生きるかなしみ (ちくま文庫 や 11-2)

制作 : 山田 太一 
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480029430

感想・レビュー・書評

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  • 大切なのは可能性に次々と挑戦することではなく、心の持ちようであり、可能性があってもあるところで断念して心の平安を手にすること。

    世界にも他人にも自分にも期待しすぎていないだろうか。

    おそらく筆者の言葉が人間の本質なんだろうな。頭のいい人が歴史を省みることなく戦争を繰り返す。自分にはもっと可能性がある、もっとできるようになれる、相手を自分の思い通りにすることもできる、自分が一番の世界にすることができる。こんなふうに思い上がって、期待して、力ずくで思い通りにしようとする。

    まさに人間の本質。自分は小さな人間でできる範囲で努力して生きていればそれで十分なんだと思えるようになることが必要で、そのためにはやはり生きるかなしみに向き合う必要があるんだろうな。

    とはいえ、今のところわたしは生きるかなしみに向き合っているが、そのしんどさを全て受け入れる境地には辿り着けず、小さな幸せもいずれ死ねば失われる無力さに悩まされ続けているのだけれども。

  • 「断念するということ」
    「私のアンドレ」
    「二度と人間に生まれたくない」
    「ふたつの悲しみ」
    「望郷と海」
    「親子の絆についての断想」

  • 老い、戦争、抑留、差別、親子の絆…様々の観点からひとの生きるかなしみを炙り出すアンソロジー。
    在日二世のアイデンティティ喪失を記した「失われた私の朝鮮を求めて」が壮絶。永井荷風の文章の美しさに感じいる。

  • 哀切に満ちた本。

    高史明さん、水上勉さんの文章には、自分の想像力の外にあるものを見せてもらった。

    今、身にしみる本かもしれない。
    もっと以前だったら、染み入る前で止まっていたかも。

  • 人生には希望や歓びが輝くように、人は誰しも、ひっそりとした哀しみを抱えて生きている。哀しみに抗うことなくただ静かに受け入れて生きていくことも、成熟した人間の強さなのだと思いました。

  • 再読のつもりだったが、後半は未読だったようだ。以前読んで強く印象に残った編者の前文はやはりとてもよかった。

    一番心に残ったのは夢野久作の息子(!)によって書かれた「ふたつの悲しみ」だ。幼い女の子が病気の祖父母から言いつかって戦地から戻らない父の消息を尋ねにくる。その父がすでに戦死していることを筆者は告げねばならない。この子は母もなくし妹が二人、だから自分は泣いてはいけないのだと言い、唇をかんで涙をこらえる。「私はいったい何なのか。何ができるのか」行間から筆者の慟哭が聞こえる。

    編者の紹介文も忘れられない。「こうした記録を前にして、なお平然として沈黙を知らぬ人に、ひかえめにいっても私は嫌悪を抱く」。選ばれた文章それぞれが静かに胸をうつ。人間は無力だ。無力であることをかみしめて生きていくしかない。胸がしんとした。

  • 短い文章や詩を集めてそれぞれにささやかなコメントをつけた

  • 静かな、人間の宿痾としてのかなしみについてのエッセイ・アンソロジー。かなしい存在そしての人間が生きて行くかなしみ。それは死すべきものとしての人間にとって必然なのだ。かなしいからこそ喜びを感じられるのだ。

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