バベットの晩餐会 (ちくま文庫 て 5-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480026019

作品紹介・あらすじ

女中バベットは富くじで当てた1万フランをはたいて、祝宴に海亀のスープやブリニのデミドフ風など本格的なフランス料理を準備する。その料理はまさに芸術だった…。寓話的な語り口で、"美"こそ最高とする芸術観・人生観を表現し、不思議な雰囲気の「バベットの晩餐会」(1987年度アカデミー賞外国語映画賞受賞の原作)。中年の画家が美しい娘を指一本ふれないで誘惑する、遺作の「エーレンガート」を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 映画を見て原作を読みたいと思っていたがやっと読むことができた。原作はけっこう短く、映画は原作のエピソードをほぼそのまま映像化していた。原作の芯を損なうことなく見事に映像化されていたんだなあ、と感じた。というよりあまりに映画の印象が強すぎるので、覚えている映像を文字に当てはめて読んだ、というほうがいいかもしれない。

    しかしなんと、場所が原作はノルウェーのベアレヴォー・フィヨルドの山麓の町だった! これは映画のユトランド半島のさきっちょとくらべると随分な違いですよ。山に囲まれた北極海に面したノルウェーでも最北の町ではありませんか。しかしバベットが晩餐会の材料を船で調達するくだり、船は北海を縦横に航海していたのか。作者もそこらへんはしらべたのか。あと年代がきちんと記されていたので、パリコミューンでバベットは追われたのだという設定だったのが分かった。

    1854年、姉マルチーヌ18歳、妹フィリッパ17歳。
         それぞれ青年将校、オペラ歌手に求婚されるが断わる。
    1871年6月 バベットが姉妹の家に来る
    1888    バベットは1万フランのくじが当たったという手紙を受け取る


    アメリカの女性向け雑誌「レディース・ホーム・ジャーナル」1950年6月号に発表。その後加筆推敲されて「運命譚」(1958年刊)に収録。アメリカ、イギリス、デンマークで同時刊行されたが、英語版とデンマーク語版ではデンマーク語版の方が全体に記述がこまかく、特に後半では英語版にはないかなりの分量の記述が随所に加えられている、とある。

    原作:短編集「運命譚 Anecdotes of Destiny」 1958年 の中の1編。

    著者:イサク・ディーネセン(英語名で男性名で発表)(本名カレン・ブリクセン):1885-1962 デンマーク生まれ 2009年までデンマークの50クローネ紙幣には彼女の顔が印刷されていた。
    「アフリカの日々」(映画化・愛と哀しみの果て)1937  自身の体験が基。

    (単行本は1989.1.30筑摩書房刊)
    1992.2.24第1刷 2008.3.5第8刷 

  • バベットの晩餐会とエーレンガートの2つの小品からなる本。
    バベットの晩餐会だけを読んで、良い作品を読んだわ〜としばらく本を放置していた。
    今日、ギックリ腰になって横になり、エーレンガートを一気に読んだ。イサク・ディーネセン好き!違う作品も読みたい!と思った。
    映像が目に浮かび、大昔のヨーロッパに旅行した気分に浸ることができた。外は梅雨空で私は畳に寝転がっていたのに。
    イサク・ディーネセンは、中学生の時に一人で見に行った映画「アフリカの日々」の原作者。
    「30年以上経った今でも違う作品で感動するということは、中学生ぐらいで人の感性ってほぼ出来上がっているのかしら」とふと思った。

  • ディーネセンの中編「バベットの晩餐会」と「エーレンガート」の二編.どちらも非常に緻密で重層的,非常によく練られた小説.二編ともちょっと現実離れした設定や,偶然に頼った展開があるのだが,読んでいるとそれほど気にならず,すっかり小説の世界に入り込んでしまう.そして,読み終わるとその精緻な構成に感心する.すぐれた小説の一つの典型.

  • 「バベットの晩餐会」「エーレンガート」二篇。作家の技量と余裕を感じさせられる。豊かな読書体験。

  • 映画を先にみると、映画の良さも分かる。けど小説を読むと、理解できなかった箇所が照合されて、納得。理解できなかったことすら気づいていなかったけど。今後はもっと映像から原作に戻る癖をつけたいと改めて思った。

  • 映画のレビューを読んでいたら、原作があることを知りました。

  • 『運命綺譚』のときと同じように、物語に没入しつつ今回も動揺させられる読み心地。ディーネセン/ブリクセンは内臓にくる。

    本書に収録の二篇はどちらも芸術家の凄まじい我欲を描いている。一方は魔法の一夜をつくりだし、もう一方は無心の力によって頓挫させられるのだけれど、いや、芸術家ってほんと「頭おかしい」の一歩手前というか向こう側っていうか、遠くから拝んでいたいひとたちだなあと思った。お話でよかった。

    カゾッテ氏は川端康成系のド変態なので康成好きな人はテンションあがるかも。わたしは苦手なので「この悪人が!」と逆の意味で力が入りました。

  • 映画を観る機会があり、ぜひ小説も読みたいと思い手に取った。映画ではよくわからなかった箇所も小説で理解できたのもあって、読んでみて正解だったと思う。19世紀のヨーロッパが舞台。宗教も含め、文化的にも足りない知識を補うには書物は本当に優れていると感じた。

    時代に翻弄され、パリを追われた女中バベットは優れた料理人であり、芸術家でもあったのだ。

  • 佳奈子さんリリース

  • 映画も有名な「バベットの晩餐会」と遺作だという「エーレンガート」収録。
    「あたしはコミューンの支持派でした。確かにわたしはコミューンの支持派でした。そしてわたしがいま口にした人びとは、いまわしい残酷な人たちでした。パリの市民を飢えさせ、貧しい人びとを抑圧し、法をないがしろにしたのです。(略)あのかたがたはわたしの、そう、わたしのものだったのです。あのかたがたは、おふたりにはまるで理解することも信じることもできないほどの費用をかけて、育てられ躾けられていたのです。わたしがどれほどすぐれた芸術家であるかを知るために。」

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