拝啓 交換殺人の候

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408538099

作品紹介・あらすじ

どうせ死ぬなら殺してみませんか?

希望を喪った男の心を動かしたのは
殺人の依頼状だった──

二転三転する“完全犯罪”計画の結末は!?
胸を打つサスペンスミステリー!

パワハラのトラウマに苛まれる秀文は、
退職から半年が過ぎても社会復帰できずにいることに絶望を感じていた。
首を吊るために朽ち果てた神社の桜の木にのぼると、
白い封筒が大きな洞に差し込まれているのを見つける。
〈どうせ死ぬなら殺してみませんか?〉と書かれた手紙は交換殺人の依頼状だった。
手紙を置いたのは白いセーラー服と紺色のスカートを纏った少女だと判明するが……。
奇妙な往復書簡の先に待つ殺人計画の顚末は!?

感想・レビュー・書評

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  • 秋元秀文は3年間勤めた会社を牧村司のパワハラによって辞めました。
    秀文は「死にたい」と思い、首つり桜とよばれる自殺の名所へ行き、木のつけ根の大きな洞で白い封筒をみつけます。
    その中の手紙を開くとそれは、
    <どうせ死ぬなら殺してみませんか?>という交換殺人の誘いでした。
    秀文は誰がこの手紙を置いたのかと見張っていてセーラー服の少女が手紙を置くのを見て尾行します。

    しかし、セーラー服の少女の方が一枚上手でした。
    少女は本当は21歳の大学生で、水瀬詩音という名前でした。
    詩音の方も手紙の返事を受取り、詩音の交換殺人を止めようとする返事を置いて行ったノッポさん(秀文)を尾行して自宅を突き止めます。

    秀文と詩音は手紙の交換を繰り返し、手紙だけで心の交流をします。
    とうとう秀文が「交換殺人をやりましょう」と言い出し、詩音は、秀文の憎むべき相手牧村を殺そうとして、秀文自身が牧村になりすまし、自殺する手伝いをさせられそうになるのに気がつきます。
    詩音は秀文を自殺から救います。
    そこで秀文は言います。
    「僕が殺してあげるよ」
    誰を殺して欲しいのかそこで初めて秀文は詩音に問いますがその人物とは…。


    中編ミステリーですが、事情が二転三転してハラハラさせられるのはさすがです。
    最後まで、タイトル程インパクトのある場面はなく、和やかな心温まるミステリーでした。

  • パワハラで退職したが、半年過ぎてもトラウマに苛まれ再就職どころではなく絶望を感じて、自殺しようと桜の木に登る秀文。
    そこで見つけたのは大きな洞に差し込まれた封筒。
    それは交換殺人の依頼状であった。
    奇妙な往復書簡のやりとりの先には…。

    じっくりと読んでいくといくつかの伏線があるのに気づく。

    この書簡のやりとりというのもある意味、心を落ち着かせるのには効果があり、一旦落ち着こうとする時間もある。
    やりとりをするうちにじっくりと自分を見つめ直すことになり、結末も見えてくる。

    焦って早急に片づけることがない、という意味では殺人には不向きな行為であるのがわかる。
    性格まで変わるのか…というとそれは自分次第だと思うが。
    タイトルに殺人の文字が入っているが、これは読み手の解釈次第だろう。

  • どうせ死ぬなら殺してみませんか?
    この帯を見たときに思わず手に取ってしまいました。
    タイトルだけ見た時はミステリー要素が強い作品なのかなと思いつつ読んでいましたが、ミステリー要素もありつつ、人間の心情や、優しさに触れられる作品でした。
    誰かがそばにいてくれること、この本を読んで改めて身の周りの人に優しくしたいなと思いました。
    また、交換殺人をするためのルールが徹底していて、なるほど・・・なんて思ってしまうほどでした。
    手紙でのやり取りや主人公と少女が対峙する場面も思わず笑ってしまうようなほんわかするシーンもあります。
    自殺するはずだった主人公が少女と出会って少しずつ変わっていく様子に心が温まりました。

