絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478112724

作品紹介・あらすじ

火の発見とエネルギー革命、歴史を変えたビール・ワイン・蒸留酒、金・銀への欲望が世界をグローバル化した、石油に浮かぶ文明、ドラッグの魔力、化学兵器と核兵器・・・。

化学は人類を大きく動かしているーー。

人類の歴史は化学とともに発展してきた。「化学」は、地球や宇宙に存在する物質の性質を知るための学問であり、物質(モノ)同士の反応を研究する学問である。始まりは、人類史上最大の発明とも呼ばれる「火」(燃焼という化学反応)の利用である。人類は火を利用することで、土器やガラスを作り、鉱石から金属を取り出すようになり、生のままでは食べるのが困難だった動物や植物も捕食の対象に加えて、生存範囲を飛躍的に広げていった。

現代では、金属やセラミックス、ナイロンのような合成繊維から、ポリエチレンのようなプラスチック類、高性能な電池、創薬などの新しい物質や製品を生み出しているが、いずれも化学の成果に下支えされている。つまり、化学は、火、金属、アルコール、染料、薬、麻薬、石油、そして核物質と、ありとあらゆるものを私たちに与えた学問と言える。

本書は、化学が人類の歴史にどのように影響を与えてきたかを紹介する、白熱のサイエンスエンターテインメント!化学という学問の知的探求の営みを伝えると同時に、人間の夢や欲望を形にしてきた「化学」の実学として面白さを、著者の親切な文章と、図解、イラストも用いながら、やわらかく読者に届ける。

感想・レビュー・書評

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  • 化学の発展が人類の歴史にどんな影響を与えてきたかが簡潔に説明されている。
    似たような本に、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」があるが、こちらは多面的なアプローチが複雑すぎて下巻の途中でギブアップ状態だ。
    本書は、化学の成果と歴史の関係をかいつまんで紹介してくれているので理解しやすい。

    世界史の話も出てくるが、化学の説明が主なので科学が好きな人にとっては絶好の入門書だと思う。

    普段あまり気にしていないことを考えるきっかけにもなった。

    例えば、空気に関して、

    「密度が異なる酸素と窒素が、高度が違っても同じように混じり合うのはなぜか?」
    水と油だと混じり合わなくて、重い水が下で軽い油は上に分かれるではないか。

    「空気中の酸素は O でなく O₂、窒素も N でなく N₂ と原子でなく分子なのはなぜか?」

    そのようになっているらしいことは、どこかで学んで知っているが、なぜか?と聞かれると答えられない。

    最近の何百年でなく何千年も前から、いろんな人がいろんな事を解明して今がある。

    ガラスって凄いなと思った。
    ガラスは窓に使うにはもってこいなんですね。

    ・光を通す透明性があり、着色したり不透明にもできる。
    ・雨風(液体・気体)を通さない。
    ・酸に強く、溶けたり錆びたりしない。
    ・数百度まで耐熱性がある。
    ・電気を通さない。
    ・傷つきにくく割れにくいものもできている。
    ・任意の形に変形できる。

    ガラスがない時代の窓はどうなっていたのでしょう。
    広瀬すずのCMで素材を扱う会社をアピールしているAGCは、社名を旭硝子から変更した板ガラスのトップメーカーで、
    窓ガラスで随分と儲けたのでしょうね。
    今では、0.05ミリの超薄型ガラスまでできている。
    ガラスはビンやコップなどの食器、テレビやスマホの画面用の素材としても、なくてはならない存在だ。

    後半では合成染料の話が出てきたが、その発展形として染料から医薬品へという発想に感心した。
    染料によっては、ある組織や微生物は染まっても、別の組織や微生物は染まらなかった。
    ある染料は、ヒトの細胞にはつかずに、特定の細菌にはくっついた。
    もしこの染料が細菌には有害なものだとすると、患者の体を傷つけることなく侵入してきた細菌だけをやっつけることができる。
    「アスピリン」もドイツの染料メーカーが開発したものでした。
    医学や生物の本で、特定の細胞だけ緑に光る写真があったりするが、そういう染料を見つけて研究に用いているのですね。


    土器、石器、青銅器、鉄器、ガラス、セラミックス
    染料、合成染料、製薬、抗生物質
    麻薬・覚せい剤・煙草 
    セルロース、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、レーヨン、プラスチック、セルロイド
    ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン
    DDT、フロン、ニトログリセリン、ダイナマイト、サリン、原爆

