ゼロからの脚本術: 10人の映画監督・脚本家のプロット論

制作 : 泊 貴洋 
  • 誠文堂新光社
3.69
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本棚登録 : 186
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784416810538

作品紹介・あらすじ

原作モノに負けない"オリジナル"の作り方。

感想・レビュー・書評

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  • 内田けんじ
    シド・フィールドの3幕構成
    プロットポイント ミッドポイント プロットポイント2
    プロットポイント ああこの物語はそういう物語なんだなと分かるところ 覚悟を決める ET=ETを隠す、ダイ・ハード=テロリストを一人殺してマシンガンを手に入れる

    まずはキャラクターと親しくなる。キャラクターの日記を書き、動かす。例えば、逃げるようなヤツじゃないと思ったら、その前のシーンで出てきた小道具を使うとかつながってくる

    偶然の使い方
    大事なときの偶然は許してくれない。大事なとき、ケータイの電池切れちゃったではなく、前のシーンでケータイが吹っ飛ぶ映像を入れておけば、納得する

    何回も箱書きを繰り返すうちに美しい構成になることがある

    プロットができてくると必ずテーマが出てくる
    テーマが見えてくると、今度は余計なシーンやセリフが削れるようになってくる


    三木聡
    コントでは、3人のうち2人をどう配置するかによって価値観がガラっと変わる。1対1だと、どちらの価値観が正しいのか結論が出にくいから、話が転がりにくい。でも3人の中で関係性が変わると、価値観とともに話がゴロッと転がっていく

    ダメなコントって、ひどい目に遭うヤツが、最初からひどい目に遭う方に行っている。だから面白くない。よせばいいのにそっちに行くから、とのっぴきならない状況になるから面白い。
    例えばあるタクシーの運転手が、お客に「1時間で2万出す。飛ばして!」と言われる。運転手は息子を大学に行かせたいから、金が欲しい。それで飛ばしていくと、途中でお巡りさんに捕まって、どんどん悪い状況になっていく。そういう話も、息子のためにお金を稼ぎたいという気持ちが破綻に向かわせるわけです。本人の欲とか、情とか、見栄とか、そういうものによって人物が動いて、物語が転がる方が面白い

    オリジナルの企画を通すためには、まずタイトルで「何事?」と思わせることが大事。 ex. インスタント沼
    プロットもどこかで見たことがあるようなものだと企画を通すのは難しい。かといって、まったく新しいものって、人間はなかなか受け入れられない。だからそこに「このパターンは知っている」っていうものを入れておく。よく見るとメロドラマだけど、やり方が新しいからそうは見えない、そういうものが受け入れられる。だから、いわゆる「よくあるパターン」をどれくらい使うか。「擬似既視感」みたいなものは意識した方がいいかも知れない。パターンを蓄積するために、映画や漫画で「面白い!」と感じたものは、その構造を分析して覚えておくといい。「シェーン」で言うと「出会った人が去って、日常が戻ってくる話」それを僕なりに解釈すると「亀は意外に速く泳ぐ」になった


    福田雄一
    キャラクターを作るとき、その人のダメなところを探す
    一生懸命さがあれば愛されるキャラクターになる

    着想のタネは必ず2個ある。ひとつだとどうも物足りない。2つの要素がガチャン!と組み合わさったときにグワーっと話ができあがって行くことが多い
    男の勝手な思い込み×大洗の海での体験=大洗にも雪は降るなり
    時間で決まる能力×熱海殺人事件=33分探偵

    笑いを生み出すシステムを作る
    シティボーイズ ツッコミ=大竹まこと、ボケ=きたろう、大ボケ=斉木しげる

    笑いは記憶のゲーム。自分が見聞きした面白いことを、いかに記憶の引き出しに入れて、必要なときに引き出せるようにしておくか。そして引き出したものをそのまま使うわけにはいかないから、いかにアレンジして使うか、そういうゲームだと思う

    ドラマではあまりツッこんではいけない
    →ツッコミはお客さんの任せる

    「実はこうなんじゃないか?」「こうだったら面白い」と考える

    リアリティを広げるためのよい方法は、面白がるということ。世間的常識として悪である、ダメであるということをやってしまった人間や事件を「けしからん」というのではなく、見方を変えて面白がってみる。そして愛情を持って「何でこの人こんなことしちゃったんだろう」とか「何でそんなくだらないことに一生懸命手間暇割いたんだろう」とかそういうふうに考える。そうすると、ダメをやらかしてしまう人間を描こうとしたときに、そいつの面白みを追求していけると思う。それが、コツと言えばコツ

    「考える作業」をするためには、まずは一度、誰かに見せた方がいい


    筧昌也
    もしも◯◯だったら、に「しかも」をくっつけることで新しい切り口が生まれる 「さらに」を加えてしまうと客は引く
    余命モノ×サッカー中継=ロス:タイム:ライフ

    キャラクターは定番のイメージからズラしていく。ある程度記号的に分かりやすいところからスタートした方が、さらに次の段階に行ける可能性がある

    横浜聡子
    気になることをメモし続けていくと、自分が何に興味を持っているのかが分かってくる。そうして、シナリオのテーマや根幹となるアイデアが浮かび上がってくる。まずは心の声に耳を澄まして、自分の無意識に意識を向けることが大事


