テロルの系譜 ――日本暗殺史 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037541

作品紹介・あらすじ

時代とは、革命とは、愛国心とは。テロルを生み、実行へと駆り立てる動機とは。来島恒喜、朝日平吾、難波大助、小沼正…。彼らは、一体どんな人物だったのか。その時、なにを思ったのか。明治から大正、昭和にかけて登場したテロリストたちの実像に迫る、かわぐちかいじの原点ともいうべき傑作劇画。

感想・レビュー・書評

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  •  かわぐちかいじの『テロルの系譜――日本暗殺史』(ちくま文庫/777円)を読んだ。
     1975年発表の初期作品。のちの代表作『沈黙の艦隊』につながるテーマの萌芽が見られる、かわぐちの原点ともいうべき連作短編シリーズである。

     タイトルが示すとおり、明治・大正・昭和に起きた代表的なテロ/暗殺事件に材をとった作品。来島恒喜、朝日平吾、難波大助、小沼正といった実在のテロリストたちが主人公もしくは副主人公として登場する。ただしノンフィクションではなく、歴史的事件を題材にしたフィクションである。

     テロリストをいたずらに美化する偏りが随所に見られるので、そこに反発を覚える向きもあろうが、フィクションなのだから目くじら立てることもあるまい。

     テロリストという存在の“上澄み”にあるロマンティックな一面のみを抽出し、ドラマティックな物語に昇華した作品という趣。その意味で、解説の鈴木邦男が次のように言うとおり「恐い本」であり、危険な本だ。

    《この本に出てくるテロリスト達の何と人間らしいことか。心優しいことか。あっ、いけない。とうの昔に、テロを否定し、全ては言論戦でやれと言ってきた僕が、こんなことを言ってしまった。だから、この本を読み返すのは嫌だといったんだ。これは恐い本だ。読者も気をつけて読んだ方がいい。》

     特徴的なのは、かわぐちが本作で、テロリストたちの生と死のドラマを“哀しき男と女の物語”として描き出していること。いい場面、いいセリフがたくさんある。

     かわぐちかいじの絵柄は本作ではまだ完成しておらず、現在の絵柄よりもずいぶん粗削りだ。しかし、そのゴツゴツとした粗削りな感触が逆にアングラ的な迫力となっていて、味わい深い。

     なお、鈴木邦男の思い入れたっぷりな解説は、エッセイとして独立した価値をもつものだ。

  • まだ、あんまりこなれていない、色っぽさのない時代のかわぐち かいじの作品でした。

    でも、このありの物語があるから、今のかわぐち かいじがあるのだなぁとも、思えます。

    どの話も、歴史的な背景をしらないとつらいです。
    この話が書かれた時代は、教養として、この時代のことは、割とみんな知っていたのかな?

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著者プロフィール

1948年、広島県尾道市生まれ。本名は川口開治。明治大学で漫画研究会に在籍、在学中の1968年「ヤングコミック」掲載の「夜が明けたら」で漫画家デビュー。卒業後は本格的に劇画作品を執筆、竹中労とのコンビでは本作のほか、「博徒ブーゲンビリア」などを描く。「ハード&ルーズ」で人気を得、87年「アクター」、90年「沈黙の艦隊」、2002年「ジパング」で講談社漫画賞を3回受賞、2006年には「太陽の黙示録」で小学館漫画賞と文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受けるなど、五十年余にわたって第一線で活躍する。他の代表作に「イーグル」「僕はビートルズ」「空母いぶき」など。

「2023年 『黒旗水滸伝 大正地獄篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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