患者さんには絶対言えない 大学病院の掟 (青春新書INTELLIGENCE)

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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784413042284

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  • 白い巨塔、ブラックジャックによろしく
    そんな話が「ああ、実際にある話なんだな」とまた実感する。

    ■医局制度の廃止とそのデメリットについて
    医局廃止による医者の隔たり
    →若手へ選択の自由を与えたため、地域・診療科によって、
     隔たりが生じている。勤務のつらい小児科、産科より
     楽な皮膚科、眼科へ人気が高まる。

    ■医療報酬の問題
    どれぐらい検査をしたか、薬を処方したかによって報酬がきまる。
    →身体の小さい、検査の難しい小児科には報酬が少ない。

    「小児科は勝負が早い」
    →治るのも悪くなるのも早い。その上本人から話を聞けない。

    身体が小さいので注射・点滴するだけでも難しい。

    →高い緊張感と技術が求められる。

    ■7:1の弊害
    患者7:看護士1の体制を目指し、その体制が確保できれば
    報酬を増やしたので、一層の格差が広がり(人気が集中)、
    新人が大量に増え、医療事故増加につながった。

    ■医療業界の隠ぺい(非公表)体質
    厚労省へ報告される医療事故は10%未満
    その他「病院長へ報告する」で50%
    そもそも失敗を共有するという感覚が無い。
    なので対策が取れない。

    ペナルティーが殆ど無く、優遇されすぎ
    →事故が起きても実名で報道されることはない
     病院長が頭を下げて終わり。

    ■おかしな医師免許の仕組み
    ペーパーだけで実技はない。しかもその合格率の高さから難易度もさほどではない?
    1年のインターンを廃止したので、研修医も最初から
    医者として責任を問われる。

    ■適当な基準値
    年齢別の基準値がない。20歳も80歳も同じ。
    根拠も弱く、製薬業界などに有利な数値になっている。
    →メタボ、コレステロール、中性脂肪など

    ■院内感染(主にMRSA)について
    安すぎて使われなくなった?有効な消毒薬
    日本は土足で発生する埃に対する対策が甘い

    ■終末医療について
    中心静脈注射は打ち出の小槌+検査
    死亡時24時間以内に医者の診断を受けていないと不審死扱い?
    死亡診断書→死体検案書になる。明らかな場合は除く。
    延命治療を受けたい人は14%
    延命治療を受けた患者の死亡する前1ヶ月の医療費平均112万/人

    ■縦割り医療の怖さ
    乳がんの治療方法を例に施設によってどれだけ違う対応をとられるか。
    その原因は病院内の縦割り組織にあり、
    今まで外科だった治療法→放射線科にスムーズに移行しない。
    乳がんの場合では切除するという外科の領域から、
    放射線治療で温存する。というシフトがうまくいっていない。

    病院のチェックポイント
    1.受付に医者や看護師がいるか?
    2.喫煙コーナーは屋外
    3.放射線科がわかりやすい場所か?
    4.トイレが洋式か、手洗いはお湯が出るか?

    新聞や雑誌の名医→院長、教授クラス
    →いつも予約で一杯、2回目からは若手に回される
    そもそもポストと腕は関係ない(論文の本数で決まるから

    専門外来→医学の細分化、患者視点

  • 医療費がこの10年間で増大して、私が社会人になった頃には、たしか70歳以上は「老人医療」と言って、無料で医療が受けられるから保険もそのような設計になっていたと思います。

    それが、負担の大小はあるものの、基本的にはすべての人が医療費を負担するようになり、年金がもらえる年齢も先送りになって将来の不安があるのが現状です。一方、まだあまりお世話になったことがありませんが、大学病院の現状も大変なことになっているようです。

    この本で示されていますが、2003年からそれまであった「インターンシップ制度」が変更になった影響で、医師不足となっているようです。

    しかしその内容は、地方の勤務医がいない「地域格差」に根ざした医師不足である点、さらに、小児科や産科という「診療科目」における医師の偏在である(p16)を知りました。この本を読んで、自分や家族の健康を維持することの大切さを痛感したとともに、やはり医者には知り合い、友人がいたほうがいいのかなと改めて思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・1992年には3.38万人だった小児科が、1996年には1.37万人と、一気に59%も減少した、医者全体に占める小児科の割合も16→6%(p25)

