厩舎物語 (ちくま文庫 お 29-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480034809

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  • 地方競馬の厩舎の裏事情ルポルタージュ
    1980年代末頃の大井競馬場の舞台裏。
    華やかな中央競馬と違って、少ない競争馬資源で興業を行わなくてはいけない地方競馬には、いろいろな制約が多く、厩舎で働く厩務員の仕事や生活も大変だったようです。このルポは今から20年以上前のものであり、現在がどうなのかは判りません。しかし厩舎で働くということは、馬という生き物が大好きで、世話をすることやその馬がレースで好走することに喜びを感じる人でないと続かない世界であることは、今も変わらないと思います。この本では、そういう競馬に関わる人たちを描いています。
    地方競馬は現在衰退しつつあります。中央競馬とは違って、なかなか判りにくい地方競馬の裏事情や厩舎運営、厩務員の生活などとても興味深い内容でした。
    名馬物語として登場するのは、80戦以上走って1勝しかできなかった普通の馬、ダイキヨヤングの物語です。最初はどこが名馬なのかと思いましたが、厩舎のために黙々とレースで走り続け、勝てなくても多少なりとも賞金を稼いで厩舎を助け、手の掛からない大人しい馬は、厩舎運営には有り難い存在であるようです。時間が経って彼と関わる厩務員との間には、信頼感とか愛情みたいなものが芽生え、彼を特別な存在として見るようになる。レース中の事故で逝ってしまった馬と厩務員たちの様子が、著者には印象深かったのかもしれません。
    競争馬が経済動物と言われるようになったのは、昭和40年代頃からなのだそうですが、馬の世話をする人間には、そういう一言で片づけられない事情がある。
    競馬を楽しんでいる自分も、この本を読んでみて、競馬に対する見方が変ったように思います。レースで負ける馬にも「一頭の馬」としての人生があり、大切な存在として価値を認めてあげなくてはいけない。馬と厩務員たちの努力があって、レースが成立しているということを改めて認識しなくてはいけないと思いました。

  • 古い本ですが、競馬の本質が分かるよい本です。

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著者プロフィール

1959年、東京都生まれ。1981年、早稲田大学法学部卒業。1986年、成城大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得。東京外国語大学助手を経て、国立歴史民俗博物館助教授。1997年3月、辞職。専攻、民俗学・民衆文化論。著書に、『厩舎物語』(日本エディタースクール出版部)、『民俗学という不幸』(青弓社)、『瓦礫の活字を踏みならし』(図書新聞)、『猥談』(共著、現代書館)、『地獄で仏』(共著、文藝春秋)、『いまどきのもの言い』『大月隆寛の無茶修行(上)(下)』『無法松の影』(以上、毎日新聞社)、『オウムと近代国家』(共著、南風社)、『てやんでえ!』(本の雑誌社)、『若気の至り』(洋泉社)。訳書に、J・H・ブルンヴァン『消えるヒッチハイカー』(共訳、新宿書房)。

「1997年 『顔あげて現場へ往け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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