    人類はいろんなものを作ってきて、それらが今の世の中に溢れている。
    悪意を持って作られたものは少なく、大部分が利便性を求めて開発されたものだ。

    だが、生活の質を向上させてきた画期的な物質が、深刻な環境破壊を引き起こしている。
    今は便利に使っているものが将来有害物質の烙印を押されるかも知れない。

    直接的には人体に無害であることは最優先だが、環境破壊を引き起こさないという長期的視点が大切だ。

  • タイトルだけで十分気になる気になる…
    が、左巻氏かぁ…
    ちょっと嫌な予感
    「大人のやりなおし中学化学」を以前読んだが、どうも相性の問題か面白く読めない
    (のっけから失礼なことをすみません)
    でも気になる誘惑に負けたので読みます!

    〜世界史(人類史)上、最初に人類が知った化学的現象は、おそらく「火」であった…
    前半は、古代ギリシアで自然科学や化学はどのように生まれたか
    また化学の基本的な考え方や原子論、元素、周期表なとがどのように生み出されたか
    後半は化学の成果がどのように私たちの歴史に影響を与えてきたか、その光と闇を含め、紹介される〜

    【備忘録】

    ■生きるために不可欠な物質「水」
    成人男子 体重の約60%
    成人女子 体重の約55%
    を占める(この差は筋肉組織量の差)
    ・必要な理由と役目
    ①溶媒作用…体の中の化学反応は、反応物質がすべて水に溶けた状態ではじめて進行する
    ②運搬作用…栄養分、ホルモンあるいは代謝老廃物などを溶かし、各臓器の間を血流に乗せて運搬する
    ③体温調節
    ④体液の酸・塩基平衡および浸透圧の調整…イオン性物質の溶解度を調節
    ⑤細胞の物質的状態の維持
    ⑥体液の流れの調節…粘性により、生体内の体液の流れを調節

    ■上下水道施設とコレラ
    古代ローマが大かがりな上水道を敷く
    しかしローマの衰退により中世末期まで上下水道は暗黒の時代へ
    貴婦人たちのスカートはどこでも用を足せるようにするための形(ひぇー)
    ハイヒールは汚物のぬかるみでドレスの裾を汚さないため(滑って転んだら…)
    マントは2階からしびんの中身が捨てられるのでそれをよけるため…(紳士も大変だ)
    風呂も洗濯もあまりしないため、香水が発達
    この不衛生さからコレラが発生
    それにより上下水道はが発達
    (これに比べると江戸はすごいなぁ 日本人で良かった)

    ■陶磁器の分類
    ①土器…比較的低温で焼成、多孔質で吸水性が大きい(植木鉢、旅館、屋根瓦、赤レンガなど)
    ②陶器…比較的高温で焼成、多孔質で吸水性が残り、叩くとやや鈍い濁った音がする(食器類、タイル、電気、流し台など)
    ③磁器…高温で焼成、吸水性がなく硬く強度も大きい、叩くと澄んだ音がする(食器類、花瓶、置物、医科学用器具など)

    ■マイセンの誕生
    ヨーロッパでは作り出せなかった硬質磁器(磁器は中国で発展)
    ドイツのザクセン選定侯アウグスト強王は錬金術師を幽閉し、「磁器製法を見つけないと命はない」と命じた(いつの時代もよく聞く話)
    カオリンという鉱物が地元でとれることがわかり、1710年にヨーロッパ初の硬質磁器窯「マイセン」が誕生

    ■ウェッジウッド
    イギリスの陶工の家に生まれたウェッジウッド少年
    探究心に富んだこの少年は化学的な陶器作りにチャレンジする
    上質で完全に再生産可能な陶器作りを完成させた
    そしてウェッジウッドの孫はあの進化論のダーウィン
    ダーウィンは生涯にわたって生活には不自由せず、研究生活に没頭できたらしい
    ある意味ウェッジウッドは科学の発展にも大いに貢献したと言える
    (ウェッジウッドじいじのおかげなのか!それにしてもすごい家系だなぁ)

    ■ドイツの染料メーカーから製薬会社が誕生
    ・1890年代後半、ドイツには数多くの染料メーカーがあり、競争も激しく市場も飽和しつつあった
    そのため合成染料から将来性のありそうな化学製品(薬)開発への転換を始める
    そこでアセチルサリチル酸をつくり、解熱鎮痛剤の「アスピリン」販売に成功する
    (この時代からこういう転機から新しいモノが誕生したのかぁ 逆境に打ち勝つエネルギーは素晴らしい)

