SNSカウンセリング・ハンドブック

制作 : 杉原 保史  宮田 智基 
  • 誠信書房
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本棚登録 : 95
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784414416541

作品紹介・あらすじ

若年者の自殺予防・被害予防のため、気軽に相談できるツールであるSNSを用いた相談体制が、国レベルで整備されつつある。しかし、従来の対面型のカウンセリングとは性質が異なるため、カウンセラーでも戸惑う点が多く、良質のテキストが求められている。本書はLINEよるSNS相談実績のある執筆陣が、SNSカウンセリングに必要とされる知識・技法を端的に紹介したものである。今後ますます需要が増えるSNS相談員の研修に最適なテキストとなっている。

感想・レビュー・書評

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  • snsカウンセリングの基礎、具体例、カウンセリングに必要な知識が満載。これらを備えながら、携わることで高品質な支援が可能だと思う。

  • サプリのように自分の機嫌を取ってくれるアイテムとしてのオンラインカウンセリングで、できること・できないことを整理して復習する機会になった。

    サプリ志向、つまり, 現在 の 若者 にとって 音楽 は 自分 の 気分 を 調整 する ため の 身近 な ツール で あり, 音楽 性 を 楽しむ のとは 異なる 次元 で, 楽曲 が 断片的 に 消費 さ れる よう に なっ て いる という ので ある( 木島, 2016, p. 58)。


    遠隔心理支援
    テレサイコロジー
    匿名性と心理的安全性
    デジタルネイティブ
    非言語コミニュケーションなし
    自動思考を検討するための12の質問
    ①自動思考が,その通りであるとの事実や根拠(理由)は?
    ②自動思考に反する事実や根拠(理由)は?
    ③自動思考を信じることのメリットは?
    ④自動思考を信じることのデメリットは?
    ⑤最悪の場合,どんなことになる可能性があるか?
    ⑥奇跡が起きたら,どんなすばらしいことになるか?
    ⑦現実には,どんなことになりそうか?
    ⑧以前,似たような体験をした時,どんな対処をしたか?
    ⑨他の人なら,この状況に対してどんなことをするだろうか?
    ⑩この状況に対して,どんなことができそうか?
    ⑪もし(友人)だったら,何と言ってあげたいか?
    ⑫自分自身に対して,どんなことを言ってあげたいか?(伊藤,2006)
    最後に,SNSカウンセリングの効果についてのエビデンスに触れておきたい。これまでの研究は,遠隔心理支援には,対面の心理支援に劣らない効果があることを示してきた(Baraketal.,2008;Hiltyetal.,2013など)。ただし,一口に遠隔心理支援と言っても,用いられている遠隔コミュニケーション技術は,ウェブサイト,電子メール,電話,ビデオ通話などさまざまであり,面接の頻度や回数もさまざまである。SNSによるワンショットの心理支援を扱った研究は,非常に少ないのが実情である。ドーリングとリックウッド(Dowling&Rickwood,2013)は,テキストによる即時的なチャットによるカウンセリング(本書でSNSカウンセリングと呼んでいるもの)の効果を検証した,6つの研究をレビューしている。彼らによれば,研究の数は少ないものの,これまでなされてきた研究はいずれも,チャットによるカウンセリングの効果を肯定している。先にも触れたが,フッキンクとハーマン(Fukkink&Hermanns,2009a,2009b)は,本書で扱っているSNSカウンセリングとほぼ同じ,ワンショットのチャット相談の効果を,電話相談の効果と比較した。子どもたちを対象としたチャット相談と電話相談において,いずれの形態の相談でも,相談前よりも相談後のほうが相談者の気分はより良くなり,問題の深刻さが低下していた。これらの効果において,チャット相談と電話相談の間に違いは見出されなかった。ケスラーら(Kessleretal.,2009)は,ベック抑うつ尺度の得点が高い成人を,55分のチャットによる認知行動療法を5〜10回受ける介入群と,こうした働きかけを受けずに待機する待機群にランダムに割り当てた。4カ月後の時点で,抑うつ得点が10以下にまで低下したのは介入群の38%,待機群の24%であった。8カ月後のフォローアップ時点では,抑うつ得点が10以下であったのは介入群の42%,待機群の26%であった。このように,いずれの時点でも介入群のほうがより多くの割合でうつが改善しており,そこには統計的に有意な差が認められた。これらの結果は,チャットによる認知行動療法に効果があることを示唆するものである。以上のように,SNSカウンセリングの効果を検証したこれまでの研究は,おおむね肯定的な結果を報告している。しかし,残念ながら,その研究の数は非常に少ない。SNSカウンセリングが今後,社会に浸透していくことを考えれば,さらに多くの研究によって検証されることが必要である。