    ・1990年には2459箇所あった産科・婦人科のあった病院は、2007年には1539箇所となった(p29)

    ・2003年の研修医制度を変えて、研修医が研修先の病院を自由に選べるようになった、それにより教授が支配する医局制度が残る大学病院よりも、自由に臨床研修ができる一般病院が選ばれるようになった(p32)

    ・2006年の診療報酬改定で、患者7人に対して看護師1人という割合を確保できた病院は、一律に入院費を増やした、そのため当該病院数は6→23%となったが、看護師が大病院で大量に採用されて、地域格差が一気に拡大した(p36)

    ・医師免許を持っている研修医が起こした医療ミスの責任は、指導医でなく研修医にある、インターン時代は医師免許を持っていないので指導医にあった(p73)

    ・メタボリックシンドロームなど主要な病気の診療指針の作成にかかわった276人の医師のうち、87%にあたる240人が、それぞれの病気の治療薬を製造販売する製薬企業から寄付金を受領していた(p79)

    ・日本のメタボリックシンドローム診断基準には、医学的な根拠がない、診療基準によれば、国民の30%が高血圧、22%が高脂血症、12%が糖尿病とその予備軍、男性の29%、女性の26%が肥満(p93)

    ・この30年間に、高コレステロール血症を診断するための正常値が、250未満から220未満に下げられたので、日本にはコレステロールの高い人が、2300万人となった(p95)

    ・アメリカではコレステロールの正常値を、年齢別に決めている、昔は日本も、年齢+100と言われていた(p96)

    ・メチシリン耐性黄色ブドウ(MRSA)による院内感染で死亡する患者が減ったのは、以前の院内感染の主役であった緑膿菌を叩く「第三世代セフェム系」と呼ばれ部抗生物質の乱用を控えたから(p105)

    ・MRSAによる院内感染に対して効果のあるピオクタニンを利用しなかった理由として考えられるのは、1)色がつくこと、2)あまりにも安いため(p120)

    ・自宅より病院で最期を迎える方が増えたかというと、日本の医師は死亡した患者を24時間以内に診察しないと、死亡診断書を書くことができない(p131)

    ・延命治療中止を希望する場合には、その意思を明文化しておく必要あり、日本尊厳死協会に登録した人が12万人を超えた(p150)

    ・乳房温存治療法の割合が90%を超えているのは、94%の石川県ふたば乳腺クリニックと、91%の埼玉県立がんセンターのみ(p154)

    ・乳房温存治療法を受けたいのならば、放射線科の医師か、乳房温存治療法を実施している病院を探すべきで、外科に行くべきでない(p165)

    ・結核の抗生物質ができて、それまでのスターであった胸部外科は脱落、消化器外科が胃潰瘍の手術のためにスターになった、最近「H2ブロッカー」という薬が開発されたので、その座も危うい(p167)

    ・脚気は東大帝国大学教授の緒方氏が脚気菌を発見したという論文は、ドイツで活躍していた北里氏によって完全に否定されたが、緒方らは帰国した北里を冷遇した、これを救ったのが福沢諭吉で、慶応大学に医学部を新設して、北里を初代医学部長にした(p199)

    ・日露戦争では陸軍では21万人を超える脚気が発生し、2.78万人が死亡した、日露戦争の戦死者が4.8万人であることを考慮しても多い割合(p201)

    2010/11/27作成

  • 1章日本一の医師不足は、なぜ都市部である「埼玉」なのか 2章「小学生でもしない事故」が止まらない穴だらけのシステム 3章データ無視の「基準値」でどんどん病人にされる日本人 4章一流の大学病院であいつぐ院内感染のあっと驚く背景 5章たった1カ月で112万円!ドル箱「延命治療」の裏側 6章最先端のはずがもっとも遅れている!?大学病院の治療の実態 7章病院のホンネがすぐわかる!「良い大学病院を選ぶポイント」

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著者プロフィール

中原 英臣(なかはら ひでおみ)
医学博士。西武学園医学技術専門学校東京校校長。
専門はウイルス学、遺伝学。雑誌評論の他、
『感染症パニック』など著書多数。

「2022年 『若者がセックスしない国、少子化日本の大罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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