子どもの頃から哲学者 ~世界一おもしろい、哲学を使った「絶望からの脱出」!

著者 :
  • 大和書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479392712

感想・レビュー・書評

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  • 人は、その多様性・異質性のゆえに、だれかを排除したり争い合ったりしてしまうことがある。
    でもまた同時に、その多様性・異質性のゆえにこそ、お互いを必要とし認め合うことだってできるのだ。

  • 筆者の半生と、哲学者の考え方を関連付けながら書き上げた哲学の入門書。
    筆者も文中に書いているが、哲学書というのは小難しく書いてあることが多いが、それを身近な、それでいて説得力のある形で紹介されていて、今回のテーマの一つである「哲学は役に立つ」がスッと入ってくる。
    以下、心に残ったことを、記録のためにも抜粋して…

    ○哲学というのは、誰もがみんな「なるほど、その通りだ」ということを掲げる学問。
    ○カントによって、「絶対の真理なんて究極的には分からない。」という思考法が生まれた。それを求めて争うなんて、馬鹿みたいではないか。
    ○ヘーゲルの人間洞察、「承認」を求めて、あがく様子を克明に記した。「ストア学派、スケプシス主義、不幸な意識、心胸の法則、徳の騎士」
    「自分だけで自分の価値を守ろうとするのではなく、人を攻撃することで承認をしようとするのでもない。絶えず他者との間に「相互承認」を見出そうと努力すること。他者からも承認されて初めて、本当に価値あるものでありうるのだと自覚すること。自分の価値を主張し、しかもなお、それが相手からも承認されて初めてちゃんとした価値と言えるのだと自覚すること。その方法を考え、実践すること。」(本書116頁)
    ○デカルトによって、真理なんてどこにもないのかもしれない。が私自身(特に、精神。「心身二元論」)を疑うことはできない(我思う、ゆえに我あり)という思考法が生まれた。しかし、「私」とはなんなのか、という疑問は残ってしまった。その後、フッサールによって、精神だとか難しく考えるのではなく、「見えちゃってる、聞こえちゃってる」という「意識作用」は相対的にできないものだ、ということが考え出された。
    ○以上のことから、「そう思ってる」という「意識作用」は相対化できないものであるので、絶対的なもので争うのではなく、お互いの「意識作用」同士による「共通了解」が必要になった。深い相互理解ともいえるのかもしれない。
    ○ニーチェのルサンチマン。妬みやそねみのことで、どれほど人生をつまらないものにしてしまっているか。「ルサンチマンを食いちぎれ!そして人生を、もっと楽しめ!」
    ○ポストモダン思想により、中近代的な「絶対的な」ものを排して、「相対的」にしようとした。が、「人類愛」などはある種「絶対的の価値」のまま残してしまった。
    ○竹田青嗣によって、「欲望論」の哲学が提唱された。「僕たちは、世界をそのあるがままにおいては見ていない。そもそも世界のあるがまま(真理)なんて、僕たちには決して分からない。(ペットボトルの絶対的真理なんて存在しない。)僕たちは、世界をいつも、僕たち自身の欲望の色を帯びたものとして認識している。」(本書89頁)
    ○「欲望論」でいくと、夫婦の問題など、問題となることは、「信念対立」になっていることが多い。それをぶつけ合っても問題は解決しない。まず、「自分はどうしてそんな信念を持つようになったのか。」と言った「本質」(欲望)を考えてみると、「共通了解」を見いだせるかもしれない。

    ○キルケゴールは、絶望している時は、自分自身に絶望しているのだとといた。そして絶望している人には、可能性を提示する。
    ○ルソーは、「私たちの欲望と能力の間の不均衡のうちにこそ、私たちの不幸がある。」とといた。ということは、抜け出すためには3つだけ。「能力を上げる。欲望を下げる。欲望を変える。」(防衛機制の置き換え?)
    ○「哲学はいつでも必ず、まずは物事の「本質」を洞察することから考察を始める。逆に言えば、物事の「本質」をつかめなければ、どんなにあれこれ考えを巡らせたところで、言わば「下手の考え休むに似たり」で、思考はなかなか深まらないもの。(中略)あらゆる問題の、できるだけ誰もが納得できる「本質」を明らかにすることができたなら、その問題を力強く克服する「考え方」(原理)もまた、僕たちは見出していくことができる。」(本書169頁。論のもって行き方が見事すぎる…)

