別世界通信 (ちくま文庫 あ 11-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480021809

感想・レビュー・書評

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  • 主に19世紀以降のヨーロッパにおける幻想小説を紹介するとともに、それらの作品を生んだ想像力についての著者自身の考察が展開されているエッセイがまとめられています。なお巻末には、幻想小説のブック・リストがあります。

    本書の「序」において著者は、「月が人びとの想像力を掻きたてなくなってから、もうどれほどの歳月が流れただろう?」と読者に問いかけます。そして、「月を取りもどそうとした文学と科学に関する小さなカタログ」として、本書における幻想文学の紹介が開始されます。

    著者は、幻想文学を立ちあげる想像力の働きを「準世界創造」と呼び、その諸形態について考察をおこないます。かつては、神話や伝説へと結晶化した、こうした想像力の働きは、科学的な知見をも取り込むことで、いっそう奔放な文学的創造を果たすことになりました。そうした想像力の飛翔は、一見したところ現実からの逃避のように見えるかもしれませんが、むしろそれは著者が「世界意識拡大」と呼んでいるように、現実を延長・拡張する意義をもっていたと論じられます。こうして著者は、幻想小説における異端性をことさらに強調するのではなく、「幻想文学もまた世界創造の秘密を解きあかすヴィジョンとして、自然科学と同じ積極的な「現世」の役割を担ったとしても不思議はない」と主張しています。

  • 1 序
    2 索引と暗号
    3 現代―ファンタジーの復活
    4 飛翔の方法
    5 神話の森を超えて
    6 年代記の発見
    7 ロマンスの発見
    8 夢を開く鏡
    9 世界言語とユートピア
    10 ユートピアの経済学
    11 怪物の博物誌
    12 来るべき宇宙誌
    13 終末の儀式
    あとがき
    文庫版あとがき
    書棚の片すみに捧げる180冊+2

  • まだこの本刊行当時は オラフ・ステープルトンなんてこれで紹介される奴はあまり出てなかったし、『指輪』関係もまぁマイナーと言ってよかったし はー。
     魔界としてのロンドンとパリは、こっちの方が面白い。

  • 「帝都物語」絡みで一応読んどくかということで手を出したけど失敗。

    現実世界に対する"outerspace"や"otherside"の意味の「別世界」について、月、宇宙から始まり、時間や異形についての趣味がたり。

    読み始めてまず引っかかると思うのが、名詞での語り。「パルケルススくらい知ってるよね」という前提に、「〇〇の言うところのXXである」という書き方をされると、読者は置いていかれる。

    さらに困るのが、突然の引用。引用なのだかようやくなのだかわからないし、引用にしても5~6ページに渡って差し込まれ、「ここからこうなった上で以下に続くのである」って、また5~6ページ。

    書いている方は面白いのかもしれないのだけど、読まされる側としては、要約をさっぱりと入れてもらって、あとは解釈などを読みたかった。

    結局面白いのは「怪物」の項くらいかなあ。本文中でも意識している、澁澤龍彦の同様の話に比べると、引き込まれるポイントもなく終了。

    あえていうと、最後の180冊のリストで救われた。☆+1。180冊を1作3ページくらいで紹介してくれたのなら、きっともっと楽しく読めたと思う。

  • 博覧強記荒俣宏先生の手によるファンタジー世界への旅行
    ガイドのような著作。だが、ただのブックガイドではなく
    きちんとした読み物になっているあたりはさすがである。
    ハリー・ポッターやパーシー・ジャクソンなどから入った
    ファンタジーファンにもぜひ読んでもらいた。一口に
    ファンタジーと言ってもこれだけの歴史・背景が控えている
    のだ。

    ただこの旧版はさすがに古い印象はぬぐえない。というわけ
    で新編の方も同時に読むことにしたのだった。

  • 荒俣さんが、楽しそうにファンタジーを語っています。こういうの書かすと、本当にうれしそうだな。
    今みたいに、ファンタジーが知られている時代ではなかったので、よけいに、力がはいっているのかもしれません。

    新井素子、江戸川乱歩、荒俣宏と、好きな物語のことを語らせたら、いつまでも、語っていそうな感じです。

    わたしは、「ウロボロス」もまだ読んでない。
    読むべきファンタジーは、いっぱいあります。

  • 別世界通信

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著者プロフィール

作家・翻訳家・博物学者。京都国際マンガミュージアム館長。
平井呈一に師事、平井から紹介された紀田順一郎とともに、怪奇幻想文学の日本での翻訳紹介に尽力。のち活動の幅を広げ、博物学をはじめとして多ジャンルにわたって活躍。
主な著書に『妖怪少年の日々』、『帝都物語』シリーズ(ともにKADOKAWA)、『世界大博物図鑑』(平凡社)、『サイエンス異人伝』(講談社)、『江戸の幽明』(朝日新書)など。『怪奇文学大山脈』Ⅰ~Ⅲ(東京創元社)を編纂。

「2021年 『平井呈一 生涯とその作品』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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