    高橋泉
    脚本で大事なのは「本当」と「嘘」のバランス。嘘ばっかりだと人を飽きさせないためだけの作品になりそうだし、本当ばっかりだと、見るに堪えない。その人の本当だけを差し出されても、それはそれで困っちゃう。だから「本当」を並べて、それを繋げるために、どれだけ「嘘」をうまくつくかという作業が必要

    登場人物が発する「熱」が大切。何のために、その人物は、エンディングに向かって生きているのか。そこでどんな熱をどう発しているのか。その「熱」を見たいということが「人間を見たい」ということに繋がっていて、それが「本当のこと」にも通じているのかなと思う

  • アダムとイブや、イザナギとイザナミに、子どもの作り方を聞かれたら、どちらを渡すだろう。
    死体を解剖に解剖して積み重ねてきた人体の設計がどのようにできているかがわかる解剖学の本と、AVと。

    この本を手に取るとき隣にあった本と見比べてすこし迷った。神話学をベースにした物語論と、このピンクの本と。少し考えたあと、なんとなくこちらに決めた。AVだった。実録素人物。や、プロか。

    一般的に物語論はおもしろい物語を解剖することで成り立っている。おもしろい話はこういう構造になっていることが多い、こういうキャラクターの登場が多い、こういうプロットの展開が多い、等々。
    でも、それはあくまでも、おもしろい物語がそうなっていることが多いというだけのことであって、その通りに書けばおもしろくなるというものじゃない。(内田けんじ)
    いくら死体を解剖して人体の構造を把握したところで子どもの作り方はわからない。それはべつの学問であり、営みであるのだから。

    そこでAV。生きた物語論。論といえるほどのものじゃない。いろんな人がどのように物語をつくるのかが語られるだけ。ワンアイデアを展開する人や、緻密に構成してから作る人、テーマを決めてから考える人や、すべてを決めた後にテーマがわかるという人。みんなそれぞればらばらである。でも現に彼らはそうやって物語を作っている。自分なりの方法で。そういった意味で、やっぱりこの本はAVなのである。10人の子作りの仕方を垣間見ることができる、ピンクな本。

  • みたことのある映画の脚本家監督の項は面白かったです!
    特に、園子温さんがの項が好きでした。
    実際にあった話しの部分が特に笑えたり!

    他にも今まで知らなかったけど、こんな風に考えて作ったんだなぁ。という思いからその方の映画がみたくなったり!
    今までは洋画ばかりみていましたが邦画もみたい!と思えるようになりました。

    映画好きの方にもおすすめです!

  • 大宮エリーさんの所を読みたくて借りた。

  • クリエイターの頭の中を覗き見。

  • たいへん面白く読んだ。

  • 初めて読んだ脚本術。
    ハウトゥー本ではなく10名の著名な監督・脚本家の
    脚本の書き方・意識していることをつらつらと書かれている本です。

    結論は、「こうしろ」っていうセオリーがないってこと。
    もちろん、基本的なことはあるだろうけど、
    あとはどれだけつくりたいっていうこだわりと根性があるか。

    そして、それをもとに、
    いかにチームでつくっていけるか。

    個人的には、まずは1ッ歩進んでいくしかないかなって思います。

  • 現代の脚本家たち10人の、物語を生み出す術。

    特に驚く様な事は書かれていないけれど
    普段中々触れる事のできない脚本家(又は映画監督)の
    インタビュー集というので、おもしろい。
    それぞれの発想がおもしろい。
    でも一番思うのは
    この人たちは決定的に人を惹き付ける能力に長けているって事。
    本人にとってのおもしろい事を
    おもしろがってくれる他人がいると言う事は
    何よりも心強く、発想の糧になる。

    おもしろいなあ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「人を惹き付ける能力に長けているって事」
      ちょっとした発想が、独り善がりに終わらない。きっと観察眼が鋭くて、物語を育てる根気があって、、、私...
      「人を惹き付ける能力に長けているって事」
      ちょっとした発想が、独り善がりに終わらない。きっと観察眼が鋭くて、物語を育てる根気があって、、、私も欲しいです。。。
      2012/05/18
  • これを読んだ後、三木聡のDVDを2本借りて観てみた。この発想がこうして1本の映画になったのかと、非常に感慨深いものがあった。面白い。この通りに書けるとは限らないが、ちょっとしたヒントにはなるかな。10人いれば10人それぞれやり方がちがうということ。

  • オリジナル脚本の映画を生み出している作り手10人へのインタビュー。とはいえ純粋に脚本家であるのは冒頭の古沢良太氏のみ。ほかの9人は監督。つまりいまの日本では、監督が脚本まで担当しないとオリジナルの企画は実現しないのか? ちょっとさみしくなる。
    内容で「役立つ」と感じたのは、古沢良太氏、内田けんじ氏。しかし、それ以外の方々の話も興味深い。映画づくりは生きざまなのだなぁ。
    本のつくりとしても、10人の並べ方は絶妙秀逸。この順番しかありえない。各人の実際のメモやノートの写真が掲載されているのもうれしい。みなさん、字が乱雑なこと…(笑)。アイデアが湧き出る勢い、アイデアを搾り出す苦渋悶絶、そんなものを垣間見た気分。
    そろそろ「リーディンググラス(=老眼鏡)」の助けが必要になりつつある身には、脚注文字やキャプションの白抜き文字が小さすぎて目につらかったなぁ。

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