イスラームを読む:クルアーンと生きるムスリムたち

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  • 大修館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469213546

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  • イスラーム唯一の聖典クルアーンは、アラビア語が音声を重視する言語文化である事をよく表している。(日本語は文字なしには言語生活は成り立たず、漢字を知っていることが知識の基本である)人気の朗誦家が来る時モスクは人で溢れかえる。音声的な魅力は異なる文化の壁を越えやすいかもしれない。

    アルコールや星の名(デネブ等)はイスラム由来。

    無利子金融のイスラム銀行。全世界の総資産は二兆億ドル。

    断食月ラマダンは11日ずつずれるので、約33年で同じ季節に回帰する。暁前から日没まで水一滴も口にしてはならず、冬は楽だが夏はつらい。

    1924年にサウジアラビアがこの地方を支配するようになって以来、当初巡礼は収入源であった。石油発見後その収入を投入し年400万人の巡礼を運営するようになっている。聖地の管理はサウディ王国の威信に関わる優先事項である。各国の人口千人につき毎年1人巡礼と言う割り当てができた。

    イン・シャー・アッラー…もしアッラーがお望み(だった)なら。日々の行動は自分の意志と決断であるが、結果が生じると運命がどのようなものかはっきりと分かる。

    我(アッラー)は地上に代理人(人間)を置くであろう。神の主権=「神は唯一、人は平等」→人の主権(奴隷は可)

    楽園には川が流れる。(乳や美酒や蜜の川など。クルアーンでは飲酒は礼拝出来なくなるので禁止だが、楽園に酒の川があるのは面白い)ちなみに反対は火獄。

    夫婦は互いの衣。夫婦生活は望むままに(断食の日中は除く) 男女交際は結婚が前提。夫婦以外の行為は禁止。

    ハディース(預言者と弟子の会話集)に誰と最も親しくすべきかと問われ、1〜3位が母親、4位に父親と答えたとされる。

    アル=バダーワ…遊牧性。「遊牧」文化が色濃い乾燥地域のアラビア半島の中、商人「都市」マッカにイスラームは生まれた。マッカは水源が限られ農業に適さず商才が重要視されていた。マッカの支配者たちは部族的血統と、諸部族とが結びついた多神教を大事にしており、「人は平等、神は唯一」が教義のイスラームは迫害された。そのためマッカから「農業」地帯マディーナへ西暦622年に移住し、後にイスラーム歴元年と定められる。ちなみに西欧や中国では「都市、農耕、定住」を文明の特徴として、「遊牧性」を野蛮としている。

    イスラムは異性結婚を推奨するため、同性愛について反対の立場としているが、性同一障害に関しては身体と魂の実存を前提とするため、肉体と魂の性がずれることもあり得ると考え、実際モロッコでの性転換手術が日本で話題となったりした。 

    政教分離のフランスで2004年にいわゆるヒジャーブ禁止法が制定された。公共の場でこれみよがしに宗教シンボルを見せることを禁止したが、ユダヤ帽や十字架ネックレスはこれに当たらず、ヒジャーブが標的となった。移民への敵意がヒジャーブ女性にむけられることもあった。この背景から西洋の「肌を出す自由」より「肌を隠す自由」を守ることは、イスラーム女性が自分の性的魅力を発揮する意味を持つようになった。

    アジャル・ムサンマー…定めの刻。やがて来る死を自覚する事はイスラームの教えの根幹で、死は神に任せる事であり個人が思い悩むことでは無い。ただ「死」と「喪失の悲しみ」は別。(また医療が貧弱でな訳ではない。医者はステータスが高い)

  • イスラームの人々の考え方を、クルアーンなどから読み解いた一冊。著者の体験に基づく逸話を含め。大変わかりやすく説得力がある。結婚観や男女の考え方など、まるほどと思うことが多い。

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著者プロフィール

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授。専門は、イスラーム学、中東地域研究、比較政治学、国際関係学、比較文明学。
 1953年生まれ。北海道夕張市出身。1983年エジプト国立アズハル大学イスラーム学部卒業。1984年国際大学大学院国際関係学研究科助手、1985年国際大学中東研究所主任研究員・主幹、1990年英国ケンブリッジ大学中東研究センター客員研究員、1997年国際大学大学院国際関係学研究科教授などを経て、1998年から現職。2006年より同研究科附属イスラーム地域研究センター長併任。京都大学・法学博士。1986年流沙海西奨学会賞、1994年サントリー学芸賞、2002年毎日出版文化賞、2005年大同生命地域研究奨励賞を受賞。2005〜2011年日本学術会議会員。
 思想史においては7世紀から現代に至るアラビア語で書かれた史資料を用いた研究をおこない、現代に関してはアラブ諸国とアラブ域内政治を中心に中東を研究し、さらに近年は広域的なイスラーム世界論を展開してきた。また、日本からの発信として「イスラーム地域研究」を歴史研究・原典研究と現代的な地域研究を架橋する新領域として確立することをめざしている。
【主な著書】
『現代中東とイスラーム政治』(単著、昭和堂)、『イスラームとは何か─その宗教・社会・文化』(単著、講談社現代新書)、『ムハンマド─イスラームの源流をたずねて』(単著、山川出版社)、『「クルアーン」─語りかけるイスラーム』(単著、岩波書店)、『イスラーム帝国のジハード』(単著、講談社)、『現代イスラーム世界論』(単著、名古屋大学出版会)、『イスラームに何がおきているのか─現代世界とイスラーム復興』(編著、平凡社)、『現代イスラーム思想と政治運動』(共編著、東京大学出版会)、『イスラーム銀行─金融と国際経済』(共著、山川出版社)、『岩波イスラーム辞典』(共編、岩波書店)、『ワードマップ イスラーム─社会生活・思想・歴史』(共編、新曜社)、『京大式 アラビア語実践マニュアル』(共著、京都大学イスラーム地域研究センター)、Intellectuals in the Modern Islamic World: Transmission, Transformation, Communication(共編著、Routledge)、Al−Manar 1898−1935 (監修、京都大学COEプロジェクト、アラビア語『マナール』誌・CD−ROM復刻版)他。

「2011年 『イスラーム 文明と国家の形成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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