バルカンをフィールドワークする: ことばを訪ねて

著者 :
  • 大修館書店
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469212099

作品紹介・あらすじ

様々な言語・民族・宗教が渦巻き、ヨーロッパの火薬庫と呼ばれたバルカン-言語地理学を志した著者の初の海外調査先は、その中でも危うい平和と統一を保っていた旧ユーゴスラヴィアだった。暖かい人々と複雑な民族社会の中で言語調査に取り組んだ日々をユーモアと哀しみをこめて語る。言語学者のバルカン体験記。

感想・レビュー・書評

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  • 『アイヌ語〜』ほどの感動はなかったので星は2つにしたが、これも『アイヌ語〜』に負けず劣らず面白い本だった。バルカン、というのはあまり馴染みのない地域だが、本書では特にマケドニア語、セルビア・クロアチア語を扱っている。系統ではなくて地理的に近いバルカン地域に見られる共通の文法特徴、「人称代名詞の二重使用」や「後置冠詞」などが興味深い。また言語接触によって屈折語から孤立語になるという過程は英語とも共通しているため、個人的には面白かった。
     最後にはバルカン料理の章があり、レシピまでついていて、材料も珍しいものはあまりなく、頑張ればおれでも作れそう。ところで?本書の紹介では、「哀しみをこめて」とあるが、この地域は社会情勢が不安定であり、フィールドワークをすることで、そんな社会情勢に左右される人々を見る著者の目のことを指すのであろうか。とにかくフィールドワークというのはただ調査だけでなく、生身の人間としてその地域と関わっていく様子が、『アイヌ語〜』と併せてよく分かった。

  • ふむ

  • マケドニアについてのきちんとした本である。日本にはマケドニアを紹介した本がほとんど見当たらない。マケドニア語についての説明があるがそれほど専門的なものとしては説明していないので流して読める。
     フィールドワークとして役立つとすれば、相手と真剣に向き合って方言を調査する様子であろう。でも言語学の音韻調査が主体なのですこしは外れるのかもしれない。
     このシリーズで、アフリカとアイヌについてはよくわからないが、役立つのかもしれない。

  • セルボ・クロアチア語とマケドニア語を中心としたバルカン諸国滞在記。なかなか触れる機会のない国のことでとても楽しめた。

  • 久々に読んだ、言語学のエッセイ。読み心地は、赤裸々すぎない米原真理さんといったところ。きっとすごく努力して調査・習得したであろう2つの言葉(セルビア・クロアチア語、マケドニア語)過程が、面白おかしく書かれていて、久しぶりに「笑いながら一気によみました」状態に陥った。

    ユーゴ崩壊前・中・後の全てを間近で体験しているだけに、随所に登場する民族対立の影に関する描写が重く、暗い印象をこの本に付け足している。

  • 前から気になっていたこちらの本を読了。
    バルカン、主にマケドニアの地域ごとetc.の言葉の用法や形の違いについて、著者自身が実際にフィールドワークを行った記録。時期としては1970年代末~80年代というマケドニアがまだユーゴスラビアであった頃のお話が中心。直接的に学問的な話だけでなく、現地の人とのふれあいの中から文化や暮らしの様子などがありありと感じられて楽しかったです。

  • これもエッセイ。もっと言語学的な話が多かったら、南スラヴ語好きとしては納得の出来だっただけに残念だが、バルカンを知るための本としては良書だと思う。

  • 言語調査の困難と面白さとが伝わってくる。

  • 「魅せる人の極意」米原万里さん推奨

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著者プロフィール

【中島由美】東京大学大学院博士課程満期退学。言語学専攻。一橋大学名誉教授。 【野町素己】東京大学大学院博士課程修了・博士(文学)。 スラブ語学専攻。北海道大学教授。

「2019年 『ニューエクスプレスプラス セルビア語・クロアチア語《CD付》』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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