問題社員の正しい辞めさせ方

著者 :
  • プチ・レトル
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434287275

作品紹介・あらすじ

労務トラブルにおいて最も深刻かつ件数も多い「退職」と「解雇」問題を、合法的かつ揉めることなく スムースに解決したいという底堅いニーズに応える本。 度重なる遅刻や欠勤、周囲と協調性がない、転勤拒否、職場外で事件を起こすなど、組織の秩序を乱したり、会社のブランドを毀損したりする問題社員は常に存在する。一方で労働者の権利意識が高まり、個別労働紛争が増加していく中、問題社員への初期対応を誤ったため、重大な法的トラブルに発展し、会社の存続が危うくなる事態さえ少なくない。 さらに昨今は、問題社員がユニオン(合同労働組合)と協働して膨大な損害賠償を請求してくるケースや、各種メディアやインターネットを活用した風評被害などのトラブルにも発展している。 本書では実際に発生したトラブル事例を用いて、労働問題を専門とする弁護士監修のもと、合法的な解雇手法とトラブル対処法、そして予防法を網羅的に詳解する。

感想・レビュー・書評

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  • 問題社員に穏便に辞めてもらう方法として退職勧奨があるようだ。トラブルを回避するためには、会社として就業規則を備え、社員への聞き取り、事実確認し、記録に残すといった周到な準備が求めれる。

  • 非常に勉強になった。解雇規制が厳しいからどうにもならないわけでは無く、問題社員とはいえ納得感ある形で周到な準備をもとに進めることが重要。就業規則の重大さも実感。

    以下メモ


    ◯法律の理解
    ・民法に期間の定めのない雇用契約はいつでも解約の申し入れをできる、とあるが、判例で解雇が無効とされた事例があり、各々のペースで判断された積み重ねが現行の労働契約法による解雇規定になっている。
    ・労働契約法16条、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用にたものとして、無効とする。

    ◯相手が問題社員でも不用意にクビにして会社が直面するリスク
    ・労基署の臨検、不当解雇では労基署は入れないのだが、労務管理や残業代の未払いなど、労基法の観点で違反があると危ない
    ・労働局から助言指導、話し合いで解決する場の設定
    ・法律専門家の介入、成功報酬型などで専門家を派遣してくるケースがある。ただ本訴は弁護士費用数十万円以上、一年以上の裁判期間がかかり、社員個人が手を出しにくい。そのため多いのが労働審判、裁判官が派遣され、双方の言い分を聞いての調停、和解による解決を目指すもの、その多くは解雇撤回し、合意退職として一定賃金を払う形になる。
    ・外部労働組合の介入、多くはまともだが、反社集団で大勢で威嚇してくるケースもある。
    ・解雇が合法となるケースは極めて狭く、解雇には大きなリスクがある。

    ◯退職勧奨
    ・追い出し部屋は目的や基準が不明確だと裁判で無効になるケースがあるが、適正に下された低評価をもとに行われると違法性がないとされるケースもある。
    ・太陽方式、いくらその存在が害悪でも、相手の改善と成長を信じて働きかけることが重要

    ◯試用期間でもクビにしやすいわけではない

    ★問題社員を辞めさせる手順

    ◯就業規則の整備
    ・欠勤や遅刻: 働かなかった時間分の給料を控除する権利が行使できるようになる
    ・問題行為に関する懲戒処分:
    ・休職に関するルール: 休職期間から退職になる規定があること
    ・退職: 民法では退職を申し出てから2週間で辞められるが、引き継ぎなく放置して辞めてもお咎めなしを防止できるか

    ◯コミュニケーション
    ・指摘の一貫性、上司による対応の違い、などは舐められるリスク
    ・普段から密なコミュニケーションを心がける、ミニマム月一で1on1

