神秘学入門 (ちくまプリマーブックス 135)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480042354

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  • 大いなる宇宙を思い描く時、我らは自身の矮小な存在を思い知らされ、愚かさの淵へと追い遣られる。現実を追い詰め、認識の元に格納し、支配した積もりで、一服する。しかし、その時に対象とされる現実とは何であろう。社会に管理され、安全を約束された日常の欠片ではないか。最も、愚かなのは、社会の恩寵にケチをつけ、現実に唾を吐きかける心持ちだ。何故、現実は常に非難の対象にされるのか。それは、己の生活条件や不利なるハンデなどによって、歪な形で現れる現実が、とてもじゃないが満足行く代物ではないからだろう。その反動、逃避癖が生み出すのは、妄想化された幻想である。幻想とは、現実を補完し、延長させ、組み替える意志の顕れである。独自な感性や性格、嗜好を追求する者にとって、現実とは無機質な石ころに他ならない。潤いや色を付けていく主体は人間であり、個人的な営みによって一つの現実は、幻想で何重にも読み解かれる。むしろ、幻想が全てであって、現実とはその中の白茶けたコインなのだろう。神秘学とは、現実と併行して生起する個人の妄想を、正しく解釈する学問である。注意したいのは、神秘学が、取り留めも無く現実から遊離する妄想を戒めている部分である。現実を認める余地を残さない奔放な妄想を、最低限のところで現実にリンクさせる事が、必要なのだ。狂気とは、現実と断絶してしまった妄想である。もう一つの世界が、現実と密接に関わりながら、精神の広い領野を占めて、人間に働き掛けている。それが、科学で立証できない心理や想像と云った部分に存する事は、多くの者たちが認めている。神秘学とは無味乾燥した現実認識を新たにさせ、大いなる宇宙を解き明かそうとする。そして、何より真の実践主義者へと人間を変貌させる事ができる学問なのだ。豊かな視線によって捉えられた現実が、どんなに素晴らしいか、本書を読んで堪能されよ。

  • プラトンもアリストテレスも、魂を持っている者の方が持たざる者より優れているのだから、星々も、宇宙そのものも魂を持っていると考えていた

    イデア(理念)ヌース(nous、インテレクトゥス、霊性、叡智)エイドス(質料に対する形相)

    側隠の心(井戸に落ちそうになった幼児を思わず助ける心の動き)=仁
    羞悪の心(悪を恥じ、憎む)=義
    辞譲の心(譲ろうとする心)=礼
    是非の心(正しい、正しくないの判断)=智 「孟子」(公孫丑上)

    人体の基本的生命維持システムは、自己に適応し、自己を参照しながら自己を新たに作り出す=外を変革するのでなく、内を変容させる→人類に会わせて環境を変化させる西洋的生き方へのアンチテーゼ(「免疫の意味論」多田富雄)

    古代の秘儀参入とは、生きているうちに黄泉の国へおりてゆき、神々と出会い神々と過ごしこの世へ戻ってくること 輪廻の追体験

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著者プロフィール

東京・代々木生まれ。ミュンヘンでドイツ・ロマン派美学を学ぶなか、ルドルフ・シュタイナーの思想と出会う。1973年まで慶應義塾大学文学部で美学と西洋美術史を担当。その後シュタイナーとその思想である人智学の研究、翻訳を行う。
著書に『ヨーロッパの闇と光』(新潮社)、『シュタイナー 哲学入門』(岩波現代文庫)、『シュタイナーの人生論』(春秋社)、訳書にシュタイナー『神智学』(ちくま学芸文庫)、 シュタイナー『ニーチェ──みずからの時代と闘う者』(岩波文庫)その他多数。

「2022年 『シュタイナー教育入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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