    つまり,現在の若者にとって音楽は自分の気分を調整するための身近なツールであり,音楽性を楽しむのとは異なる次元で,楽曲が断片的に消費されるようになっているというのである(木島,2016,p.58)。


    「焼き肉行きたい!」と言うよりも,友だちに配慮して,「なんかガッツリ系のものでもいいかも」という言い方を選択するような適応の仕方がある,とも言い換えられるだろう。このように,“あえて主体的に踏み込まない”選択をする若者世代では,はっきりと相手に本音を伝えること,生の感情を出すこと,関係や対象に深く関わろうとすることは,回避される傾向にある。

    SNSカウンセリングは,いじめ相談をLINEで受ける試みから始まりました。若者のコミュニケーション・ツールは電話からSNSに移行していますが,いじめ相談の窓口は電話が主流のままでした。このミスマッチ状況を改善すべく,2017年9月,長野県が行政で初めて,中高生を対象としたLINE相談を行いました。このLINE相談では,いじめに関する相談件数は,相談全体の8%でした。いじめ相談を主なターゲットとしながら,8%という数字は少ないとお感じになったかもしれません。しかし,私の印象はその反対でした。私は長年,中学校や高等学校でスクールカウンセラーをしてきましたが,いじめに関する相談は,きわめて少ないものでした。全国的な統計でも,スクールカウンセラーに寄せられる相談のうち,いじめに関する相談は1%程度にとどまっています(文部科学省「学校における教育相談に関する資料」2015年)。

  • どんどん新しくなっていくな

  • 借りたもの。
    SNSのLINEを使ってのカウンセリングのノウハウを詰めた一冊。先駆的な内容を、今現在、実践的なものに落とし込んでいるので☆5。
    同著者『SNSカウンセリング入門: LINEによるいじめ・自殺予防相談の実際』( https://booklog.jp/item/1/4762830216 )をより深めている。

    LINEでのカウンセリングの特筆すべき点は、文字情報として履歴が残ること。(良くも悪くも)
    具体的なやりとりの事例も紹介。
    読んでいて、臨場感があった。具体的にどの様な言葉をかけ、促してゆくか、どのワードに注目すべきか……
    検証の必要があるとは思うが、現状、十分なものだと思う。
    様々な問題に対応する自治体、行政の施設について、法律の知識まで。

    LINEでのカウンセリングの必要性、その急務性についてを説く。特に2017年の座間9遺体事件を受けて、青少年が犯罪に巻き込まれないようにするためにも……
    また、若者のコミュニケーションツールでSNSが主流となり、対面でコミュニケーションをするよりも敷居が低く身近であることを挙げている。
    この本の中心になっているのは、青少年が対象だが、大人にも必要だろう。DV問題、子育て支援……
    少しだけ言及されていたが、受験戦争期の親世代の教育熱心さが、子への精神的なダメージになる(実は親もそうだが)話に、色々と思うことがあった。

    心理士などカウンセリングに携わる人にとって、掲載されているノウハウ、スキルは定番のものだと思う。
    ツールが変化しても基本姿勢は変わらないのかもしれない。
    それとは別に、ネットやツールの知識(使い方、特性)が必要なのは言うまでもない。

    興味深かったのは、若者文化、その思考についての分析。たとえば、音楽を楽しむために聞くのではなく、己の心を管理する(気分をアゲるための曲、落ち着くためには別の曲)ために聞くという。

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