    ○勉強する過程で、自分の中の疑問が全部壊れてしまえば、好きな事を研究すればいい。あるいは、もしも同世代に歴史を動かせる人がいるのなら、その人を支えればいい。もしそれでもなお、自分の中に残ったものがあったとするなら、それが追究すべき事柄。大切に育てるべき残りカスでも、大きな価値のあるもの。(194頁を要約。)
    ○哲学の営みは、「個人の営み」でなく、「歴史の営み」かも。苦悩している人が多いからこそ、人が考えるきっかけになり、影響を与え合えることになるのだから。
    ○今は過去と違い、ほとんどの人が、自分の生き方や社会のあり方について、多かれ少なかれ考えている。どう解いて良いか分からずに、苦しんだりすることもある。そんな今だからこそ、哲学に価値があるのではないか。

    物凄い分量になってしまった。自分の中に残しておきたい。そう思える本だった。

  • 躁鬱のひとってそうじゃないひとには
    体験できないような世界で生きてらっしゃるんだな。
    誤解を恐れずに言えば、私も味わってみたい。
    生涯忘れられないような至福の瞬間を。。。

    どんな世界なんだろうな、躁のときって。
    スッゴイんだろうな?

    私にとって、これまででいちばんわかりやすい哲学書だった。
    多分10冊〜くらいしか読んでないけど、哲学書って。
    理解しやすい。
    教育関係の著作もおありだそうで、そっちも読んでみないと!
    この本のタイトルは伊達じゃない。

  • 著者の半生が面白くて、また表現も上手なのですらすら読めた。
    躁鬱の人の心情を知ることもできた。
    主要な哲学者の考えも分かりやすくまとめてくれている。
    しかし著者も指摘するように分かったつもりになってはいけない。哲学を学び続ける必要があると思った。
    印象に残ったのは以下。
    ・我々は世界のいっさいを自分の「欲望」に応じて見てしまっている(竹田青嗣の欲望論)。
    ・自分の価値を主張し、しかもなお、それが相手からも承認されて初めてちゃんとした価値と言えるのだと自覚すること(ヘーゲルの相互承認)。
    ・苦しみや絶望、不幸から抜け出すために、欲望と能力のギャップを次の方法で埋める。「能力を上げる」「欲望を下げる」「欲望を変える」(ルソー、苫野一徳)。

  • 著者以外の人がどうかはしらないけど、
    こういう人が哲学者になるんだなー
    ということがわかる。

    クレイジーな一冊だけど、なんだか読んでよかったと思わせる不思議な一冊。

  • 筆者の方の小さい頃からの壮絶な(?)半生と、哲学を学びだしてからそれをいかに打破したかについて書かれている本です。個々のエピソードのインパクトがすごいだけに、それを解決した哲学の力について説得力があります。各哲学者の主張の説明もものすごくわかりやすかったです。

  • 著者の自伝に紐付いた、哲学入門書。
    体験に基づいて、平易な言葉で話が進むので、エッセイっぽくカジュアルに哲学が知れる。

  • 現代社会には哲学が必要だと感じる著者が、哲学のハードルを下げるために、自叙伝的な内容でその効用を教えてくれる本でした。
    哲学の入門書としては少し物足りなさはありますが、生きづらさを感じてる人が手に取るにはちょうど良い軽さかと思います。

  • 哲学というのはとっつきずらく、本を読んでも「はぁ?」って終わってしまうパターンだったが、この本は著者の体験をもとに哲学が織り交ぜられて語られるのでとても身近・わかりやすく哲学を知ることができた。
    哲学アレルギーの人には良書

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著者プロフィール

哲学者・教育学者。1980年生まれ。熊本大学大学院教育学研究科准教授。博士(教育学)。早稲田大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程修了。専攻は哲学・教育学。経済産業省「産業構造審議会」委員、熊本市教育委員のほか、全国の多くの自治体・学校等のアドバイザーを歴任。著書に『学問としての教育学』(日本評論社)、『「自由」はいかに可能か』(NHK出版)、『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)、『勉強するのは何のため?』(日本評論社)、『はじめての哲学的思考』(ちくまプリマ―新書)、『「学校」をつくり直す』(河出新書)、『教育の力』(講談社現代新書)、『子どもの頃から哲学者』(大和書房)など多数。

「2022年 『子どもたちに民主主義を教えよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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