    ■陸上の植物は名前がつけられているものだけで、25万種
    このうち私たちが食べても平気なものは数パーセント程度
    20種類に1種程度
    私たち祖先の試行錯誤のおかげ
    徐々に食べられる植物を見つけ、さらには薬草まで見つけた
    (有難い話である 好奇心と勇気に感謝)

    ■ノーベルさん
    アルフレッド・ノーベル氏の遺言により創設されたのがノーベル賞であるが…
    ノーベルはスウェーデンにニトログリセリンの工場を父と兄弟たちと作った
    しかし大変な爆発事故があり、労働者や兄弟を亡くす
    これを安全なものにするため、研究に打ち込み、ついには「ダイナマイト」を市場に出すことに
    そこから彼は巨万の富を稼ぎ、遺産をノーベル賞関連に分配するという遺言をのこす
    ノーベルは、自分の発明品が戦争に使われると言う負い目を持っていたのでノーベル平和賞などを遺言したと思っている人が多いことだろう
    しかし一瞬のうちにお互いが絶滅するような兵器を作ることができれば、恐怖のあまり戦争を起こそうと言う考えはなくなる…
    彼が生涯戦争を恨み平和を願ったのは嘘ではないだろう
    軍備を縮小するだけでは平和への効果は弱く、兵器の殺傷能力が高くなるほど平和になると考えていたようだ
    (自分の身内を亡くし、日々何が正しく何が世のため人のためになるか…果敢に化学と向き合った人物だ)


    他にも…
    ガラスはなぜ透明なのか、アルコール、米、各金属が生み出された経緯は、金及び銀が世界にもたらしたことは、染料と繊維の歴史、薬〜麻薬、石油から生み出された多くの物質…
    など、とにかく盛り沢山である

    一見化学が苦手な人には、世界の違う話かと思いがちであるが、実はとてもとても身近なものばかりで、先人たちの涙ぐましい努力により、生活が豊かになっていったことが歴史とともにわかる
    もちろん豊かさを手に入れた代償も描かれている
    夢のような物質はなく、そこには必ず代償が付きまとう
    何かが発明されれば、その犠牲もセットだ

    テーマ性は抜群で面白いまが、やはり読み物としてはもう一歩なんだよなぁ…(すみません 偉そうに…)
    惜しいなぁ…
    ぶつぶつ

  • 表紙に「面白い」と明記された入門書にはとことん裏切られてきたけど、『世界史は…』はさすが話題書になるだけの事はある。理系を克服したい人にあらゆる方面から手を差し伸べてくれるだろうと目次の時点で確信した。全っ然関係ないけど、イラストもゆるゆる可愛いし(動物さん方には萌えた!←言い方古い?)、もちろん理解を助ける役割も果たしてくれている。

    世界史というか人類史のスケールで、本当にあらゆる方面から歴史の中の化学を掘り起こしていくスタイル。悪く言えば統一感がないけど多方面に精通してはるってことかな。化学の割合がそんなに高くなくて助かったけど、そのぶん歴史の方に意識が向いてしまったのは先に言っておく笑

    (ここからは心に引っかかった章をちょこっとピックアップ↓)

    元素:周期表の誕生秘話(?)は気になった。元は原子量順に配置されていたのか。周期表から目の敵にしていたあの自分が、気づけば化学者らが元素を発見&表を埋めていくところを想像しちゃってた…何なんだこの心境の変化は笑

    エネルギー:前に読んだビル・ゲイツ氏の『地球の未来のために僕が決断したこと』にも繋がる環境面での問題が記載されており、歴史・プロセスと言わず今も連綿と続いていることなんだと再認識した。

    土器:マイセンとウェッジウッドを挙げてくれていてファンとしても嬉しかったしもっと話を聞きたいくらいだったけど、それは別の機会に取っておこう笑

    染料:マラリアの特効薬を開発中に、強力且つ世界初となる合成染料が出来上がったって話はまさに「失敗は成功の母」をよく表していると思った。

    世界史は数えきれない偶然や行き当たりばったりで出来ている。それらが幸福を、一方で発見してはいけないものまで検知して災厄を引き寄せてしまった。文章もイラストも、終盤にかけて不穏なものになっていく。
    もう一度化学を嫌悪することもできるけど、今も続いている世界史と密接に関わっている以上離れることができない。自分も世界も克服までには程遠いけど、来年もその先も目だけは逸らしちゃいけないな。



    2021年は人生の中で一番ぽっかりと時間が空いて、ブクログも再開できた年でした。今年ほど頻度は高くないかもしれませんが、引き続き作品との対話を続けていきたいです。来年もその先も、どうぞ宜しくお願い致します!

