山田風太郎明治小説全集 (8) (ちくま文庫 や 22-8)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480033482

作品紹介・あらすじ

海軍少佐・山本権兵衛は将校西郷従道から、元勲夫人たちの舞踏会への出席勧誘係を命じられた。井上馨、伊藤博文、山県有朋、黒田清隆、大隈重信らの"私"の顔と妻たちの秘められた過去。鹿鳴館を華やかに彩った女たちはそれぞれに…。

感想・レビュー・書評

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  • 幕末に活躍した大立者が明治の元勲となり、その妻達も大いに活躍していた時代。
    だいぶ前の作品ですが、さすが山田風太郎、面白い!

    若き日の山本権兵衛が陸軍中将・西郷従道の命で、大臣らの妻を訪ねて歩くという連作短編。
    鹿鳴館を建てたものの、舞踏会への出席者が少なく、特に女性が足りないため、大山捨松とともに、説得してほしいというのだ。
    大山巌の妻の捨松はアメリカに長く留学していたから、舞踏会もお手の物。
    でも、抵抗を感じる女性も多かったんですね。

    明治政府の主要な人物はほとんど、花柳界の出の女性を妻にしていました。
    もと芸者とか、そういう社交に慣れた女性。
    当時の政治は、欧米の見様見真似。外国から来る政治家は夫人同伴で、それを迎える方も夫婦で顔を揃えなくてはならない。
    深窓の令嬢では務まらなかった、と。

    登場するのは井上馨、伊藤博文、山県有朋、黒田清隆、森有礼、大隈重信、陸奥宗光、ル・ジャンドルの奥方たち。
    伊藤博文は遊び人で、奥様もそれ相応の意地を見せます。
    黒田清隆は暴力をふるう男だったが天才的なところがあり、おとなしくなった後は輝きがなくなったとか。
    欧米に憧れて万事西洋風に暮らし揶揄されるほどだった森有礼の家庭の、思いがけない落とし穴。
    ル・ジャンドルと結婚したが外国人と相容れず、子を手放した妻の切なさ。

    山本権兵衛自身も、娼婦を見初めて海軍仲間と拉致したというとんでもない結婚だったのですが、熱愛ぶりには胸を打たれます。
    娼婦といっても、身分を失った侍の娘がやむなく店に来たばかり。

    冒険譚といってもいい様々な結婚のいきさつや、その後に起きた事件、夫婦仲のなりゆき。
    現代では考えられないこだわりも面白く読めました。
    明治の政治家もそれぞれに違うタイプの大物で、破天荒。
    とにかく奥方たちが気丈で賢く、たくましい。
    作者が女性たちの運命に深く共感し、その強さをたたえているのが印象的でした。
    どれぐらいが実話で、どこまでがありそうな話で、どこからが完全な創作なのかわかりませんが。
    前々から聞き知っていた事実からして、十分ありそうな話が多いのかなと思います。

  • 幕末維新を牽引した偉人の夫人達を描いた歴史小説。
    コミカルな中にも史実が散りばめられており歴史を学ぶ上でも為になる一冊。
    男性側の人物の特徴もうまく捉えられており興味深い。
    登場人物は井上馨夫人、伊藤博文夫人、山縣有朋夫人、黒田清隆夫人、森有礼夫人、大隈重信夫人、陸奥宗光夫人、ル・ジャンドル夫人。
    そこに鹿鳴館の舞踏会の人集めに奔走する山本権兵衛と大山捨松が登場する。

    偉人を支えている女性達がとても強かで、ある意味で彼女たちにも国家を支えていく気概が強かったのだろう。
    明治時代は欧米化が進む中で女性の社会的立場も大きく変わりつつあり、戦前の昭和とは違い、当時の女性の生き方、考え方を知ることも面白い。

    ここに登場する夫人達の多くが芸者上がりで武家凋落の犠牲者であったりする。
    そんな彼女たちの芯の強さ、誇り高さ、凛とした姿勢は読んでいても清々しさを感じてしまう。
    陸奥亮子に然り、その美貌の魅力も現代の女性のそれとは比較できないのだろう。

  • 大好きな本です。
    明治の政治家達の夫人が生き生きと描かれていてどの女性も強く賢く、時には旦那を打ち負かしたり、とても格好良くて魅力的。
    伊藤博文夫人と大隈重信夫人が特に好き。

  • 明治の出鱈目、無茶苦茶な大臣たちの奥さんの話。

    絶品。山田風太郎が、こんな題材を書いて、悪くなるわけがない。

  • ネタバレ/下有劇情

    沒想到會這麼有趣,每篇主角都是女性,當時元勳們的妻子幾乎都是芸者花柳界出身,沒有好的家世。井上弄了一個鹿鳴館希望可以增加條約改正的機會,要求諸位女士盡量參加。時年34歲的海軍少佐山本權兵衛在海軍大臣西鄉從道的命令下,必須和大山夫人捨松一起勸說諸位夫人出席鹿鳴館舞會,因此帶出了十篇故事。
    井上武子夫人(從中井櫻州那裏搶來的)養育了自己丈夫在外所生的私生兒。伊藤梅子夫人大快人心地幫朋輩嗆爆奧客(但也因此房子賣掉還債要搬離東京)。山縣友子夫人得知丈夫包養小妾後霸氣地帶到鹿鳴館讓先生下不了台無法扶正。黑田瀧子以死相諫讓丈夫不再酒亂。森常子夫人在先生要求的恐怖胎教下真的生出金髮碧眼(在東京說很懷念日本因為被逼完全洋化。在最後被逼到極限的心理狀態真可憐)。大隈綾子夫人與伊庭八郎的過去讓她決定包庇壯士後果一起承受。陸奧亮子夫人得知自己丈夫在山形監獄安排讓女生懷孕用來恐嚇典獄長失職罪以保證自己不被三島通庸害死,覺得這招可以再用一次。李仙得夫人系子為了不得已放手的兒子坂東竹松大喊橘屋!這段真感人。山風真的從歷史的縫隙挖出好多有趣的故事,真實比小說更奇,構思編成這樣的作品真的很有巧思,每一個夫人的故事都別出心裁而且不流於重複,也可以寫出夫人的毅然、堅強、美貌與憂愁,饒富興味又妙趣橫生,山風真是造福人類。我很喜歡這一部作品。只是捨松和大山巖那段蠻可惜沒有辦法深入挖掘。

  • 鹿鳴館ダンスパーティーに貴婦人を誘うよう命を受けた山本権兵衛と大山巌婦人を狂言回しに江戸から明治に生きた女性たちを描いた連作集。
    森有礼夫人のエピソードが実話だとしたらかなりの驚き。舞台は江戸だが江戸の遊女の強さが感じられる。

  • 「男って、ほんとバカ」と言える一冊。
    ただし、良い時代にあって、女性も男性と同様の暮らしをできつつある。
    今後は、「色に走る奴って、ほんとバカ」となるのだろう。

  • 明治期の政治家入門には岡義武さんの「近代日本の政治家」とこの本を一緒に手渡したいです 楽しいです

  • 相変わらず物語としては抜群に面白いけど、ただの短編オムニバスなんで、他の明治物に比べると物足りなかったのかも。

  • 地味に面白い。
    鹿鳴館が舞台

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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