  • うん、うん。
    なんかあまり読んだことないパターンだったな。
    けっこう伏線が緻密で上手くて、分からなかった。
    交換殺人がテーマだけどお互いに動機としてはゆるい気はしてたんだよな〜。
    手紙のやりとりだから展開は遅かったけど、お互いの気持ちの変化は感じられた。
    でもー。最後の手紙の封筒の色が気になる〜。

  • ミステリーのつもりで手に取ったが、全然違った。このパターン本当に多すぎる…でもこのタイトルは絶対ミステリーだと思うだろう…
    パワハラで仕事をやめ、人生に絶望した男が、首吊りしようとした木の祠に手紙を見つける。それは「交換殺人」を持ちかける手紙だった。
    出だしはおもしろかったけれど、結局、主人公と手紙の主との交換日記形式で、人生のお悩み解決という感じ。
    手紙の主が交換殺人を持ちかけた理由も現実的でないし、パワハラをしてきた人も、見かけ倒しというか、尻すぼみというか…どうしても殺さなくてはならないというほどの凶悪さが後半は全くない。
    最後もよく分かりにくい…二人の交流は続くということ?前向きな感じなのはなんとなく伝わったが…二人の未来が明るければよいなとは思う。

  •  人生に躓き自殺を決意するほど追いつめられた男が、交換殺人を持ちかけられたのをきっかけにして生きる意欲を取り戻すまでを描いたサスペンスミステリー。6章からなる。
             ◇
     秋本秀文は真面目で細やかな気遣いのできる誠実な若者だが、底意地の悪い先輩社員に目をつけられ、しつこいパワハラを受け続けたことでメンタルを壊し退職に追い込まれてしまう。さらに、そのトラウマで再就職活動すらままならない状態に陥る。

     人生に絶望した秀文は、町外れの廃神社の木立で首を吊ろうとしたところ、木の枝の付け根に挟み置かれた手紙に気がつく。 
     そして封筒の宛名部分を見て驚く秀文。そこには、
    「どうせ死ぬなら殺してみませんか?」
    と書かれていた。中の手紙を読み秀文はさらに驚く。内容は交換殺人の依頼だったのである。

     半信半疑ながら、その内容と依頼主に興味を持った秀文が、依頼主が返事を取りに来るのを隠れて見ていたところ、現れたのはセーラー服を着た女子高生らしき女性だった。( 後に彼女の名は水瀬詩音であることが明かされる。)

         * * * * *

     交換殺人自体は昔からよくあるテーマです。また、主人公が真面目で小心な男であることも依頼主が若い女性であることも、特に珍しいわけでもありません。

     特筆すべきは、手紙の遣り取りによって物語を展開させていく手法でしょう。しかもその主題が交換殺人なのです。まだるっこしいし、リアリティを保つのが難しいはずなのに、ストーリーには間延びしたところがなく、リアリティについても不自然さを微塵も感じさせません。
     また、若い男女の文通なのに内容が交換殺人という殺伐な話題なのもおもしろい設定でした。

     さてストーリー展開ですが、これも実に凝っています。
     交換殺人は双方で合意し、最初に詩音が秀文のターゲットを始末しに出向くのが序盤のヤマなのですが……。
     完全に引っかかりました。愉快でもありました。
     中盤・終盤と万事この調子でストーリーを二転三転させていく、その構築力。素直に感心するばかりです。

