
    そんなニーチェが若い頃の自分を見たのが表題作。その他、ニーチェの周辺に起きるちょっと不思議な事象の数々。
    ホラーというよりは、日本古来の身近な不可思議を感じる。

全39件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱川湊人の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×