- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784422112268
作品紹介・あらすじ
近年増加が指摘され、治療も困難とされる大人の発達障害に対して、どのような見立てを持ち、どのようにアプローチすればよいのか。描画や箱庭、夢分析を用いた数多くの心理療法の試みと、発達障害の背景にある社会・文化的要因の考察を通じて、従来の「主体」を前提とした心理療法モデルに代わる、「主体」の成立を図る新たなアプローチを提示する。さまざまな問題や症状に覆い隠された大人の発達障害の核心に迫る。
感想・レビュー・書評
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発達障害というと、何となく周囲とうまくやっていくのに困難を抱えている人、というイメージで、自分の周りにも人間関係がうまくない人は割といて、一方そんな人とうまくやれない自分の方が発達障害?みたいな感覚もあって、そういう私にとって非常に興味深く読むことができた。
大人の発達障害を取り扱った本書が、他の発達障害の本と大きく違うと思うのは、心理療法のアプローチを採っている点である。
一般に、発達障害の治療は、障害のある部分を技能訓練で補うか、困難による心理的ストレスを投薬で抑えるかが主流である。これは、発達障害が脳神経の機能的な障害であり、根本的な治療はできないという考え方である。
本書においても、そこに異を唱えるものではないが、近年の発達障害の増加の裏には、社会の変化に対する心の反応として発現している可能性もあるとしている。そして心理療法によって発達の段階を踏むことで問題解決を図った数多くのケースでは、クライエントとセラピストのリアルなやり取りが記される。発達障害者は自己の確立が弱いという仮説のもと、セラピストの支援のもと自分を他者と分離する体験によって、大きな変化が起きる。短い言葉ながらもセラピストの感動が伝わってくる。
そして後半以降、タブレットやソーシャルメディア、ぼっちなどの社会変化と発達障害についてのいくつかの論考は、感覚に整合するところも多く、発達障害は個人の疫学的な障害という考えでは不十分だと、著者の思惑どおり感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
様々な心理学的角度から、
見立てを検討しているところが実践的なのだが、
重要なことは、
何よりも我々専門家が、
いかに彼らの力になりうるのかについて、
懸命に考えられている点。
なかなかの良著。 -
ユングとか夢分析とかわからないので、なんでそんな解釈になるのかは謎だらけなのだけど、
事例は興味深かったし、解釈は参考になるところもありました。
定型発達をたどったかもしれないけど、環境因で発達障害圏に入ってしまったのかもというくだりは、なるほどなと納得でした。