クラウゼヴィッツの戦略思考: 戦争論に学ぶリーダーシップと決断の本質

制作 : ティーハ フォン ギーツィー 
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478374023

作品紹介・あらすじ

経営戦略のエキスパートが、戦略論の古典『戦争論』のエッセンスを読みやすくまとめた本書は、日本の経営者、ビジネスマンの戦略的思考と行動を鍛える「戦略の哲学書」である。

感想・レビュー・書評

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  • ・弁証法で、ヘーゲルは意見の対立を一段高いところで目指していたが、クラウゼヴィッツは対立を解決しようとしない。彼にとっては、解決など問題ではなく、一つの現実をどのように見るかという互いに対立する見解が指揮官の頭の中でどのような議論を戦わせるかが問題だったからだ
    ・作戦行動には終わりがないことを前提にして考える癖をつけなければならない。勝利者になろうとして無制限に努力を積み重ねると、次のラウンドで負ける可能性が高くなる恐れがある。戦略においては、作戦行動の持続可能性を最重視する必要があるだろう
    ・普段の戦いに勝つための二つの特性。暗黒においても内なる光をともし続け、真実を追求する知性とそのかすかな光が照らすところに進もうとする勇気
    ・リスクは保険で回避できるが、不確実性は回避できない
    ・シナリオプランニングのポイント
     -採用される戦略が根本的に異なる将来像を何パターンか想定する
     -互いに排他的なシナリオにする
     -予兆を継続的にモニターし、随時見直す体制を整えておく
    ・戦略「戦争の目的を達成するための戦闘の使い方」、戦術「戦闘における武力の使い方」
    ・戦場では、こちらからは制御できない敵の意思や偶然、過ちといった不確実性に支配される。要するに戦略は常に現場とともにあり、修正が不要なことなど決してない
    ・防御が最もまばゆく光り輝く瞬間とは、防御が迅速かつ強力に攻撃に転じるとき、復讐の件をふるって立ち向かうときに他ならない。重要なのは、結び目をどのように作る(自軍の攻撃の手段を整える)かよりも、結び目をどのように解く(敵軍の攻撃の手段を弱体化する)かである。攻撃を常に奇襲と同一視し、防御は絶望と混乱に過ぎないと考えることはいずれも初歩的な誤りである。
    ・最高の戦略とは、非常に強い戦略を常に維持すること。部隊を常に一か所に集結させておくことほど高度で単純な戦略上の原則はない。
    ・強情さとは、知性がおかす過ちではない。強情さとは優れた決断に反対する態度である。
    ・疑わしいと思われるときには、「明確な理由がない限りこれまでの意見を堅持しそこから離れない」という原則
    ・我々が理論に何らかの貢献をしたとすれば、それは「何を」考えたかではなく、「どのように」考えたかという点にある
    ・すべての利害関係者間の利益をどうバランスさせるか。それこそが「ビジョン」であり、戦略を決める要となるものである。

  • 戦争論を経営に生かすにはどうするかという視点で書かれています。
    各編ごとに「日本のビジネスマンへの示唆」がまとめられていて有意義でした。

    よかったフレーズ
    ・戦略とは一言でいってしまえば、勝てる喧嘩しかしないということ。従って、どういう喧嘩なら勝てるのかを真剣に考えることが戦略策定の基本となる。自社の「強み」を探す作業である。
    ・最終的に戦略を決めるのは、どのような企業でありたいかという経営の意志(本来のビジョン)に他ならない。これがないと戦略は自己目的化し、株主の為に1円でも多くのキャッシュフローを創出するだけが企業の存在意義になりかねない。すべての利害関係者間の利益をどうバランスさせるか、それこそが「ビジョン」であり、戦略を決める要となるものである。

  • vol.102
    理論をうのみにするな!不確実性の中の「決断の本質」とは?
    http://www.shirayu.com/letter/2011/000201.html

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    『戦争論』とは激動の時代のための意思決定論であり、
    そのことが現代にも立派に通用する理由である。

