アメリカのパワー・エリート (ちくま新書 430)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061300

作品紹介・あらすじ

アメリカは不思議な国である。民主主義国家とは言いながら、政党の力はとても弱い。言論の自由が強く主張される一方で、異論に対する攻撃は激しい。ではアメリカの「国のかたち」は、どのように決められていくのだろうか。利害の調整がさまざまなレベルで、しかもモダンな雰囲気を漂わせながら複雑に展開されるために、その実像をつかむのは難しい。権力の意思が決定されていくプロセスを、大統領と議会やホワイトハウス、各省庁、ロビイスト、政党など多面的な関係の中にたどり、パワーゲームの舞台裏に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • パワー・エリートとは、権力を持つエリート、政府およびその周辺にいる権力者たちのことをいっています。

    日本とアメリカとでは政治の仕組み、あり方がちがっているので、外形的な政治システムの違いだけにとどまらない。
    ここであつかっているのは、

    ・上院、下院の議員と、院内総務、委員会、小委員会の委員長など
    ・共和党、民主党の仕組みと、議員との関係
    ・ロビイストという団体
    ・大統領と議会とのバランス
    ・大統領のスタッフ、補佐官
    ・大統領ホワイトハウスの制度と変遷
    ・首席補佐官というポスト

    などである。

    きになったのは、次です。

    現在、アメリカの権力の中枢にあるのは、大統領とホワイトハウスのスタッフたち、とりわけ首席補佐官に集中している。
    国務長官、財務長官、国防長官、米通商代表部などの機関は、官僚機構としてその下部に位置している。
    政策を立案し、実行をしていくのは、ホワイトハウスである。そういった意味では日本の報道機関が国務長官などを主軸に報道をおこなっているのは、的を得ていない。

    ■政党  
    どの政党に所属していようが、その法律に賛成したり、政策に賛否を語るのは、その議員個人にゆだねられている。
    日本のいう政党であれば、党の方針に逆らえば除名されるが、アメリカの政党ではそういったことがおこらない。
    そのために、大統領といえども、通したい法案があれば、与野党を問わずに各議員にその趣旨を説明し、協力を仰ぐようなことをしなければならない。
    アメリカの党というのは、大統領選に関わる選挙資金の調達・配分を仕事としている、選挙活動機関としての色彩が濃いのである。

    ■議会
    上院の場合は、与野党とともに、院内総務が政党の最高指導者であるといえる。その下には、院内幹事がいる。議長は副大統領が担当しており、採決に加わることはない。
    下院の場合は、下院議長が第一、その下に、院内総務がいる。下院議長は、採決に加わり、所属している党を積極的に支援するところが、中立性をもとめる日本との違いである
    大統領には議会の議員ではなく、法案の提出の権利はないので、下院のだれかの議員に委託して法案を提出しなければならない。
    委員長も大きな裁量をもつが、最近は委員会、それも小委員会が多数うまれていて、その権力も分散化細分化されている。
    議員はその主張により、党派を超えて主張を同一とする連合体を形成している。そこが日本とは全く違うところである。

    ■ロビイスト
    議員のまわりには、ロビイストがいて、個別議員を支援、とりこんでいるだけでなく、議員の投票行動におおきな影響力をおよぼす利益団体を形成している。
    アメリカの世論を形成しているのがロビイストであり、特定企業の都合がいいように、法令の改正や、政策の変更などを含めた調整をかけている。
    アメリカの政治家は、ロビイストからの献金がなければ政治活動を行うことはほぼ不可能だと思われている。
    かって、政府の中央にいた人間がやっているスーパー・ロビイストの他、草の根ロビイストなど、制度の変遷によってロビイストも多様化している。

    ■大統領と議会
    アメリカの歴史は、大統領と議会とのバランスの歴史である。アメリカの憲法の第一条に明文化された議会は、強大な大統領権限を制約することを第一義に存在をしている。
    大統領はいわゆる戦争大権をもっていて、対外的な戦争を開始する権限をもつ。議会はその力に制限を加えようとしてきたがうまくいっていない。
    フランクリン・ルーズベルト(FDR)に時代に大統領の、議会との優位性が確立して、三権のバランスが行政に傾いた。

