訳者の方が「息もつかせぬ」という展開、作者もですが訳者の方の仕事も素晴らしい名著かと思います。
ドイツはソ連と戦争して欲しいと回りは思っていた、でも内部力学は逆である。ドイツがソ連を攻撃するとしたらヒトラー個人の心情からで、それを実行すれば力学との矛盾からナチスは崩壊する、というのは怖いほど当たっている気がします。スパイでも雇っていたのではないかっつー程です。チャーチルは、イギリス軍将校にこの書を配ったと言いますが、もしヒトラーがこの本を読んでいたら、全体主義の崩壊は遅れて今頃「暗黒の時代」だったかもしれないですね。
チャーチルは、うつ病や老齢と戦いながら、こんな素晴らしい知性が味方の陣にいて、さぞや大きな心の支えになったのではないかと勝手に想像してしまいます。
ですが読み終わった後に、この本で扱われている時代の70年も後の現代、この本に既に出てくる「エコノミックアニマル」の繁栄は「終わり」だった気がしません。全くもって今も続いているのではないでしょうか?
同時代の分析結果が余りに素晴らしく、内容が素晴らしいだけに、「終わった」後の次の「概念」が、恐らくこの70年で「成功」したのではないかと思われるのですが、何だったのか、作者の処女作がこれという事ですので、次回作以降に書いてあるはずで、非常に興味深いところです。
「経済的平等」という状況は、欧州の中だけでも、何という「人」が出てきても実現できる気がしないからです。
次作は、嬉しい事に既にわかっていて”「産業人」の未来”だそうで、早く読みたいと思います。