- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480039279
感想・レビュー・書評
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本棚の隅っこにいた本。
単行本にはあった写真が文庫にはないことが、なんだかとても物足りない気がしてちゃんと読めずにいた。
でも文庫は単行本よりも静かに「アゾット」の物語を語ってくれる気がして、今はむしろその静けさが嬉しい。
「目に見えぬ「さかさまに降る雨」。
わたしたちは、いつでもその中を歩いている。」
今回1番心に残った箇所。
いや、もしかしたらこの前もこの部分に感動したかもしれない。
でもその時の感動はいつの間にか薄れ、ぼんやりとした輪郭を思い出せるだけになってしまった。
この物語の中にはこの世界の秘密が書かれている気がしてならない。
私の今立っている(正確には座っているけれど)この場所にも同じ秘密が隠されている。きっと。
そういうことだったのか!と開眼しては忘れ、また読み耽り、まるで太陽王の暦を読むアゾットの人達そのものではないだろうか。
でもこの本には秘密が書かれているということはきっと忘れない。
この本とアゾットはいつまでも私の世界の隅っこにいてくれるはずだ。
(以下は蛇足。隅っこについて考えたことを忘れないように)
最近は片づけに憑りつかれて、本棚から(何があるかちゃんと分かっていない)隅っこを無くす方向で動いていた。
何度も読むお気に入りの本だけが並ぶ本棚のイメージがキラキラ輝いて見えていた。
でも、隅っこのない本棚は果たして本棚と呼べるのか?
と、この物語を読みながら疑い始めてしまった。
「アゾット」の物語だって今は使われていない旅行鞄の隠しポケットからやってきた。
ずっとそこにあったのに気付かなかった冒険の物語なのだ。
本棚で眠っていた古い本を開いたら…とか、お隣のお屋敷が実は…とか、
よくよく考えてみれば、心ときめく謎や冒険はいつだって詳細不明な隅っこからやってくるのではなかっただろうか?
「隅っこ」というのは結局私の世界における「隅っこ」で、視界には入っているけど注目していないところだ。
もし私の世界がきっちり整理整頓されていて、「隅っこ」にはほこり一つ落ちていません!なんてことになったら…
ドキドキ、ワクワクする謎や冒険はいったいどこに行ってしまうのだろうか。
なんて、それが家や部屋が片付かない言い訳になったら情けないけれど。
けれど、詳細不明なドキドキを秘めた「隅っこ」を永久追放してしまわないようにしなくては…!と物語には関係ない事をぐるぐると考える。 -
〝雲、賣ります〟
祖父傳次郎(でんじろう)から譲り受けた「謎の品々」のひとつ…とある古い雑誌の広告頁。
…はて、なんでしょう、これはいったい?
永國はアゾットより…。
祖父の残した「良く分からないものたち」の秘密とは…。
永遠が見えるという〝望永遠鏡〟
不思議なかたちの木の実らしきもの。
ナンバーのついたお酒(多分)の壜たち。
数冊の手帖…手帖の内容は全てアゾット旅行記でした。
そして私たちは、傳次郎が旅した日記とともにアゾットを旅することになるのです。
それではご一緒に
ひぃ(1)ふぅ(2)みぃ(3)…と参りましょう。
不思議と言うか、ホントに良くできてるなぁと読み進めるうちに〝面白さ〟より〝関心〟のほうが上回ってしまう不思議な物語。
数字にしかり、回転にしかり、忘却にしかり、後ろ姿にしかり、虹にしかり…タロットにしかり、壜にしかり…
よくもまぁこれだけ詰め込んだと思う…すごい!
いやホントの話し!