    あまり知られていないことだが、『戦争論』は敗者から見た
    自己変革の書である。

    戦争と経営には、競合企業との意思の衝突や、
    組織の活用などの本質的な共通点があるからだ。

    クラウゼヴィッツは、武徳、勇敢、忍耐力、自制心などを特に重視する。
    そして、精神の働きを無視して、戦略を語ることなど不可能だという。

    指揮官の優れた才能こそ戦略の根幹をなす
    [more]

    重要なのは戦略とビジョンが本質的に相克関係にあるということだ。

    彼は単なる軍事理論家ではなく、実践経験の豊富な兵士でもあった。

    クラウゼヴィッツがカントの影響を受けたことは明らかだが、
    その論理展開は古代ギリシャの哲学者に近い。
    西洋で最も早くギリシャに誕生した教育機関には二つの過程しか
    なかったとされている。
    一つは、公の場で説得する技術を磨く修辞学(レトリック)。
    もう一つは、互いに対立する見解を持つ哲学者が高度な対話を
    行なうときに用いる論理展開の技法を学ぶ弁証法(ダイアレクティクス)だった。

    プラトンの時代からずっと、人類はリーダーに不可欠な
    資質が何かを考え続けてきた。

    不確実性を伴わない戦略など無意味である。

    革新者はルールを尊重するものの、内心では
    これを破ろうと考えている。

    第?部で紹介されている「摩擦」の概念は『戦争論』の
    中でも最も重要なアイデアの一つである。
    元ゼネラル・エレクトリックのCEOジャック・ウェルチも、
    『戦争論』を引きながら、「摩擦」に対する配慮がいかに
    戦略策定の過程で重要かを強調している。



    (第一篇第三章)
    つまり「眼力」とは、単なる物理的な視力だけではなく、
    知的な視力も指している。

    勇気と知力が互いに手を差し伸べ合わなければ、
    決断という第三の力は生まれない。

    真実だけで人を行動に駆り立てることはできない。(略)
    そして人を行動に駆り立てる最も大きな力は、常に
    感情から湧き出てくる。このような表現が許されるのであれば、
    人間を動かすもっとも大きな力は知性と感情の融合体から生まれる。

    (第三篇第一章)
    戦争指導には「個々の戦闘を計画し指揮すること」、
    そして戦争に勝利するために「戦闘を束ねること」という二つの
    まったく異なる側面が生じる。前者は「戦術」と呼ばれ、
    後者は「戦略」と呼ばれている。

    戦術とは「戦闘における武力の使い方」であり、
    戦略とは「戦争の目的を達成するための戦闘の使い方」
    であると分類したい。

    要するに、戦略は、常に現場とともにあるということを
    忘れてはならない。

    (第七篇第一章)
    二つの概念が新の論理的な対立関係にあるとき、つまり
    テーゼとアンチテーゼの関係にあるとき、両者は互いに
    補完しあい、片方はもう片方の存在を暗示している。

    (第三篇第二章)
    最高の戦略とは、非常に強い戦力を常に維持することである。
    まず全般的な優勢を確保し、次に決定的に重要な地点で
    優勢を得ることが肝要だ。

    (第三篇第一二章)
    戦術レベルでは次のようなことがいえる。もし最初の勝利だけで
    戦争全体の優劣を決めることができなければ、指揮官は必ず
    次の戦いのことを考えなければならない。

    (第八篇第八章)
    勝利を決めるのは特殊な、その場に居合わせた人で
    なければわからないような原因であることが多いものだ。

    小さなことは常に大きなことに依存している。
    重要でないことは重要なことに依存している。
    そして偶発的な要素は本質的な要素に依存している。

    (第三篇第四章)
    精神力のうち主なものを列挙するとすれば、
    「指揮官の才能」、「軍の武徳」、「軍の士気」の三点である。

    クラウゼヴィッツのクラウゼヴィッツ論
    われわれが理論に何らかの貢献をしたとすれば、それは
    「何を」考えたかではなく、「どのように」考えたかという点にある。

  • 解説本だが、あまり分かりやすくはなかったかな、、、BCGの皆さんが宣伝がてら各章ごとに担当割りして書いたのだから、やむなしか、、、

  • 150509 中央図書館
    コラムが、結構おもしろい。「『戦争論』における合理主義とロマン主義」(p103)など、一体、何の話か?と思うではないか。ここでは「戦争の三位一体構造説:暴力、偶然、政治の道具」という発想に、理屈重視と想像力重視という相反する要素を合成するクラウゼヴィッツの能力を感じ取れるとな。