    ◯ヒアリングと対処
    ・いきなり本人を問いただすのではなく、問題行動の原因を周囲にヒアリングする。
    ・本人からのヒアリングは、言い分を受け入れるものでは無く、行動原理、思考パターンと行動パターンを把握するためのもの。
    1. 相手が落ち着くまで話をさせる。遮らない、疑わない、突っぱねない
    2. 傾聴しつつ事実確認をする
    3. 話を深め最終確認、聞いた内容を整理して確認する
    ・対処を伝える時に一般的な正解を出すのでは無く、ニュートラルに私個人の考えという立場に立ち伝えるべきことを明確に言う。もっともいけないのは、理不尽な要求を飲んでしまうこと。エスカレートすることになる。
    ・経過観察

    ◯書面による注意
    ・温情的な対応で改善のきっかけがつかめなかった問題社員に対して段階的に厳しい対応に移行していく。
    ・言った言わないのトラブルを回避するため、注意の際はその内容が記された書面を合わせて交付し、内容に齟齬がないことを確認してもらった証跡を残す

    ◯人事異動
    ・降格や減給を伴わないあくまで横移動が一般的。
    ・雇用維持のための努力をしたと判断される材料になる。
    ・降格は人事権の領域だが、減給は労働条件の変更であり別物、役職の引き下げは地位を特定して採用してなければ広く認められているが、後者は無効となるケースもある。これを有効にするには、降格と共に賃金も下がる場合があると就業規則と労働契約を整備する必要がある。

    ◯人事権の制限事項
    1. 業務上の必要性があること
    2. 労働者に不利益を負わせないこと、介護が必要なのに転勤命令をするなど
    3. 他の不当な動機や目的がないこと、嫌がらせや見せしめ目的など

    ◯懲戒処分
    ・注意や配置転換で改善しない場合は懲戒を検討する、問題社員の問題行動に公式に罰を与えることであり、労働者に不利益を与えるため慎重に行う必要がある。
    ・就業規則の懲戒事由に従うことが前提であり、記載のない事由で懲戒にすると無効と判断される
    ・1度の問題行動につき出せる懲戒は一度のみ

    ★退職勧奨
    ・業績態度が悪いから勧奨対象となっていることを告げ、今辞めるとどれだけメリットがあるかを伝え退職を促す。
    ・適正に下された低評価をもとに行われるため合法であり、進め方が問題視されたことはあっても、それ時代が違法とされたことはない。
    ・辞めたあと実は本心では合意してない!と訴えてくるケースもあるが、然るべき手順を踏んでいてその証拠があれば確固たる証拠となり防衛となる。

    ◯退職勧奨面談準備
    ・細かく情報収集
    家族構成、配偶者が働いているか、子供の有無と年齢、持ち家か賃貸か、住宅ローン残高、要介護者がいるか、これまでの人事評価
    ・関係者間で面談実施について共有し、事前に理解を求めておく
    ・退職パッケージの用意
    特別退職金や慰労金(勤務勤続年数×月給、最低半年保証など)、有給休暇買取、指定退職日から半年間は在籍扱いとされる権利、再就職支援サービスの紹介など。
    支援が多いほど労働者の自由意志に基づくと判断されやすい
    ・面談に第三者の異性を同席させ、疑似メモを取らせることでみっともない行動を抑制し余計なトラブルを防止する効果がある
    ・絶対にクビや解雇という言葉は使わない、あくまで本人の意思での退職を促す。社内でのポジションの喪失、社外でチャンスを探してみてはと促し多面的に刺激を与えて気づかせる。

    ◯面談
    ・多くの問題行動があり、再三にわたり指導して改善を求めたが改善されなかった、あなたと当社はあっていないのではないか、もっと合う会社を見つけた方が良いのではないか、残念だが退職を勧めるという形が自然。
    ・退職パッケージを提示し、自主退社に合意頂ければ本来懲戒解雇相当処分のところを自己都合退職として懲戒なし扱いとします
    ・回答期限を伝え検討を促す。本人を非難くることはせずあくまでもミスマッチであることを伝える。
    ・想定問答
    要するにクビ?、お任せする仕事がない
    他にもいるのでは?、これからそう言う方にはきちんと対応します
    なんでもやる、仕事がない
    訴える、会社としては労働基準監督署に相談の上合法的に進めてます。マスコミに持ち込まれても決定は変わらないことをご理解ください

