- Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480041739
作品紹介・あらすじ
どうして解剖なんてするのか、気味がわるくはないのか。からだはどのようにできているのか、解剖すれば、ほんとうにそれがわかるのか。「動かぬ肉体」から説きおこし、歴史も未来も視野に入れて、ヒトという存在をとらえなおす。
感想・レビュー・書評
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解剖するとは、どういうことなのか?人は死んだらものになるのか?これらの哲学的疑問を平易な文章で書いてある本です。
解剖学の歴史を紹介し、分子や原子の話にまで解剖する。解剖学の哲学です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高校生のとき、はじめて手にした養老先生の本がこれだった。じつに二十年ぶりに読み返してみて、その面白さが全然変わっていないことに驚いた。
解剖学教室の日常から始まって、ヒトはなぜ解剖をするのか、日本の解剖の歴史などが述べられていくのだが、単にそうした事実を並べるだけではなくて、そこから言葉とは何かとか、心と体の関係など、深く切り込んでいくところが流石。
中学生向けに書いたというだけあって、とても平易な文章なので、誰にとっても読みやすいと思う。養老孟司入門的一冊。 -
第1章 解剖をはじめる
第2章 気味がわるい
第3章 なぜ解剖をはじめたか
第4章 だれが解剖をはじめたか
第5章 なにが人体をつくるのか
第6章 解剖の発展
第7章 細胞という単位
第8章 生老病死 -
著者は東京大学名誉教授.著者紹介によると解剖学者.
本書は,1993年6月25日に筑摩書房から刊行された.
著者は,1995年に東京大学医学部教授を退官されているので,この書は退官直前の著書である.
内容から見て,高校生物程度の知識があれば,十分理解できる.この本は「からだのことを知ろうとする人の助けになり,さらには,そこから人とはなにか,学問とはなにか,を考える入り口に」してほしいと「あとがき」に書かれている.
系統解剖:ヒトのからだは,どういうふうに(同じように)できているか
病理解剖:この人は,からだのどこの具合が悪かったのか.なぜ死ぬことになったのか 法医解剖:死因不明の場合,犯罪の可能性がある場合に死因を調べる
人体はさまざまな構造からできている.それらをすべて壊さずに,ていねいに見ていくためには,表面から順序良く解剖していく.そのための教科書として,解剖実習書がある.
防腐処置(ホルマリンを大腿動脈から注入する.これは細胞の自壊作用を止める(固定する)ためであり殺菌のためでもある).献体.
死体を気味が悪いと思うのは,手と顔(特に目)が動かないことによる.私たちは手と顔を使ってコミュニケーションしている.手や顔は動くのが,あたりまえと思っている.それらが動かないときはあたりまえでなくなるので,どう考えてよいかわからなくなる.どう考えていいかわからない時に,ぶきみさを感じる.
ヒトは死んだ後にモノになるのではない.生きているときからモノである.では生死とは何か.生死は自然現象であり,自然現象には理屈では理解できない部分が必ず残る.しかし,理解できない部分が残るということをわかっていて,研究を続けるのが,自然科学の研究である.
なぜ解剖をするのか?
Ⅰ.ヒトの病気を治すには体の構造を知らなければならない.構造を知るのを目的にして解剖する(目的のほうから説明する)
Ⅱ.言葉を使う=名前を付ける=バラバラにする(目的以外からも説明できる)
Ⅲ.知りたいと思ったから
「体性系」と「臓性系」と一応,分けることができるが,この二つを完全に切り分けることはできない.
日本の解剖の歴史は,江戸時代にはじまり,明治になって医学教育に正式に取り入れられる.
ヒトを階層性でみると
人体―器官―組織―細胞―細胞内小器官―分子ー原子ー素粒子
ものを作っているのは「そのものより小さい,より下の単位としてあらわせるもの」という西洋の考えた方が,現代の主流である.これは,モノを示す言葉(単語)をアルファベットで表現することに原因するのではないか.漢字圏では,かなもあるが,基本は漢字でものを示す.ものと字は一対一に対応する.よって中国では,世界の構成要素はものより大きい,ものをまとめるような概念になる.
ギリシャ解剖学→アラビア医学→ルネサンス期のイタリア人間学(レオナルドダヴィンチ,ヴェサリウス)→現代の医学.
生老病死.
分子で言えばDNA,細胞で言えば生殖細胞のみが世代を超えて生き延びている.個体が育つことと老化することは同じ規則に従っていて,ここでも,画然とわけることはできない.受精卵は分裂を繰り返し体細胞と生殖細胞に分化する.生殖細胞は減数分裂の後に受精して受精卵となる.体細胞は分裂と分化をして,個体を形成して,分裂が止まり死滅する.
機械と,人のからだ,を区別することは難しい.これは,それぞれを独立したものと考えているから.機械は,人が考え出したものだから,人の一部である.
階層的に世界を見ることは西洋人が得意とする見方である.著者は,体を階層的にみることは便利であるが,好きではないという.別な違った考え方もあるのではないかと,いつも考えているそうだ.その考え方とは,どういう考え方か.どこに書いてあるのか.
心とからだについては,西洋の心身二元論.江戸時代の唯心一元論が知られている.
著者の主張する唯脳論とは以下のようなものか.
ほとんどすべての人の活動は脳の働きである.それを「心」と呼んでいる.ならば,心とは脳の働きである.心とからだを分けたのも,脳の働きである.人間は心とからだという二面をもつものである.人は心だけでできているのではない.更に,心は,からだがあって,初めて成り立つのである,
2021.11 -
読み聞かせのような素朴な語り口調。学術書のような仔細な解説ではなく、完全にサワリだけ。解剖学よりか完全に理科の生物学のおさらい。
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内容については詳しいレビューがあるのに、文章についてはまるで無い。著者の文体がとても好きな人が多くいるはずなのに。
この文体真似たくなるんです。でも、出来ない。それはなぜか?書ける内容、知識が相当な量あり、かつ明晰でないとすぐに書くことががなくなり、一冊の本が出来上がらない。無理矢理本にしようと思ったら、スカスカの文章になる。だから所謂、文系の文章の方が書きやすい。ウソをつくり出し、ゴテゴテと飾り立てる誤魔化し言葉さえあれば良い。これは褒め言葉。
そうかと言って、理系の人がこの文章を書くことが出来るか?科学者の本を読めば分かる。全然出来ない。だからどうした?そう言われても、困る。 -
小学校高学年〜高校生向け。解剖→切る→最小化→分子まで話が広がり、解剖に戻る過程を面白いと思うかどうかで感想が分かれそう。
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児童向けのはずなのに読みにくい。
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(2002.02.06読了)(2001.12.21購入)
(「BOOK」データベースより)amazon
どうして解剖なんてするのか、気味がわるくはないのか。からだはどのようにできているのか、解剖すれば、ほんとうにそれがわかるのか。「動かぬ肉体」から説きおこし、歴史も未来も視野に入れて、ヒトという存在をとらえなおす。 -
「わからない」を「わかる」にするための説明というのは大変なんだとつくづく思った。
何かをわかりたいと思っている人に対して「わかる」というところに導くのにも確かな知識をもとにした順序立てた要領を得た説明を駆使しなければならない。ましてや「そんなのわかんなくてもいいよ」という相手に対して、なす術などあるのだろうか?
随所に含蓄のあるお言葉が散りばめられている。中学生の息子に読ませたいが、きっと読まないだろうな…
Mahalo