検証人体実験-731部隊・ナチ医学

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  • 第三文明社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784476032550

作品紹介・あらすじ

これが真実だ!日・独関係者の実名入り、20世紀の医学が経験した二大人体実験の本質に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 731部隊・ナチ医学の実態について再検証し単なる道徳欠如として批判するだけでなく構造的な問題なども含めて論じている。すべてを批判する議論もある一方で、731部隊の人体実験が戦後の医学に一定の学問的寄与をなしたとする議論もあり、今後どのような倫理があるべきかなどを模索しようとしている。負の遺産を将来に向けて繋げていく努力は重要としている。731部隊の実験や施設なども含めてそれなりに記載がある。
    そもそも医学は宗教に根源があり、医術と呪術は元来同根。
    ニュルンベルク医師裁判を経て人体実験のガイドラインの骨子が策定された。自発的選択や情報提供、事前の動物実験、不必要な肉体的精神的苦痛の回避、実験中止の自由などが挙げられる。
    遠藤周作の海と毒薬にもあるように、戦後731部隊の多くは大学などに復帰し、人命軽視と戦争医学の体質を学生に植え付けたことも指摘しており、ロボトミー事件などにつながっている。復帰者を実名で挙げており、人体実験の成果を論文投稿している。
    軍隊や学閥組織が過剰になると、人間本来の感情も抑圧されてロボットのように振る舞うことができ組織にとっては好都合になる。個人の私権や自由が保護されていることがこれを防ぐために重要である。
    断種法の問題として、民族浄化としてのホロコーストと、一見医学的に見える日本のハンセン病者の断種処置も、大和民族の浄化という思想と無関係ではない。

  •  ナチ医学の医療犯罪と同じく犠牲者数ではその倍以上と推定される日本のいわゆる731部隊の犯した同じく医学犯罪を基準に、安楽死、インフォームド・コンセントに基づかない、死と苦痛が殆ど前提とされている残虐な人体実験、断種などをいかなる医療倫理で過去と現在と未来を見据え論考していこうとする好著。私は著者の小俣和一郎氏の著書を既に2冊読んでおりその集大成の観がある。あらゆる倫理も過去の歴史的事象を抜きに定位する事はてきない―ナチ医学と731部隊の医学犯罪の参照点なき倫理はありえないとする著者の主張は私と同じ視点に立っており、我が意を得たり、とも思いを強くした。広く医療倫理、ナチ医学、731部隊を中心とする日本の組織的医学犯罪に興味のある方に推薦できる書籍です。

  • 参考文献。人体実験というものを主軸に、ナチ医学と731部隊を見つめる一冊。

  • 2011年6月28日

  • 歴史的にキチンと検証してある本かな?
    ただ、読んでいて気持ちの良い本ではない。

    多分戦争のせいではなく、戦争が後押しをしたのだと思われる。これは私が感じた事。
    731部隊については違う。731部隊は人体実験をしてた部隊ではない。

    医療には必要な 最終段階 である人体への影響。
    そして、多分、世界中でやっていた事。
    医学がそれだけ発達したってコトは、人体への影響もモチロン考慮しているわけで。

    731部隊のその後がそれぞれ載っているが、私的には やっぱり『?』が多い。
    免責されたとはいえ、それぞれのトップになったり招聘されていたり。
    しかも今の病院体勢の下地になったのが 軍隊 だったのには「?」しました。
    本当にそうなの??って。

    二度とこのような誤解が起こらないように…。

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著者プロフィール

元上野メンタル・クリニック院長、精神医学史家

「2022年 『精神分析とナチズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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