東京おもひで草 (ちくま文庫 か 3-11)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037565

感想・レビュー・書評

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  • 本書はとある古書店でたまたまの出会いで購入した。戦前~戦後、現代にいたるまでの東京の様々な時期や場所を切り取ったエッセイが収録されている。
    後で調べてみると絶版の本であるようだった。
    それほどよく知られた本ではないのかもしれないが、私にとっては、とても興味深い読書体験だった。
    特に、「東京論」がどのように形成されてきたかや、都電の歴史に関するエッセイは個人的には新たに気づいた点が多かった。前者は、古都・京都や奈良では東京のように近接的過去に対してのノスタルジックな感覚を持つことはあまりないだろうという。この点、自分が東京の状況しか知らないだけに、聞けばなるほどとは思うが、自分では気がつかなかったように思う。確かに書店に行っても、東京には「東京」の古地図や、昭和の「東京」の写真集などがたくさんあるのだと感じる。今に始まったことではなく、本書が刊行された20年以上前の段階ですでに、東京人は、東京の近い過去に対してノスタルジックな関心を持っていたということだろうか。本書自体がすでに刊行されてからかなりの時間を経過しているから、そのこと自体が今、この本を読む面白さになっているように思う。例えば、東京都庁が新宿に移転し、東京は西へ西へと発展していく…とか、お台場や有明、東雲などの臨海地域の殺風景さに関してであるとか、今はもう誰もあえて口にしないような定説化した東京の発展史のような内容が、ここには書かれていて、ある意味ほとんど東京の原型自体は変わっていないのでは、とも思われた。
    後者の都電の話は、昔は東京市内に電車を乗り入れることが難しかったことなどが語られていた。興味を持ち、ネットで調べてみると、廃止された都電の路線の系統が、そのまま今の都バスの系統にほとんど重なっているようなものもあった。いつか、その点も調べてみたいと思った。
    ほか、東京のいわゆる下町生まれの作家や映画監督、写真家などのエピソードも豊富であった。一つ一つのエッセイは短く、空き時間に読みやすくて良かった。

  • 1944年生まれの川本三郎さん、都電を日常的に利用した最後の世代になるそうです。昭和38年、倍賞千恵子が下町娘を演じた「下町の太陽」、父親は都電の運転手でした。「東京おもひで草」、2002.8発行、過ぎし日の東京を描いたエッセイです。下町と山の手が東京の奥行きを。江戸と明治、文化と文明、表と裏、粋と野暮、そう対比したのは、森鴎外か永井荷風か! 東京は、その山の手は、高円寺・阿佐ヶ谷(第三の山の手)から多摩地区(第四の山の手)へと西へ西へ移動してますね。

  • 大磯 古本波止場 レインボーブックスにて。
    いつもながらの川本節。じつに面白く(興味深く)読んだのだが、植草甚一disだけはちょっと頂けなかったかな。

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著者プロフィール

川本 三郎(かわもと・さぶろう):1944年東京生まれ。「週刊朝日」「朝日ジャーナル」記者を経て、評論活動に入る。訳書にカポーティ『夜の樹』『叶えられた祈り』、著書に『映画の木漏れ日』『ひとり遊びぞ我はまされる』などがある。

「2024年 『ザ・ロード アメリカ放浪記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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