  • 現実に理論を適応する場合の摩擦。「何を考えたか」ではなく、「どのように考えたか」の重要性。

    理論を当てはめるだけでは、不確実性の犇めく現代社会は生き抜けない。戦略的思考法を用いて、自分の頭で考えること。ただし、自分の頭で論理を積み上げていくのは時間が掛かることで、これを瞬間的に行うことができる人間がクラウゼヴィッツの指す「天才」。

  • すごい前に読んだ本ですが。
    クラウゼビッツといえば戦争論で知られる戦略家ですが、経営コンサルティング会社のBCGが解説ということで経営に参考にした場合が書かれていて参考になります。
    (よく名経営者が孫子やリデルハートと並んで読むべき本として書いてる場合もありますが、普通の人はこんなん読んでも日常的な仕事やビジネスに生かすのは大変ですからね。解説がいいですね。)

    まあ、こむずかしい。

  • ご存知戦争論、のBCGによる解釈本。
    なんだか絶版のようだが、再販の価値は十分にあるのでは。

    「迷っていることを十分意識した上で行動を決断するほうが、はるかに実りが大きいと断言する。単に振り払っただけの迷いは必ずまた頭をもたげてくるが、解決せずとも適切に扱った迷いは、思慮深い行動の土台となる可能性があるということだ。」

  • ○眼力
    ・軍事の天才とは、たったひとつの能力ではなく、「複数の精神的能力から成る調和の取れた統一体」といってもよい。そこでは、ある能力が抜きん出ることはあってもよいが、それが他の能力と衝突することがあってはならない。

    ・指揮官の意思決定を耐えず悩ますからである。つまり、精神は常に武装していなければならない。精神が予想外の事態を乗り越えてこの普段の戦いに勝つためには、二つの特性を必要とする。1つは、暗黒においても内なる光を灯し続け、真実を追求する知性(=眼力)であり、もう1つはそのかすかな光が照らすところに進もうとする勇気(=決断力)である。

    ・国内外の政治情勢には精通していかねればならない。

    ・本質だけを引き出す知的能力は、現場でそうした問題を分析して適切な判断を下したり、才能を働かせ熱心に取り組んでこそ得られる。

    ○天才に使える理論
    ・理論があれば、知性は実に多くの現象やその相互の関係についての洞察を得、自力でより高度な行動を起こそことができる。知性はそこで、何が真実で何が正しいかを把握する。

    ・理論の役目は、何も無い状態から始めて独力で道を切り拓いていかなくてもすむように、物事を秩序正しく整理し、説明すること。

    ○摩擦
    ・ネガティブケイパビリティとは、不確実さとか不可解さとか疑念の中にあっても、事実や理由を求めていらいらすることが少しもしなくて至れる状態。迷っていることを意識した上で行動を決断する。

    ○単純だが容易ではない
    ・戦術に携わるものは、疑念を捨ててひたすら前に進む。だが、戦略に携わるものの周囲では、比較的ゆっくりと時が流れるため、行動すべき時期を逸してしまうのである。

    ○戦略の要素
    ・単純さと複雑さ。前者には勇気があり後者には利口さがある。危険が満ちている状況では、利口さよりも勇気を重んじなければならない。

    ・複雑さの手前にある単純さなんてどうなったった惜しくはない。だが、複雑さの向こう側にある単純さなら、命をかけても惜しくはない。(=オッカムの剃刀)

    ○軍の武徳
    ・軍の武徳の源泉の1つは数多くの戦いを経験して勝利を重ねること。もう1つは活発に行動して何度も疲労困憊すること。どちらを欠いても武徳は存続できない。

    ○指揮官の精神力
    ・強情さとは、「知性が犯す過ち」ではない。優れた決断に反対する態度である。「感情が犯す過ち」なのだ。

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著者プロフィール

ボストンコンサルティンググループ

「2013年 『BCG流 プロフェッショナルの仕事力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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