幕末外交と開国

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061539

作品紹介・あらすじ

近代日本の変革は、常に外圧による「開国」として語られてきた。「開国」をどう理解するか、外圧にどう対応するかという問題は、外交上の課題にとどまらず、政治的にも思想的にもきわめて重要である。幕末の開国については多くの議論が交わされてきたが、誤解に基づく歴史認識も依然として残っている。一八五三年、五四年のペリー来航は、どのような衝撃を日本に与えたのか?本書では、膨大な資料をもとに幕末の日米交渉を検証し、現代の新たな国際化への指針を探る。

感想・レビュー・書評

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  • ペリーも、阿部も、冷静な外交官だったんだね

  • ペリー来航時の日米の条約に関して、アメリカ側から一方的に押し付けられた、日本側は何も拒否する事が出来ず、不平等条約にサインしたという認識が強いが、それを否定する形で資料を提示している。何方か一方に偏る訳でなく、双方の資料から持ち出しているので、信ぴょう性も高く、また、以前持っていた印象を大きく変える形で外交の進み具合を読み進めて行けるの面白いと思う。

  • こりゃ面白い。
    ペリーが日本を開国したってことだけは教科書で知っているけれど、中身についてはサッパリ。

    これまでペリー艦隊は太平洋を渡ってやって来たと思っていたけど、実は米国東海岸のノーフォークから東回りで7ヶ月以上もかけていたって知っていました?
    これだけでも興味がわくでしょ?

    この本は日米のやり取りを詳細に分かりやすく書いている。

    ぼくが最近仕入れた知識では、「日本はアメリカに強姦された」ように開国したというもの。
    ところがドッコイ、当時交渉に当たった林大学頭(林羅山の流れを汲む)の堂々としたやり取り。
    明らかにペリーは露骨な脅しをかけまくったが、それを理論整然と受け流していったその外交手腕には驚くばかり。

    対等とは言わないが、決して交渉に負けたとは言えず、当時の日本の状況を考えれば、ベストな決着だと感心せずにはいられない。

    それより何より、江戸幕府が開国は避けられないと考えていたように思われる。

    そのためには、どこの国と交渉すべきか。
    ロシアやイギリスではなく、なぜ新興国のアメリカと条約を結んだのか。

    当時、老中だった阿部の冷静な判断があったとぼくは思う。

    日本側は、最初に触れたように7ヶ月もかかり、途中の補給もままならない状態では、アメリカは戦火を交える気がないと正確に見切っていた。

    日米和親条約の内容は、漂流船員の保護、函館と下田の2港を開港し、燃料食料を与える。

    開港といっても、驚くほど小規模だ。

    二国間の貿易は一切触れられていない。

    この条約が重要なのは、「最恵国待遇」であることが分かった。
    (ある国が対象となる国に対して、関税などについて別の第三国に対する優遇処置と同様の処置を供することを、現在及び将来において約束すること。)

    これを日本が、アメリカを選んで与えたという点が大きいのである。

    歴史は資料を基に判断すべきだということを改めて感じさせられた。

    強姦された云々など、まったく間違った認識なのである。

    それにしても、現代日本の外交能力、どうにかならないものですかね。

  • [ 内容 ]
    近代日本の変革は、常に外圧による「開国」として語られてきた。
    「開国」をどう理解するか、外圧にどう対応するかという問題は、外交上の課題にとどまらず、政治的にも思想的にもきわめて重要である。
    幕末の開国については多くの議論が交わされてきたが、誤解に基づく歴史認識も依然として残っている。
    一八五三年、五四年のペリー来航は、どのような衝撃を日本に与えたのか?
    本書では、膨大な資料をもとに幕末の日米交渉を検証し、現代の新たな国際化への指針を探る。

    [ 目次 ]
    第1章 一八五三年浦賀沖
    第2章 アメリカ東インド艦隊
    第3章 議論百出
    第4章 ペリー艦隊の七ヵ月
    第5章 一八五四年ペリー再来
    第6章 日米交渉
    第7章 日本開国

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    [ 参考となる書評 ]

  • 黒船来航と開国に至る日米交渉を見事に纏めあげた一書です。
    一概に黒船来航と砲艦外交に恐れを成して不平等条約を結んだと思われていますが、実際では幕府側の林大学頭は見事にペリーとの交渉を纏めあげ主権を維持した見事な姿勢だった。
    アメリカ側の状況としてもフィルモア大統領からピアス大統領への政権交代が存在し、交戦回避や発砲厳禁が徹底された。

    日米和親条約によって結ばれたものは交渉によるもので「交渉条約」領土割譲や賠償金の支払いもない。

    不平等の要素としては最恵国待遇をアメリカだけに付与するもので方縁性がある、条約に期限がないなどある。
    ペリーとの接触から結果的には新しい欧米の思想や技術を知り、その秘密のいくつかを自分たちの技術へ進化できた。
    交渉条約として日本が列強と同等に向かい合ったことは日本国内だけではなくアジアとしての国際社会において大きな意味がある。

  • 黒船異変と描写はかなりかぶるが、日米双方の記録をバランス良く盛り込んであるため更にアメリカ側・日本側の背景が解りやすい。日本開国にあたり英国のシーパワーを利用するため、日本と交戦を開始した場合、イギリスは中立に付く。そうなっては米国の日本開国は後ろ盾がなくなり不可能となる。ペリーは発砲厳禁を指示されていた、その中でのハッタリ外交術には感服です。しかし交渉に当たりかなりペリーが譲歩する場面もみられ、新たな面の記述は興味深いです。日本が英仏を恐れ、新興国である米ロに外交的親近感を抱いていたというのも面白いです。この一冊は欲しいなあ‥‥

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著者プロフィール

1936年東京生まれ。東京大学文学部卒。専門は日本近代史、近代アジア史。横浜市立大学教授、同大学学長などを経て、現在、同大学名誉教授、都留文科大学学長。おもな著書に『イギリスとアジア』『黒船前後の世界』『黒船異変』『世界繁盛の三都―ロンドン・北京・江戸』『地球文明の場へ』、共著に『アジアと欧米世界』ほか。

「2012年 『幕末外交と開国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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