正義の教室 善く生きるための哲学入門

著者 :
  • ダイヤモンド社
4.34
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478102572

作品紹介・あらすじ

ソクラテス、プラトン、ベンサム、キルケゴール、ニーチェ、ロールズ、フーコーetc。人類誕生から続く「正義」を巡る論争の決着とは?私立高校の生徒会を舞台に、異なる「正義」を持つ3人の女子高生のかけ合いから、「正義」の正体があぶり出される。

感想・レビュー・書評

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  • 自由、平等(功利主義)、宗教の三つの価値観を主人公と3人の登場人物が議論を交わす形で話を展開していくので、わかりやすくてめちゃ面白い。

    功利主義には、幸福度を客観的に計算できるのかという問題、身体的な快楽が本当に幸福だと言えるのかという問題、強権的になりがちになるパターナリズムの問題がある。

    自由主義には、富の再分配の停止による格差の拡大や弱者が排除される問題、自己責任や個人主義の横行によるモラルの低下という問題、当人同士の合意による非道徳的行為の増加の問題がある。

    人類の歴史を遡れば道徳、つまり善や正義といった理想を持っている人間の方が悪人よりも大勢人間を殺している。 ニーチェは、神や善や道徳を普遍的なものではなく、支配者が人間に都合よく大人しくさせるための抑圧の道具に過ぎないと主張し、現実の存在に目を向けた生き方をせよと訴えた(実存主義)。これ以降の哲学史において、超越的な存在を肯定する哲学は全く出てこなくなった。

    ロールズは、無知のヴェールによる思考実験を行うことにより、差別をせず、自由を保障するという自由の原理と、社会的・経済的不平等が最も不遇な人にとって最大の利益になるような形で存在するのであれば認めるという格差原理の二つが、万人共通の正しさとして浮かび上がってくるだろうと結論付けた。

    構造主義は、人間は何らかの社会構造に支配されており、決して自由に物事を判断しているわけではないと考える。ミシェル・フーコーは「監獄の誕生」の中で、刑務所というシステムが歴史的にどのように誕生し、それが人間にどのような影響を与えたかについて分析し、刑務所は悪人の生活を監視して正常な人間に矯正する装置であると考えた。街を歩く人のほとんどがスマートフォンなどの情報機器を持っている現在は、監視カメラを持ち歩いて互いを監視しあっている状態と言える。

    内容的には学生向けなんだろうけど、今まで読んだ本のベスト10に入りそう。

  • 正義を平等・自由・宗教という3つの点からアプローチし、良い点と悪い点を分かりやすく解説してくれている本。哲学という答えがないものをテーマとしていますが、ストーリー仕立てになってるので内容が頭に入ってきやすいです。
    ラストシーンはなるほど、と思いましたが笑ってしまいました。笑撃のラストというやつです。

  • ばりおもろい。
    ばりわかりやすい。

    たくさん哲学書読んできたけど、なるほど!そういうことだったのか!と腑に落ちた。

    …でも、このオチは…笑

  • 間違いなく最高の良書

  • 3つの正義についてそれぞれの登場人物の主張、考え方が分かりやすく面白い。何より最後の展開はあまりにも衝撃かつ想定外で、この本が何を伝えたかったのかがよく分かった。自分の考え方を前向きにしてくれる一冊。

  • 功利主義 
    自由主義 
    直観主義

  • 難解な言葉があまり出てこないしわかりやすいし、とても読みやすかった。ストーリーとしても面白かった。課題のために読まないといけなかったから読んだが、本当に面白かったと思う。

  • 面白かった
    もう一度読みます…

  • 哲学と倫理の繋がりを知り、難しいのに面白い本だった。
    倫理は善く生きるための学問で、大きく「平等、自由、宗教」が根幹にある。
    平等は功利主義といい、最大多数の最大幸福を目指す。
    自由は自由主義といい、個人の自由を重んじる。
    宗教は直観主義といい、イデア、あるかないか分からないが信じるものがある。
    どれも欠点がある。
    功利主義は幸福を言及できないし測れないこと。
    自由主義は弱者が生まれること。
    直観主義は説明がつかないこと。
    そして生まれた構造主義。思考も事象も枠の中でしかないこと。
    刑務所の中では囚人は囚人らしく、看守は看守らしく演じるように、社会でも同じように社会の中のその特定の環境下の存在として振る舞う。
    そこから抜け出すことはできない。
    だから、それらを加味した上で自分の善を進めればいいのではないか?という結論。

    すごく分かった。し、それぞれに共感した。
    まず、善を3つにわけて、それらの主義、主張を知れたのが大きくて、それの反論も論理的で分かりやすかった。
    構造主義に対してと、ポスト構造主義に対しても説明があり、とてもとても分かりやすかった。
    あと、「原典をあたる」のを伝えていたのにも共感した。
    読みながら、自分は自由主義であり直観主義だと思ったけど、功利主義も構造主義も理解したつもりだった。それに自分がそこまで「主張していない存在かも」と思って、つまり「〜〜主義だ」って言わないことで、どっちつかずの自分だったと思った。そして、そこについて考えが及んでいないことも感じた。
    フーコーの研究についてを読んで、追究の目線と姿勢に感銘を受けた。
    どっちつかずの人間になってきているんかな?
    AIが発展したり、新たな生物と関わる瞬間に、決断が起こるだろうし、そのために今のうちに詰められるところは詰めとかないとと思う。
    それと思考するってやっぱり大事なことだと思った。
    考えないと言葉にならないし、言葉がないと主張できないし、主張できないと決まらないし、決まらないと進まない。
    一人でも考えることが増えて質が上がれば最善が尽くされるだろう。

  • オチはともかく、学生にも読んで欲しい一冊。
    オチをどう受け止めれるかで、再度自分の考え方が分かるかもwww

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著者プロフィール

東北大学大学院修了。会社経営者。哲学や科学などハードルの高いジャンルの知識を、楽しくわかりやすく解説したブログを立ち上げ人気となる。著書に『史上最強の哲学入門』『14歳からの哲学入門』などがある。

「2020年 『「最強!」のニーチェ入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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