    ■大統領とホワイトハウス
    FDRの時代に、大統領を補佐するスタッフを設けて、意思決定の迅速化を図るための官僚機構の変更が行われた。ニューディール政策や、第二次世界大戦の遂行のためであった。
    以来、ホワイトハウスの内部の構造を如何に効率化するために、歴代の大統領が制度変更に腐心してきた。その結果として大統領補佐官が登場し、複数の補佐官の中から、主席補佐官が登場した。
    数名の補佐官と等距離をたもとうとするのが、スポーク型であり、そうでないのが特定の窓口をブロックとしておく首席補佐官制度である
    スポーク型では、大統領のコミュニケーション量が膨大となり、特定窓口であれば、その主席補佐官に権力が集中してしまう。
    ホワイトハウスの構造が、しばしばその大統領の政治生命を左右する。唯一、任期半ばで辞任しなければならなくなったニクソンは、ある意味でその犠牲者であった。

    目次

    まえがき
    第1章 アメリカの政党は強いか
    第2章 政治を動かすロビイスト
    第3章 議会本位から大統領本位へ
    第4章 大統領補佐官と閣僚
    第5章 ホワイトハウス・スタッフの理想と現実
    あとがき
    主要参考文献

    ISBN:9784480061300
    出版社:筑摩書房
    判型:新書
    ページ数:240ページ
    定価:720円(本体)
    発売日:2003年09月10日 第1刷

  • 4/10/10
    いま読んでる
    結構前に友達から貰った本。せっかくアメリカに住んでいるので政治システムを知ろう。今までに2回読み始めて、2回とも詰まらなくて読むのをやめてしまった。再開。

    4/25/10
    読み終わった
    過去2回途中で諦めた本書だが、遂に読了。今回は新しい本の読み方を発見したことが一番の収穫だった。
    即ち、「人」にフォーカスすること。

    前回までの読書はテーマどおり、最初から「アメリカの政治システム」について知ろうとして興味を失ってしまった。感じとしては、「こんなの知っても俺アメリカに一生住むわけじゃないし」といったところ。英語の苦手な中学生みたいな言い訳だがそう思ったんだから仕方がない。

    対して今回は、ある「人」がどういう主義を持っており、その「人」がどうしてその決断をしたのか、そしてその結果どうなってシステムにどういう変化が起こったのか、「人」を中心に読んだ。人の決断はそのまま自分の組織運営や意思決定に応用できるし、「人」を感じることによって内容に親近感を持つことが出来た。自然、この読み方は自分の興味を削ぐことなく最後まで読めた。
    その結果、「首席補佐官」がなぜ「国務長官」よりも重要で有り得るのか、「ジョンソン大統領」がどうして過小評価されていると言えるのか、「スポーク・システム」や「キャビネット・ガバメント」がどうして上手く機能しないのか、政治的な知識もすんなりと頭に入ってきた。

    まあ単純に前半の2章のトピック「アメリカの政党」「ロビイスト」よりも後半の3章のトピック「大統領と議会の力関係」「ホワイトハウス・スタッフ」「ホワイトハウス・スタッフと閣僚の力関係」の方が面白かっただけかもしれないけど。

  •  アメリカ政治や国際関係を学ぼうとしている学部生にとっては、有用な本だと思う。

  • アメリカの権力構造、ホワイトハウス、議員、キャビネット、ロビイストの構造などが分かった。ただ、個々の能力にはさほど注目していない組織論という感は否めない。日本も、小泉の下でアメリカのようなホワイトハウススタッフが権力をもつ構造に近くなっていった気がするな〜。

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著者プロフィール

神戸大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。1991年にハーバード・ビジネス・スクールにて経営学修士号(MBA)を取得後、ニューヨーク店経営企画課長、大蔵省財政金融研究所主任研究官、経団連21世紀政策研究所主任研究員、伊藤忠商事会長秘書、調査情報部長、伊藤忠経済研究所長等を歴任。その後、伊藤忠インターナショナルSVP兼ワシントン事務所長を務める。

「2024年 『TOEIC®L&Rテスト Part5 至高の1500問』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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