テス 下 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480039873

作品紹介・あらすじ

"宿命の男"アレックの手を逃れ、遠い酪農場に職を得て傷心を癒す美貌の娘テス。だが、そこで出会った牧師の息子エンジェルとの激しく一途な恋は、再びテスの運命を大きく狂わせて行く。結婚式の当夜、アレックとの過去を打ち明けられたエンジェルの蒼白な顔貌。ショックを受けたエンジェルは、単身ブラジルへと旅立つ。残されたテスの苦悩。そして、またもやアレックとの思いがけない出会い…世界は盲目的な運命によって支配され、個々の人間の幸不幸には全く無関心であるのか-不条理を鋭く見つめる20世紀文学の先駆作。

感想・レビュー・書評

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  • クレアはテスが純潔な女性ではないことに絶望する。二人は別居し、各々に厳しい人生行路を歩むことになる……。

    「認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを」とシャアが言えばカッコいいが、この男にはまったく洒落になってない。エンジェル・クレアよ、心底若さゆえの過ちを悔いてほしい。死ぬほど反省しろこのボンボンが!と言いたくなるのだが、しかし彼自身はそもそも悪い男ではない。やはり時代ゆえの苦悩というところだろう。倫理観の限界というか。

    金持ちと結婚しながらも、農場で限界まで働かなければならないテスに涙しながら読み進める後半がつらい。その果てには、予想外の運命が待ち受けていて……。

    今の時代には合わない部分がありつつも、今もって深い余韻を残す結末にはやはり考えさせられるものがある。悲しくもどこか美しい情景が印象深い作品だった。

  • 超おすすめ

  • お話も翻訳文もじつに分かりやすい。挿絵も多く入っていてイメージが掴みやすいこともあり、面白く読むことができた。

    聖書からの引用がかなり多いため、注釈はあるものの、ある程度聖書に慣れている方が理解は早いだろう。また、当時の英国人の読者には常識的な教養だったのだろが、ギリシャ神話や故事もちりばめられているため、いちいち調べているとなかなか読み進めない。

    最初は一気に通読。聖書やネットを傍らに置いて再読するというのが良いだろう。


    当時の英国の社会規範や社会通念そして聖公会的カテキズムなどにによって、主人公のテスは自由に生きることを奪われる。また本作自体も読者によって叩かれたようだ。

    時代や世の中が異なれば、どちらも苦しまずに済んだのになぁ。規範や通念は変化する。その時その時代の正しさに依拠した批判や断罪とは何と愚かで馬鹿馬鹿しいものか。本書を読んで再度痛感した。

  • 時に運命は残酷、不条理である。

  • 現代では考えられない程理不尽な悲恋物語。ビクトリア時代の倫理観、生活観が判って面白い。

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著者プロフィール

Thomas Hardy 1840–1928
イギリス南部ドーセット地方の石工の家に生まれ、22歳でロンドンに出て建築事務所で働く。その後作家に転じ、そのキャリアの前半約30年間で『ダーバヴィル家のテス』をふくむ15篇の長編小説、短編小説集4篇、後半約30年間で叙事詩劇『覇王たち』と948篇の短詩を発表して、ヴィクトリア朝時代最後の大小説家にして詩人となった。神の見えない時代に文学の存在意義を探り、みずみずしい感性によって20世紀のモダニズムの先駆者となり、D・H・ロレンスやフィリップ・ラーキンなど後世の作家に多大な影響を与えた。

「2023年 『恋の霊 ある気質の描写』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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