戦争と平和 ある観察

著者 :
  • 人文書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409340493

作品紹介・あらすじ

今年は、戦後70年、神戸の震災から20年の節目の年となる。精神科医としてだけではなく文筆家としても著名な著者が、あの戦争についてどう考えどう過ごしてきたかを語る。

歴史学者の加藤陽子氏との対談では、戦争の記憶、昭和天皇のこと、日中関係など様々なことが語られる。

また、神戸の震災のときのことを振り返りつつ、東北の災害についても語る。神戸元町の老舗書店、元海文堂書店社長の島田誠氏と神戸の街と震災について語り合った対談も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 8月にはこういう本を読みたくなる。精神科医であり、翻訳家、小説家である中井氏の講演録や対談などが収められている。戦中戦後における、指導者が国民に対して要求する欠乏、忍耐、不平等、権利の停止などは、国民が受任すべきものとして正当化される。一方で、指導者の戦争責任は曖昧で、失敗が目に見えていても単純化される。災害時に見られる「生存者罪悪感」までもが利用される。「平和を欲するなら戦争に備えよ」というのはローマ帝国の箴言で理解できるものだが、備えの程度によることを忘れてはならない。

  • 100分de名著でご紹介。フェミニズムの回に出ておられた加藤先生との対談も!

  • 100分で名著で紹介されている本で、これで読んだのは2冊目である。精神科についての説明も少しはあるが実際は歴史と自分の関わりであった。加藤陽子との対話が興味深い。歴史は重くなりがちであるが、これであれば読みやすいと思われる。

  • 実際に自分は戦争というものをがどのように経験し、そこから何を感じたかという、ひどく個人的なことから戦争という事柄をとらえようとしている筆者のアプローチは新鮮である。
    後半の講演録や対談は、その場の雰囲気の影響が大きいであろうから、それを再現しようという場合には、編集に多少なりとも工夫を凝らさないと、何について話しているのかということが文字を読むだけでは伝わってこないもどかしさを感じる。

  • 過去に執筆したものを一部収録するほかは対談や語りおろしになっている。お年を召されたということだろう。それでも語りたいテーマは戦争と災害なのか。

    東北の震災の時にタクシーで家に戻ってひとりでテレビを見たと。

  • 中井久夫先生による戦争体験。戦争前後の社会を、病期になぞらえて説明しているのが面白い。御大は当時まだ小学生ですが、体験は強烈だったのでしょう。

  • 「戦争と平和」。嫌でもこのテーマについて考えなければならなかった一年だったように思う。
    精神分析・心理学者である中井久夫氏が、戦争について述べているこの本の内容は決して新しいものではない。著者がずっと以前に語ったものを編集している。

    にもかかわらず、その言葉はいま悩んでいる私たちにまっすぐ突き刺さる。一言一言にうなづき、また心に刻まなければ、と思わせる。

    戦争をしらない世代である私たちに、残された手がかりをこうして集めてくれたこの本に感謝したい。

  • 2015/10/17

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著者プロフィール

中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県生まれ。2022年逝去。京都大学法学部から医学部に編入後卒業。神戸大学名誉教授。甲南大学名誉教授。公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構顧問。著書に『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982)、『中井久夫著作集----精神医学の経験』(岩崎学術出版社、1984-1992)、『中井久夫コレクション』(筑摩書房、2009-2013)、『アリアドネからの糸』(みすず書房、1997)、『樹をみつめて』(みすず書房、2006)、『「昭和」を送る』(みすず書房、2013)など。訳詩集に『現代ギリシャ詩選』(みすず書房、1985)、『ヴァレリー、若きバルク/魅惑』(みすず書房、1995)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)、『中井久夫集 全11巻』(みすず書房、2017-19)

「2022年 『戦争と平和 ある観察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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