シェイクスピア全集32 ジョン王 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480045324

作品紹介・あらすじ

話題の個人全訳全集! 「イングランド史上最悪」と評される弱き王と個性的な周囲の人物が織りなす混迷の初期歴史劇。解説 中野春夫

感想・レビュー・書評

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  • 2020年29冊目。

    ちくま文庫における松岡和子さんのシェイクスピア全訳全集の最新作。このシリーズはページ内の脚注が丁寧で、時代背景や翻訳の意図が伝わりやすくとても好き。元の英語の言葉遊びを日本語においても体現してしまう名訳に何度も唸ってきた。

    失策を繰り返すジョン王は、帯で「イングランド最悪の王」と表現されている。その王権をめぐったフランスとのせめぎ合いが本作では描かれる。しかしその様子は、「どちらも愚王」という印象だった。

    例えば序盤のアンジェの街をめぐっての戦い。門の開放を求めるどちらの陣営にも従わずに中立の立場を貫くアンジェの市民に対して、なんと両王は「手を合わせてこの街を攻めないか」と語り合い始める。他のシーンでも、その意志はいちいち揺れ動き不安定だった。

    対してアンジェ市民の立ち振る舞いは非常に聡明で、勇気あるものだった。曖昧な権力に対して断固として妥協しない姿勢を貫くだけでなく、和解に導く両者王族の政略結婚まで提案し、それを実現してしまった。

    揺れやすく愚かな権力者と、意志と賢さを持ち合わせる草の根の市民。その対比は痛烈で、時代を越えて残る作品である理由がわかった気がする。中野春夫さんによる巻末解説にはこうある。

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    『ジョン王』とは、国王が多少バカでも、貴族たちが自分勝手で頼りなくとも、聖職者が腐りきっていても、王国の礎である自分たち民衆がしっかりして忠誠を守り続ければ、イングランド王国は昔も、今も、未来も揺るがないことを確認しあったお芝居である。
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    そんな民衆応援歌(チャント)なのだと。

    またこのシリーズを一から読み直したくなった。

  • ずっと以前に読んだ時の感想が私生児ことフィリップ・フォークンブリッジカッコイイ!でした。気にいるあまり、趣味で書いていた小説の人物の名前に頂き。性格はまるで違うが。
    さて、数十年ぶりに読み返した感想は、前半にしか出てこないと思った私生児が全編活躍していること。こんなにも魅力的な人物だったのかと再認識。
    あと、ソールズベリー伯爵がフィリップ(認知されてからはサー・リチャード)を私生児!と罵るのだけれど、オマエモナー、ってこの人もヘンリー2世の私生児。
    まあ、この時代の私生児って、相続権はないけれど、認知されれば血縁者として優遇されるのね。
    このソールズベリー伯爵ウィリアム・ロンジェペーの墓像は大聖堂で何度もお目にかかっていたっけ。思わぬところで旧知の人に再会した感じ。

  • 今度観劇に行くので、予習のため読んだ。解説のいちばん最後の段落まで読んで、ようやくあらすじを理解。このあたりの歴史がわかっていないと面白さ半減かもと感じた。そのあたりをもうすこし補強したあと、また読みたい。

  • 皇太后とコンスタンスの口喧嘩、アンジェ市民との交渉など、言葉のやり取りが面白い。巻末の年表を見てから読むとストーリーを理解しやすい。

  • 面白くて興奮のうちに一気読み!

    一、二、四、終幕の最後を飾る「私生児」の台詞、良い!

    本作で特に良いのは作品の終わり方。
    もっと長くても良さそうなところをピシッとまとめて、
    イングランドの未来への希望を読者(観客)の心に強く湧き起こさせていると感じる。

    これを読むと、全然状況が良くなくても、それはそれとして
    とにかく頑張るか~という気持ちになれる。
    何気にめちゃくちゃ好き。
    一般ウケしなさそうなのに自分にぶっ刺さってるってのも良い(笑)

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著者プロフィール

1564-1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている。

「2019年 『ヘンリー五世 シェイクスピア全集30巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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