- Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480062116
感想・レビュー・書評
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この本を読んで、改めて、少子化対策がことごとくうまくいっていないのは、「各対策にそもそも効果がない」、あるいは「前提が間違っている」という思いを強くしました。
少子化は、ある意味、自然な流れなので、それを前提にした社会設計には大賛成です。
もちろん、男女平等の実現は大前提。
以前読んだ、『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』や『デフレの正体』の内容とも合致しており、非常に納得できる内容でした。
「誰が正しいか」ではなく「何が正しいか」という視点の大切さを改めて感じた、という意味でも有意義な本でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
名著!!
新書でここまで説得力のある
本に出会ったのは久しぶり。
リサーチリテラシーの観点から、
「男女共同参画が進めば、出生率は上がる」
という欺瞞を見事に暴いている。
フェミニズムについても言及しており、
『「性からの自由」と「性への自由」は等価であることが理想である』
は至玉の名言。
その他にも
・男女共同参画と出生率回復の理念的欺瞞
・特定ライフスタイルへの政府の偏った支援
・子育てフリーライダー論
・保育・育児支援政策の欺瞞と偏り
・アファーマティブアクションの矛盾
・「無限という病」=アノミー論
・「産みたくても産めない」の嘘とメカニズム
etc...興味深い考察が目白押し。
統計の解説部分は文系にはちょっとしんどいけど、
そこさえ飛ばし読みすれば文章も明確で◎。
少子化を是と捉える筆者の哲学にはそもそも異論があるが、
それを差し引いてもほぼ満点を差し上げたい。
女性の社会進出、高学歴化、晩婚化が進めば
子どもは減り少子化は加速する。
女性を犠牲にするか、時計の針を100年戻すか、
少子化を受け止めて新しい世界を築くのか。
近代社会の明日はどっちだ。 -
リサーチ・リテラシーについての本。
データに騙されるな!という『社会調査のウソ』の実践版という感じかな。
著者は問いと答えを以下のように記している。 p.24
・男女共同参画は少子化対策と結びつくべきなのか。→「否」
・少子化は問題なのか→「多少、問題」
・仮に少子化が問題だとして、出生率回復策で対応することが容易ことなのか→「否」
・出生率の回復よりも、優先すべき課題はあるか→「ある」
・少子化を食い止めることは可能か→「不可能」
・人口減少社会が到来する今後、どのような政策が望ましいか→「出生率低下を与件とする制度設計が望ましい」
これらの問答に「えっ」と感じた方は是非読んで欲しい。
少子化のメリットデメリットについての言説も興味深い(私も著者もそれを支持しているわけではない)。 pp.119-121
【メリット】
・住宅問題の解決
・財政の好転
・通勤地獄の解消
・レジャーをより楽しめる
・高齢者や女性の基幹的雇用が確実になる
(森永卓郎『<非婚>のすすめ』 pp.175-177)
【デメリット】
・人口減少、若年労働力の減少により、日本経済社会の活気が失われ、衰退する。子どもや若者をターゲットとした産業(教育市場やおもちゃ産業)が衰退する。
・若者は新たな産業への順応性が高く、新製品開発などの創造性が高いと考えられるため、若年労働力が減少すると、全体の労働生産性が低下する。
・高齢化に伴い、年金や社会保障費が増大する。が、少子化のため給付が減る。
これらについてさらに突っ込んで議論している。特に年金制度に強い思い入れがあるのか詳述している。私も著者同様に積み立て方式を支持したい。いままで割賦方式で払っていた人たちの年金をどうするのかという問題には答えられないが、私がもらうならこれがいいな。変に長生きしたら大変そうだが。
最もに興味深いのが、第6章。特にハイパーガミー(女性が自分より地位の高い男と結婚する)が面白い。経済が低成長に転じると、自分の父親より経済力がない男が増える。そんな男と結婚して生活水準が低下するくらいなら、実家で両親と暮らした方がまし、という説は経験からしても納得。まぁ、お金だけで決めるのではないことはわかっているが。『結婚の社会学』と『パラサイト・シングルの時代』が読みたくなった。
(まっちー) -
全ての章に渡って、データを慎重に見ること、算出された数値をいかに解釈するか、子供を持つ・持たない家庭、結婚の意思がない人への配慮など、選択の自由に重きを置いて男女共同参画社会と少子化の関係について批判的に論じている。「子供を育てやすい社会になれば一件落着」とマスコミが伝える情報を鵜呑みにしていた自分に、衝撃と自分で考えることの大切さを気づかせてくれた一冊。
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タイトルがトンデモ本のようでアレなんだけど、中身はちゃんとしたもの。
インパクトを与えたかったんだろうね。
社会学者が社会学的に「少子化は何の問題もない!!」と斬っている。
しかもこの先生、社会学でもこの分野は専門外らしい。
それだけ少子化対策とかジェンダーフリーに疑問を持っていたのだろう。
自分も少子化は問題ないと薄々思っていて、何か学術的にそういう本が読みたいと思っていた。
思想としてそういう本はあるんだけどね。
そして実際にこの本を読んで納得した、と。
まあ、でもこれは思想的に偏りのある人からは攻撃、もしくは黙殺されるだろうね。
実際出版から数年立っているけど、少子化はこれから更に進行するものと考えて何とか対策を立てていこう、って流れにはなってないもん。
未だに「どうしたら若者は産むのか」なんて議論をしているでしょ。
これ読んだことあるかなー、小渕の娘(笑)。 -
少子化と男女共同参画が一緒くたに論じられることについて厳しく批判した本。労働などの面での男女平等をはかると出生率があがるということで「男女共同参画」を推し進めたフェミクラートへの批判も含むので、業界ではいろんな評価がある。でもワタシは自分でこいつを読んで、この人は基本的には正しいと思った(細部ではまぁ、いろいろあるにしても)。どちらにしたって、こどもが増えようが減ろうが、不平等はあってはならないし。少子化は女性労働の変化によるものでなく、都市化現象の一つなので、少子化傾向を労働に関する政策やましてや倫理道徳では解決できない、少子化を視野にいれた政策を立てるほうがいい、というのはわかりやすい。
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刺激的なタイトルの少子化関連の新書。昨今の少子化議論に違和感を感じている人も感じてない人も一度は読んでみるべき新書です。さまざまな統計手法(主に重回帰分析)が使われているが、そこは読み飛ばしても大丈夫かと。少子化は都市化の規定路線か、それとも防ぐべき課題か、学問的にも実感的にも考える契機になる良い本です。