ただのファンタジーではない。
この哲学的に美しい旅を是非とも味わって欲しい。
今年の15冊目
2021.9.24 -
クラフト・エヴィング商會、吉田浩美氏、吉田篤弘氏を知ったきっかけ。記念すべき一冊。
本屋で親友から「これいいよー」と勧めてもらい、後日購入したのが7年前?かな。
以来、何度も読み返してる。
独特で不思議な世界観や表現、素敵な挿絵。名作とは、このようの作品を指すのだろう。
こんな世界を創りだせるってすごい。
不思議な国アゾットに関する旅行記。
読んでると、頭の中・心の中にアゾットがどんどん広がる。
知らない土地にふらりと行ってみたい、そんな気分にもなる。 -
大好きな本の1つ。
主人公・クラフト・エヴィング商会の主が祖父のトランクから見つけた手帖。
そこに書かれていた祖父によるファンタジーがそのままこの小説となっています。
少し哲学的な雰囲気もありつつ心地よい空想の世界に誘ってくれる、大人向けのファンタジー。
本の中で説明されている「言葉はどこにいくのか?」のくだりは沢山の人に読み聞かせたくなるほどのお気に入りです。
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ひょんな事から知った“クラフト・エヴィング商會”
ちょっと見てみようと思い、書店で数冊パラパラ。気になったこの本を読んでみました。
結論、大好き。
文調も、挿絵や文字のフォントも
内容も好き。
想像の余地があるのも好き。
何度も何度も読み返したくなるヘビロテ本の仲間入りです。-
2014/04/24
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面白い!寝る前の読書に最適。
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過去に読んだ本。クラフト・エヴィング商會さんの小説。
面白い。レトロな雰囲気の世界観と、こちらの世界とあちらの世界がが交錯する物語。
イチオシである。 -
ずぶずぶと、この世界にはまってしまった。
いろいろと、私のつぼをつくモチーフが出てきて、単行本のほうも欲しくなり、この手帖版と同時に文庫化されたという『すぐそこの遠い場所』も読みたくなり…。次々と、連なるようにして、まだ読んでいないクラフト・エヴィング商會の本を、そして吉田篤弘氏の本を読みたくなる。
この本が出版されたのはずいぶん前だけれど、今だからひかれるモノ・コトがあって、古本フェアで出会ったのだけれど、今、出会うべくして出会ったんだという気がする。
だから、本を買うのをやめられないのよ。
「いやホントの話」(本書より) -
大人のファンタジー。ここに出てくるお酒を一度飲んでみたい
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旅に出るとき持っていくなら?この本です。
電車を待つ間、ふと時間の空いたホテルの夜。
ぺーじをめくるたびに、ひい、ふう、みい、とAZOTへと足を踏み入れます。
博士が残した大量のガラス瓶の中には、どんな雲が入っていたんでしょう。その雲はどんなところから流れてきたんでしょう。今はもう皆、昔の話です。
「遺跡の壁が剥がれて発見された輝く古代の絵のように」
分かります、分かります!
私も...
「遺跡の壁が剥がれて発見された輝く古代の絵のように」
分かります、分かります!
私も似たような経験があります!それは本棚の隅っこに相違ないと私は思います。
本棚二重はずぼらですか…
うちの本棚はさらに立てている本の上に横になった本が2、3乗っているのです…
あわわ…やはりちと問題ですかね
>うちの本棚はさらに立てている本の上に横になった本が2、3乗っているのです…
あはは、一緒です。うちもま...
>うちの本棚はさらに立てている本の上に横になった本が2、3乗っているのです…
あはは、一緒です。うちもまったく一緒です。
自戒を込めて「ずぼら者」なんて言ってしまったのですが、まさかお仲間がいたとは。
すみません。
いえいえ、大丈夫です!
お仲間でしたか。何やら心強いような…(笑)
「理路整然としたものからはみ出す余白から生まれ...
いえいえ、大丈夫です!
お仲間でしたか。何やら心強いような…(笑)
「理路整然としたものからはみ出す余白から生まれる「物語」は大切にしたいですよね。」
どの程度はみ出すかが個人のバランス感覚ということなのかなと思いました。
心地よいバランスを探っていきたいです。