地名の由来から知る日本の歴史

著者 :
  • ダイヤモンド社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478920398

感想・レビュー・書評

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  • 最近はやりの合成地名や、見栄えの良い漢字を使った薄っぺらい地名ではなく、その土地が持っている名前の意味を(それが自然を表すものだろうと、行政の都合を表すものだろうと、土地の所有者の名前がついたものであろうと)、伝えてきた地名は、単なる名称ではなく歴史なのだ。

    だが、その地名が本来の言葉から変化していくにつれて、漢字と読みがそぐわなくなったり、逆に音を残して漢字を当て直したり、意味が伝わらなくなってしまった地名など、実は語学的なアプローチも結構面白かったりする。

    青々と草が生い茂る原っぱを「草香(くさか)」と名づけるとする。
    草が茂るところは太陽の光が降り注ぐ場所なので、「日下(くさか)」と変っていくこともある。
    まるで判じ物のよう。

    神様の名前をもとにした地名は多いのに、仏様の名前をもとにした地名は少ない。
    それは、神様は氏神としてその土地の人びとを守ってくれるのに対して、広く衆生を救済する仏様は特定の土地とは結び付きにくいから。
    だからそれほど有力な仏ではないけれど、庶民に愛された観世音や地蔵にまつわる地名は比較的多いのだそうだ。

    その地名がついたとき、そこに住んでいた人たちが何を大切に思っていたのかがわかるのが、地名なんだなあ。

  • いろいろな言葉の意味や由来が気になる自分として、手にとらずにはいられない本でした。
    また、この著者の本をこれまでに何冊か読んでおり、どれもおもしろかったので、安心して読み始めました。

    まずは、日本の中心としての「江戸」。
    大きな川の出口を表す名称で、元は隅田川の河口周囲を指したそうです。
    水運都市・東京の名残が残る地名だと知りました。

    今や金融の中心街となっている「兜町」は、平将門の兜塚があるからだとか。
    てっきり武家屋敷か、兜職人が住んでいた辺りだと思っていたので、意外でした。

    「紀尾井町」が、紀伊徳川家+尾張徳川家+井伊家の大名屋敷があった場所だというのは聞きかじっていましたが、響きがおもしろいと思っていた「御徒町」は、将軍の警護を務める御徒士組の屋敷があった場所というのは初耳。

    「青山」は、家康に「馬で一回りした範囲をやる」と言われた幕臣、青山忠茂がもらった土地一帯を指すそうです。

    そう考えると、地名に歴史ありで、どのエピソードも興味深いものです。

    都内だけでなく、日本各地の地名がかなり詳細に説明されていました。
    戦国武将が関わって興味深かったのは、「北庄」と「岡山」。「北庄」で柴田勝家が自刃したことで、のちの城主松平忠昌が縁起を改めようと「福居」と改称し、それが簡単に「福井」に変わったと知りました。幸福に住める町という人々の願いが込められた地名でした。
    また「岡山」は、築城した豊臣秀吉が、備前の岡山と紛らわしいと「和歌山」に変名させたとのこと。
    かつて和歌山は岡山だったんですね。

    かつて農民は、非農業民(山の民、川の民、職人)を差別して自分たちと同じ阿弥陀仏信仰を認めなかったため、非農業民は太子信仰者となり、それが鎌倉時代に発展したという歴史も、この本で知りました。
    「梅田」とは、梅とは関係なく、田を埋めて町を作った埋田がその由来となっているそうです。

    地名だけでなく、さまざまな情報が豊富に織り込まれており、知的好奇心を十分に満足させられる一冊です。

  • 誤植が多い。

  • おもしろーーー。

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著者プロフィール

1950年、山口県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。同大大学院博士課程修了。文学博士。元明治学院大学教授。専攻は日本古代史、歴史哲学。比較文化的視点を用いた幅広い観点から日本の思想・文化の研究に取り組んでいる。著書に『律令太政官制の研究』『日本古代国家と律令制』(ともに吉川弘文館)など専門書のほか、『歴史書「古事記」全訳』『古事記・日本書紀を知る事典』(ともに東京堂出版)、『古事記と日本書紀 どうして違うのか』(河出書房新社)など多数。

「2022年 『古代史入門事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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