     この作品のミソは、殺人を目論む2人が思いやりに溢れ人助けが大好きな “善人”であるというところ。だから、余計にハラハラしてしまう。出来のいいミステリーでした。

     結末にやや物足りなさが残るけれど、決しておもしろさを損なうものではありません。
     残酷なシーンが苦手なミステリーファンにはオススメです。


  • タイトル『交換殺人』から、
    どんな恨みつらみやドロドロした内容かと
    思いましが不器用な主人公たちの物語でした。

    ーーーーー
    人生に思い悩んで自殺を決意した秀文と詩音。

    全く接点のなかった二人の時間が、
    “自殺”という動機をきっかけに交差する。


    詩音の動機が意外で面食らいましたが、
    それ以上に秀夫の想像力と推測力が冴えていて
    想像していた人物像と違って驚きました。

    結末は好みが分かれると思いますが、
    個人的には少し曖昧な感じで、
    もやもやしたラストと感じました。

    上手くいかない理由や原因と向き合って、
    辛い気持ちを乗り越えて前向きになれる
    再生力を伝えてくれる物語だと思います。

    どんな些細なきっかけが気持ちに影響を
    及ぼすかわからない、出会いって未知です。

  • パワハラのトラウマに苛まれ、失業して再就職できずにいる秀文が、首を吊るために登った桜の木の上で見つけた、交換殺人の依頼状。それを読んだ秀文は回収しに来た相手を見て、説得を試みる。

    なんだかもやもやする終わり方だった。交換殺人の件がなければ現実的な話ではある。

  • 先日、天袮涼さんと貫井徳郎さんのトークショー&サイン会に行ってまいりました!そこでこの作品を購入し、丁寧なサインもいただきました(^^)表紙を捲ると、天袮さんの直筆で可愛いネコちゃんもいます。

    トークショーでも天袮さんが『たくさんの伏線』というお話されていたので、うふふふ、伏線チェックするような気持ちも持ちながら読んでいました。(天袮さん自らのネタバレもあったけど内緒(≧∀≦))

    とはいえ、この題材!交換殺人という形は昔からあれど、その提案部分から〜というシチュエーションが面白く、先が気になりあっという間に読んでしまいました。

    昔、2人ではなく、3人で交換殺人というお話読んだことあります。(夏樹静子さんだったかな?)
    トリックだけ聞くと単純そうだけど、実際にやるとなると、細か〜〜い打ち合わせが必要になるよね…と、今作を読みながら考えていました。人を1人消すというのは大変なことです。

    余談ですが、トークショーで、貫井さんが「天袮さんといえば“貧困”」と言い放ち笑いが起きましたが、私自身も今まで読んだ天袮さん作品は、貧困や生活困窮者のイメージが強かったです。今回はそういった感じよりは、全体的に明るいイメージです。

    でも、側から見るとドン底ではないと思えることでも、本人にとっては、非常に辛く苦しい、ということは誰にでもあり、今はなくても誰にでもありうること。そんな人たちの心に寄り添って解決策を探していくようなお話でした。読後感は爽やかです。

    まだ数作しか読んでいませんが、やっぱり天袮さん作品は良い意味で若さを感じます‼︎ トークショーの予約入れる時まで女性作家さんだと思っていました〜(^^;;

  • 自殺しようと思っていた男が死に場所として選んだ木で見つけた「交換殺人」を持ちかけた手紙。
    そこから始まる二人の手紙でのやりとり。
    典型的な、上司からのパワハラで退職、再就職もできず追い込まれていった男と、誰かにとある人を殺してほしいと思っている女子高生。
    それぞれの「殺したい人」の背景、殺す理由、方法、など、手紙をもとにやり取りされていくなかでひっくりかえる「事実」。一筋縄ではいかないわね、そりゃそうよね、と思いつつ、おお!?となってからの展開、最後どうなる?どうなる??
    「元サラリーマン」と「女子高生」の交換殺人事件。
    最終的な決着が見えるギリッギリまで楽しめる。天祢涼を堪能。

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著者プロフィール

1978年生まれ。メフィスト賞を受賞し、2010年『キョウカンカク』で講談社ノベルスからデビュー。近年は『希望が死んだ夜に』(文春文庫)、『あの子の殺人計画』(文藝春秋)と本格ミステリ的なトリックを駆使し社会的なテーマに取り組む作品を繰り出し、活躍の幅を広げている。

「2021年 『Ghost ぼくの初恋が消えるまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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