安倍晴明伝説 (ちくま新書 276)

著者 :
  • 筑摩書房
3.24
  • (1)
  • (2)
  • (14)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 54
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480058768

作品紹介・あらすじ

「陰陽師」安倍晴明にはいくつもの顔がある。「宮廷に仕える高級官僚」「超能力者」「中性的な魅力を持つ美青年」…。だがそのいずれも真の晴明像を正確に伝えてはいない。天皇の運命まで左右した数々のエピソードを持つ「高級官僚」としての晴明像と、「狐から生まれた子」という超人伝説は、どのように結びついていくのか。晴明を祖とあおぐ二つの系統の陰陽師たちがつくりあげた虚像の形成過程を丹念に読み解いていくと、新しい「もうひとつの晴明伝説」が浮かび上がってくる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者は「あとがき」で、本書のめざすところを次のように述べています。「本書は、オカルト志向、超人待望のいずれとも無縁である。安倍晴明の真実の姿をあきらかにすることによって、その虚像性をはぎとることに精力がそそがれている。しかし、本書はたんなる破壊の書ではない。虚像として結晶した安倍晴明伝説の形成過程を丹念に糾明することによって、伝説に託された多くの人々の願望と悲しみに陽の光をあてている。それは、もう一つのあたらしい清明像の創出である。」

    まずは、陰陽道や式神についての研究を通して、当時の政治的現実の中を生きた安倍晴明の姿を明らかにしています。その上で著者は、中世以降の民間陰陽師たちによるさまざまな「安倍晴明伝説」を追いかけ、それらの伝説に込められた被差別民の精神史を描き出しています。

    安倍晴明や陰陽師の実像に迫ることよりも、著者自身の歴史学的な問題意識に沿って安倍晴明を取り上げた本という印象です。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1934年、新潟県新潟市に生まれる。新潟大学卒業、東京大学人文科学研究科博士課程修了、文学博士。学習院女子短期大学教授、学習院大学文学部教授を経て、現在学習院大学名誉教授。前国際浮世絵学会理事長。元日本近世文学会代表。大韓民国伝統文化研究院顧問。研究領域は近世文芸、浮世絵、比較民俗学、比較芸能史。

●主な著書に、『愛と死の伝承』、『近松世話物集(1)(2)』、『歌舞伎開花』(いずれも角川書店)、『元禄歌舞伎の研究』、『近世芸能史論』、『近松世話浄瑠璃の研究』、『親鸞の発見した日本─仏教の究極』(いずれも笠間書院)、 『忠臣蔵の世界』(大和書房)、『江戸その芸能と文学』、『近世の文学と信仰』、『心中─その詩と真実』、『出版事始─江戸の本』(いずれも毎日新聞社)、『日本王権神話と中国南方神話』(角川書店)、『大地女性太陽三語で解く日本人論』(勉誠出版)、『鶴屋南北』(山川出版社)、『日本の幽霊』(岩波新書)、『日本の祭りと芸能』、『北斎の謎を解く』(いずれも吉川弘文館)、『霊魂の文化誌』、『江戸文学の方法』(いずれも勉誠出版)、『安倍晴明伝説』(ちくま新書)、『日本人と遠近法』(ちくま新書)などがある。

「2017年 『能・狂言の誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

諏訪春雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×