  • 頭の中を通過させ、知識をリフレッシュさせるような読書。データベースをインポートするような機能に近く、読書により、文字列の言語連関を強化、新規構築する。Chat GPTを育てる所作に近い。そして、その行為を楽しんでやっている。

    紀元前331年、エジプトを占領したアレクサンドロス大王がアレクサンドリアと言う世界最大の都市を建設。そこにプトレマイオス1世が設立したムセイオンと呼ばれた学問所では、地中海周辺諸国から多くの学者が集まった。付属の図書館にはギリシャローマ時代で最高の巻物やパピルスの形で保管された7点以上もの蔵書があった。

    そんな古くからの蔵書数にも驚愕だが、巨人の肩の上に立つような積み重ねの科学の発見の歴史を物語るようで、その偉大さを感じる。

    デモクリトスはギリシャ語の壊れないものアトムから、原子を名付けた。デモクリトスの原子論は、シンプルに言えば、万物は原子と真空からできている。その他には何もないと言うもの。そんな時代から、人間による自然世界の解明への努力が始まっている。徐々に科学は進化し、太陽系全体に存在する元素は質量が多い順に水素、ヘリウム、酸素、炭素、ネオン。地球全体で質量が多い元素は、鉄、酸素、ケイ素、マグネシウム、ニッケルの順序と、ぼんやりした原理の推測が時を経て、より解像度を上げていく。

    社会関係から文章、文章から文章、文章からイメージのデコード機能が人文系学問だとすれば、自然関係から記号、記号から記号、記号から現象への循環式を成立させるのが自然科学か。この双方を自らの論理に実装できるなら、世界の見方が変わりそうで、いつまでもワクワクできる。

  • 化学にも世界史にも疎いですが、馴染みたいと思って手に取りました。
    こういう本を読むのに必要であろうと思われる予備知識がほとんどなく知らないことだらけでしたが、それでも面白く読めました。
    P122からの「ジハイドロゲンモノオキサイドの使用を禁止せよ」という嘆願書のエピソードは特に面白く、ネタばらしには「おー!」と声が出ました。化学に疎い私でもです。
    ウェッジウッドとダーウィンの関係とか、染料から梅毒に有効な薬が作られたこと、そしてそれに日本人が関わっていたことなど、「へー」に満ち溢れた本でした。ちょっと気の抜ける感じの挿し絵もいいです。
    読み物として気軽に読んだほうが楽しめる本かな、という気がします。そんな気持ちで読んだ私にはとても合いました。

  • 化学という学問の進歩と、その成果が与えた影響の光と闇を、世界史に絡めて紹介していく本。

    特に印象に残ったのはカレーライスの話で、ジャガイモは(ヨーロッパに持ち込むことで)飢饉から人々を救い、米(稲)は農業の発展を促し、牛や豚は品種改良で人類に好ましい形質となった。どの材料も人の手が介入して作られており、科学と歴史に密接な関係にある料理なのだ。

  • #3257ー5ー80

  • 染料、麻薬、繊維、金属、石油製品、化学兵器など化学の成り立ちの本。書名から歴史との絡みを期待してしまうけれども、化学の力で歴史がどう動いたかという内容がメインではないです。
    『絶対に面白い化学入門』とサブタイトルにあるとおり、化学の入門としての知識が満載。知ってることも知らなかったことも楽しく読めました。

  • 勉強した歴史の背景には必ずと言っていいほど化学の発展が結びついていた。

  • 化学が社会に与えた影響を、ジャンル毎に化学的発見のストーリーなどを織り交ぜながら、ライトな感じでわかりやすく話が展開していて好印象。後半少しだれてしまったけど、イラスト含め、とてもわかりやすいので、中学生とかに読んでほしい。

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著者プロフィール

左巻健男
1949年生まれ。東京大学非常勤講師。元法政大学教授。『RikaTan(理科の探検)』誌編集長。
千葉大学教育学部理科専攻(物理化学研究室)を卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究
科理科教育専攻物理化学講座を修了。
専門は理科教育、科学コミュニケーション。
主な著書に、ベストセラー『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤ
モンド社)ほか、『学校に入り込むニセ科学』(平凡社)、『おもしろ理科授業の極意: 未知への探究で好奇心をかき立てる感動の理科授業』(東京書籍)、『面白くて眠れなくなる物理』(PHP研究所)、『中学生にもわかる化学史』(筑摩書房)などがある。

「2022年 『世界が驚く日本のすごい科学と技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

左巻健男の作品

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