デモのメディア論: 社会運動社会のゆくえ (筑摩選書 57)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015624

作品紹介・あらすじ

二〇一一年、福島第一原子力発電所の事故以来、日本各地で反原発デモが続いている。社会運動の退潮が言われて久しいにもかかわらずデモは空前の盛り上がりを見せているが、これは日本だけの現象ではない。中東では「アラブの春」、アメリカでは「オキュパイ運動」と世界中で続々と新たなかたちの運動が展開されている。お祭りにも似たこれらのデモは、従来の市民運動とはどこが異なるのか。彼らは何を求め、なぜ集うのか。デモが今日の社会に伝えている真のメッセージとは何か。ソーシャルメディア時代の社会運動の意味とその可能性を徹底的に考える。渾身のデモ論。

感想・レビュー・書評

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  • ディヴィッド・メイヤーとシドニー・タロウはかつて「社会運動社会」という概念を提起した。デモという行為が散発的に行われる特異な行動ではなくなり、絶え間なく繰り返されるより一般的な行動、いわば日常茶飯事として人々の生活の中に組み込まれるようになった社会を意味するものだ。そこではこれまでになく多様な人々を担い手として、これまでになく多様な要求を掲げてさまざまなデモがひっきりなしに行われる。p18

    社会運動を通じて創り出される場を指して、かつてハキム・ベイは「一時的自律ゾーン(TAZ: Temporary Autonomous Zone)」という概念を提唱した。ベイによれば現代の社会運動は歴史を形づくるための場ではなく、むしろ歴史から逃れるための場である。そこでなされるのは持続的な制度改革を目論む「革命」ではなく、一時的な至高体験を目指す「反乱」だ。それは時間と空間の中の特定の領域を一時的に占拠し、そこでほんのつかの間、陽気なお祭り騒ぎを繰り広げたのち自ら姿を消し、消滅する。そして別の時間と空間の中のどこか別の場所に再び立ち現れ、決起する。そうしたゲリラ戦の広がりとして展開されるのが現代の社会運動であるとするのがベイの考え方だ。p69

    《第3章 ソーシャルメディア革命の深層》p79〜

    【デモにおけるソーシャルメディア使用3つの局面】p83
    ①計画局面:運動の内部で、デモの主催者がその計画を立案する局面である。そのアウトプットとしてデモの仕様が決定され、デモが存在することになる。
    ②動員局面:運動の内部で、デモの主催者がその参加者にデモに参加するよう呼びかける局面である。あるいは参加者どうしが呼びかけ合う局面である。そのアウトプットとしてのデモの場に参加者が動員され、デモが成立することになる。
    ③発信局面:運動の内部から外部へと、デモの主催者または参加者が運動の経緯や状況を発信する局面である。そのアウトプットとしてデモの存在意義が社会全体に向けて伝えられるとともにその成果が示され、デモが肯定されることになる。

    【ツイッター革命の背後に―モルドヴァ・イラン・2009】p87

    【元祖ソーシャルメディア革命?―ベラルーシ・2006】p95

    「新しい社会運動」とは「市民運動」である。その「市民運動」とは、市民という主体が国家と産業との複合体という敵手に対して、「システムによる生活世界の植民地化」という係争課題をめぐって異議を申し立てるものであると定義される。そこでなされる示威行為としての抗議行動がすなわち「市民運動型のデモ」であると言えるだろう。p141

    「社会を創り出す運動」としてのお祭りデモや占拠デモの在り方は、現代の社会運動の持つこうした性格、メルッチの言葉を借りれば「メッセージとしての運動」というその性格を如実に表していると言えるだろう。p218

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著者プロフィール

1961年生まれ。成蹊大学文学部教授。専攻はメディア論。著書に『デモのメディア論――社会運動社会のゆくえ』(筑摩書房)、『フラッシュモブズ――儀礼と運動の交わるところ』(NTT出版)、共著に『奇妙なナショナリズムの時代――排外主義に抗して』(岩波書店)、『ネットが生んだ文化――誰もが表現者の時代』(KADOKAWA)、共訳書にキャロリン・マーヴィン『古いメディアが新しかった時――19世紀末社会と電気テクノロジー』(新曜社)など。

「2019年 『ネット右派の歴史社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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