- Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
- / ISBN・EAN: 9784473016768
感想・レビュー・書評
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作品のチョイスが良い。ネフェルティティ胸像とかすごく良い。
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現在傑作とみなされている絵画作品に対して、なぜそれが注目されているのかを考察した本。
鑑賞する人々が作品にどのように惹かれていったのかが、主なテーマとして語られている。
作品の観察、歴史や経緯、作者のこと、ちょっとした関連情報など膨大な情報が、10ページ前後の短文に簡潔にまとめられており、とてもスリリングで飽きずに読みすすめることができました。
翻訳者の功績かもしれないけど、作品についていろんな切り口でわかりやすく語ってくれ、結論もシンプルで、話上手な人だなあと。
文章の端々に著者自身の考察がちりばめられていて、ねちねちと考えを深めていかないのが、読みやすくしている一因かも。
著者の絵画鑑賞についての基本的な考え方は本文よりかまえがきに書いてあるんですが、鑑賞者に想像させる余地があってこそ傑作は生まれる、ということを信じきって、からだの芯にどっかり座り込ませてる感じ。
似たような記述が本文中にも何回か出てくるし、章ごとの最終的な結論が著者の想像に寄ってまとめられることが多い。
自分もよくそのような鑑賞をするし、反対するわけではないんだけど、作者の存在をあまりに無視するのはどうかと疑問を持ちました。
著者のアメリア・アレナスさんは「ニューヨーク近代美術館で美術館教育プログラムの専門家として活躍」した経験の持ち主らしく、確かに制作者ではない鑑賞することの専門家が書いた文章だ、という感じがする。
自分は知らなかったんだけど、「対話型鑑賞」という「難しい美術史の知識や専門用語などとは一切関わりのない、鑑賞者の自由な印象を重視した鑑賞法」を提唱しているらしい。
インターネットで調べただけで詳しくはわからないんですが、この鑑賞法の考え方が本書にも通じているのかな、と思いました。
と、考察の仕方にうなずけない部分もありましたが、楽しく読める本でした。
美術鑑賞の教育についても一端を知ることができたし…っていうか鑑賞の仕方を教育するって、そういう世界があることを知ってちょっとびっくり。
自分が生徒だったら作品の鑑賞法を教わるなんて、大きなお世話だとはねのけるね。
その人自身の経験や美術作品を必要としているかどうかで、わかる作品はわかるし、わからない作品はわからない、というものなんじゃないのかなあ。 -
外国の方が書く本は、訳のせいかどうにも読みにくいことが多くて、敬遠しがちだったのですが、これはかなり面白く一気に読んでしまいました。
たぶんちょっと美術に興味ある方なら楽しく読めると思います。
なんでその絵が「傑作」とされているか、
そういう疑問をくすぐってくれます。
(2005/7/29 読了)