- Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
- / ISBN・EAN: 9784409030509
作品紹介・あらすじ
『エチカ』で知られるスピノザの内在の哲学、その起源には14世紀に始まった改宗ユダヤ人『マラーノ』の葛藤状況が存在していた!-異端審問時代のスペイン・ポルトガルに於て密かに育まれた内在の思想が彼の思索生活の中でどのように体系化されていったかを検証するとともに、その哲学がカント、ヘーゲル、ヘス、マルクス、ニーチェ、フロイトらに与えた多大な影響を考察する。
感想・レビュー・書評
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『スピノザ 異端の系譜』[評者]木田元(哲学者)
アルチュセールの弟子マシュレの『ヘーゲルかスピノザか』、ドゥルーズの二冊のスピノザ論。そのほかラカンもバルトもフーコーもデリダもレヴィナスも陰に陽にスピノザに言及する。さらにイタリアのネグリやアメリカのN・ブラウンの大胆なスピノザ論。たしかに今世紀後半、こんなに話題にされた古典哲学者はほかにいない。
話題にされ方も実に多彩である。その唯物論、自然主義、身体論、政治論、宗教論、バロック性と、みんながスピノザという鏡に自分の姿を映してみせているかのようだ。
本書の著者ヨベルはイスラエルを代表する哲学者だが、彼もまたスピノザに新しい光を当て、そのマラーノ性を浮かびあがらせる。「マラーノ(豚野郎)」とは、十五世紀スペインで強制的にカトリックに改宗させられた隠れユダヤ教徒に与えられた蔑称。それでも足りずに彼らはポルトガルへ、さらにはオランダへと追いはらわれた。
迫害を受けても「嗤ワズ、嘆カズ、呪ワズ、タダ理解セヨ」とつぶやくスピノザを、著者は「理性のマラーノ」と呼ぶ。その理性的な「内在の哲学」の形成に、幾代にもわたるマラーノの経験が生きていると見るのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示