  • たぶん、ちゃんとした法務部がない会社の社長とか経営者が読む本ですが、労働者視点で読んでみました。
    とりあえず、日本の法律のもとでは、社員が多少やらかしたくらいでは、簡単にはクビに出来ないってことです。時間をかけて、証拠を集めて、会社として十分に手を尽くし、いよいよどうしようもないとなったときにはじめて、退職を勧奨し、やめてもらう方向にいくのだとか。
    拙速にコトを進めると、解雇が無効になるだけでなく、逆に訴えられて、貴重な時間やお金を失うことにもなりかねないのだとか。労働組合やユニオンなどの労働者側が厚く守られる仕組みもあるので、解雇は難しいようです。
    北風と太陽よろしく、じわじわ嫌がらせして追い詰めてやめてもらうよう仕向けるよりも(昔パソナルームとかありましたね)、どういうことを求めてるのか、どうすれば会社が求める人材になれるかスキルアップ出来るか、前向きに考える方が生産的だよね、という感じかと。
    自分が所属するのは中小企業で、数十人いる部署内ですらよく知らない人も多いのですが、まあ自分よりやらかしている人はそこそこいるので、少なくともクビを言い渡されることはないかなと楽観的に考えていいのかなと思います。

  • 野党側としてはそうだよねえ、なんだけどね。働く側は、ユニオンをうまく使うべし、かな。

  • 期待していたほどのないようではなかった。

  • 兎にも角にも就業規則が大切ということが分かる。

    問題社員に出くわしたら、周りの方に話を聞き
    本人にも
    落ち着くまで話を聞きさせる。
    聴きながらも事実確認をする
    最終確認をする。
    が大切なのだと。

  • 内容はタイトルそのまま。ブラック企業アナリストという大層な肩書きの著者による解雇・退職のためのノウハウ本?管理職、経営者向けの本ではあるが、不当解雇に当たる内容も書いてあるので平社員から読んでも参考になるし、問題社員とはどのような人間であるかをある程度反面教師にすることもできる。ただ明らかに初学者向けの内容なので、労務関係の経験ある人には物足りないかも。
    就業規則の整備、解雇時の注意事項、退職勧奨までは予想通りだったけれど太陽方式は初耳だった。でも確かにこれは意外と効果あるのかもね。
    人を雇うって大変なことだよなぁ。

  • 「お前はクビだ!」と言って辞めさせられるのであればどんなに楽か、と思うこともあるが、現実はそうもいかない。現在の日本では解雇のハードルは極めて高い。外資などではよくリストラしているが、これとて強硬な解雇は行っておらず、退職勧奨をうまく行なっている。あまり無理に解雇を進めようとすると訴訟に加え、外部のユニオンなど、様々なトラブルを招きかねないことなど、辞めさせるための障害が一つ一つ解説されている。日頃から相談できる社労士がいれば読まなくてもよいレベルの内容ではある。

  • 自身の知らないことがたくさん書かれており、問題社員に関する対応の大変参考になった。


  • タイトルにある辞めさせるというのが退職推奨であるが、その際に押さえておくべき要素が判例とともに書かれていて分かりやすかった。

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著者プロフィール

新田 龍(にった・りょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役
早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業を複数渡り歩き、平社員、リーダー、事業部長、役員、経営者まで経験。その知見を基にした実践的な労働環境改善のコンサルティング、コミュニケーションやマネジメント研修を教育機関、民間企業、行政・自治体などで展開中。
ブラック企業社員時代、ビジネスパーソンの転職相談に乗るキャリアコンサルティングと人事採用業務に従事。「初対面の数分で相手から信頼され、本音をヒアリングする」というデリケートな業務を通じて、初対面コミュニケーションスキルに磨きをかけていく。これまで3万人を超える面接・面談経験を持ち、大手企業や自治体の面接官トレーナーも務めるほか、各種メディアでもコメンテーターとして活動。
『「初対面の3分」で誰とでも仲良くなれる本』(中経出版)、『伸びる社員とダメ社員の習慣』(明日香出版社)など著書多数。

「2018年 『コミュ障でも1分で「信頼できる人」と思わせる 自己紹介のトリセツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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